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堀江慶監督、最新作「センチメンタルヤスコ」は究極の“自分探し”

2012年4月20日 13:20

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メガホンをとった堀江慶監督
メガホンをとった堀江慶監督

[映画.com ニュース] 無条件で愛を注いでくれる存在を失ったとき、人は何をもって乗り越えるのだろうか。堀江慶監督の最新作「センチメンタルヤスコ」(4月21日公開)は、最愛の両親の死をきっかけに、心を閉ざしてしまった女性を描く。映画、舞台とさまざまな表現方法をとる堀江監督は、今作を通して巨大な疑問を投げかける。

センチメンタルヤスコ」は、堀江監督が旗揚げした劇団「CORCFLASES」の舞台第1弾としてスタート。コメディ色が強かった舞台から一変、劇場版は「ひとりの人間の一生」というテーマを熟成させ、人間の奥深い心理、闇に焦点を当てた。舞台は観客との「生の対話」のなかで作品を生み出すが、映画はリアルな空間のなかで「ひとりの人間の命の尊さ」を追求し、テーマの純度を上げた。

キャバクラ嬢ヤスコは、両親の命日に自殺未遂を繰り返してきた。ある日、意識不明の重体で病院に搬送され、首を絞められた跡が発見される。容疑者としてヤスコの恋人だった7人の男が浮かび上がり、彼らの証言からヤスコの歪(いびつ)な人間関係がひも解かれていく。堀江監督は、男たちと関係を持ち、自らを傷つけてきたヤスコを「人はあまりにも大きな喪失感に向き合うと、倫理感や善悪がなくなってしまうときがある。肉体的に交わっても精神的には交わることができず、満たされない寂しさだけが残る」と説明する。

岡本あずさが主演した 「センチメンタルヤスコ」
岡本あずさが主演した 「センチメンタルヤスコ」
(C)2012 beackers

堀江監督の代表作として知られる「ベロニカは死ぬことにした」は、「死にたい」という言葉に、生へのほとばしる思いが隠されていた。一方、今作は愛を求めすぎるがゆえ、死へと向かう。しかし、どちらの作品も、ラストシーンは生き抜く希望で結ばれる。脚本執筆を振り返り、堀江監督は「死んでしまったヤスコの回顧録で終っていたオリジナル舞台から、一歩進むきっかけになったのが(東日本大)震災だった。生き残らなければ希望にはつながらないと思いました」と語る。

今作で描かれた“両親の死”は、ヤスコの心に大きな影を落とす原因となる。堀江監督は幼いころに両親の離婚を経験したそうで、「子どもは両親に愛されたという自信を持って大人になり、自分が愛されたように誰かを愛するようになると思うんです。でも、絶対的に愛してくれる存在を失ってしまうと、寂しさから自分に自信が持てなくなってしまう」と振り返った。しかし、産まれた我が子を愛することで、その失った自信を取り戻せたと、堀江監督は語る。「過去の自分を取り戻すスイッチは自分の中にある」という強い思いを抱く。「『誰のことも好きになれない』という絶望からヤスコを助けたのは、自分の中に絶対的に愛する新しい命を宿したことだったんです。改めて輪廻を実感しました」そんな究極のエンディングにたどり着いたのだ。

舞台にはじまり、映画化にたどり着いた今作は、堀江監督にとって「“自分探し”の究極の形」だという。「極端なものをやってしまいがちなんですが、どの作品にも共通することは、解決の糸口は自分のなかにしかないということなんです。結局は自分との戦いで、トンネルを抜ける出口は自分のなかにある。自己探求というか、アイデンティティを探す旅ですね。答えはすぐ近くにあるんです」。

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