“無言”を貫いた「NINIFUNI」からは想像もつかない、宮崎将の素顔
2012年2月8日 16:00

[映画.com ニュース] 「イエローキッド」で国内外から高い評価を受けた若き新鋭・真利子哲也監督が、鬱屈(うっくつ)とした地方都市を舞台に、ある犯罪をおかした青年の姿を42 分間で描き出した「NINIFUNI」。「EUREKA ユリイカ」で鮮烈なデビューを果たした宮崎将(崎は正式には旧字体)が、当時を想起させるような寡黙(かもく)な芝居で、あてどなく国道をさまよう孤独な主人公・田中を演じている。
本作は、若手クリエイター発掘・育成プロジェクト「コ・フェスタPAO」の映画部門で製作されたが、ロカルノやロッテルダムなどの国際映画祭に招待されるなど、その評判の高さから「FULL VOLUME Ver.」として異例の単独劇場公開が決まった。ある田舎町で事件を起こした青年が、奪った車で国道をさまよい、やがて人気のない海岸にたどり着く。そこに、青年の境遇と対照的ともいえる、きらびやかなアイドルのPV撮影隊がやってくるが……。
「撮影前に『イエローキッド』を見て、すごい格好いい映画だなと思いました。『NINIFUNI』の僕は全然格好よくないけど」と屈託なく笑う宮崎。「EUREKA ユリイカ」にはじまり、「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」など影を背負った役柄を演じることが多いが、素顔の本人はいたって謙虚な好青年だ。これまでのイメージもあってか、「真利子監督は僕のことを、怖い人だなと思っていたらしい(笑)。だけど初対面のとき、しっかりと自分の気持ちやタイトルの意味を伝えてくれて、自分と監督が同じようなことを共有できている気がしてやりたいなと思いました」と信頼を深めた。タイトルの「NINIFUNI」とは、仏教用語の「而二不二(ににふに)」からきており、「2つにして、2つではない(1つのもの)」という意味をもつ。
主人公に一切のセリフはなく、ただただ国道沿いをさまようだけでストーリーを語らなければならない。「セリフがないのは気にならなかったですね。覚えなくていいからラッキーってくらい(笑)。ただ歩き方だけは決めておこうと、ロケハンに行った時に監督と一緒に考えました。2人で海辺を歩きながら、足をひきずったり、微妙にはねてみたり。田中が車で走った道も2人でひたすら走って、田舎の国道沿いっていくら走ってもあまり変化がないよねって話をしたのをよく覚えています」と役を捉えていた。そこには、「田中には生きることと死ぬことの境目がなくて、そこに特別な意味づけをもっていない。『こうだ!』と決めつける映画じゃないから、僕自身もどこかモヤモヤなまま、見る人が好きなように受け止められるような作品になればいいと意識していました」と宮崎なりの解釈があった。

真利子監督とは同世代だが、「年齢的なことは意識しなかったけど、とてもコミュニケーションがとりやすかった気はします。ただ、監督は監督ですからね。なんで真利子監督はこれを作りたいのかなって興味はずっとありました」と話す。また、人気アイドルグループ「ももいろクローバー」(出演当時の名称、現在は「ももいろ クローバーZ」に改称)が劇中に本人役で登場することも話題だが、「監督はこの作品で『ももクロ』の大ファンになったみたいで、その話で盛り上がっていましたね(笑)。僕自身は撮影の待ち時間が好きで、考えごとをしたり共演者の方々と話したり、いくらでも待てるんです。撮影後のお風呂にも毎晩癒されていました」と、緊迫感あふれる本編からは想像もつかない現場の裏側を明かしてくれた。
衝撃的なデビューからおよそ12年、寡作ながら着実に俳優としての実績を積んできた宮崎は、今後どのような活躍を見せてくれるのだろう。「昔は漠然と“青春”がしたかったんです。田んぼの中を『わーっ!』と走るイメージにあこがれていた。最近はなぜか暗い役を演じることが多いけど、僕自身は幸せになろうと思っています」とマイペースに笑った。
「NINIFUNI」は公開中。
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