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M・ウィンターボトム監督、日本を舞台にした新作を着想

2011年10月29日 13:49

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日本を何度も訪れているマイケル・ウィンターボトム監督
日本を何度も訪れているマイケル・ウィンターボトム監督

[映画.com ニュース] 第24回東京国際映画祭コンペティション部門で上映された、マイケル・ウィンターボトム監督の新作「トリシュナ」。英文豪トマス・ハーディの原作「テス」をもとに、9年越しで完成させたという思い入れの強い作品で、若手女優フリーダ・ピントの主演が話題だ。ウィンターボトム監督によるハーディ原作小説の映画化は、「日陰のふたり」(1996)、「めぐり逢う大地」(00)に続き、これで3度目。なぜ、ハーディの原作を撮り続けるのだろうか。来日中のウィンターボトム監督に話を聞いた。

今作が注目されたのは、もともと19世紀イギリスが舞台の「テス」を、現代のインドに置き換えるという、その大胆な演出にある。着想のきっかけになったのは「CODE46」(03)だという。「撮影のためインドに滞在していた時に、これは『テス』の舞台そのものじゃないかと思ったんだ。急速な経済成長によって、伝統的な村社会から新しい世の中に変化していくなかで、その間に引き裂かれる人間の悲劇の物語。でも映画化の話はすぐには進まなかった。フリーダ・ピントというぴったりの主演を見つけるまではね」と振り返る。

テス」は当時のイギリスで物議を醸して酷評を受け、その後ハーディが筆を絶つことになったいわくつきの作品。貧富の差や困難な現実を乗り越えようとする登場人物の姿を通じて、近代社会を批判したという解説もある。「実際に私たちは、生まれてくる場所や親を選べないように、社会的な制約から逃れることは、ほぼ不可能です。逆に言うと、それが“社会のシステム”が持つ力の強さなのではないか」

本作を通じて描きたかったものは、近代社会の在り方なのだろうか。「まさにそれが、私がハーディに魅了される理由なんだ。社会を描くことなしに個人を描くことはできない。例えば私自身は、私がこれまで受けた教育や経験の複合体。つまり、私たち一人ひとりが社会そのものだと言ってもいい。トリシュナとジェイは、まさに自分自身と戦って葛藤した。社会や風習に抗って夢に向かって生きることは、現在の自分を形作った自分の内部と向き合うということだから」。

気になる次回作はについては、「リアム・ギャラガーの企画で、ビートルズ解散の裏側を描いたドキュメンタリー映画の話が進んでいる。リアムはプロデューサーだけど、映画にも出演してもらう予定。もともと僕はオアシスの大ファンだから、映画化の話をもらったときにはすごく興奮したよ」とほほ笑んだ。今後、日本で映画を撮る可能性はあるのだろうか。「東京を舞台にアメリカ人ジャーナリストの脚本を書いたことがあるので、いつか映画化が実現できればうれしいね。僕には日本人の義妹がいるので、何度か日本を訪れているけど、ぜひまた仕事で来ることができれば」と抱負を語った。

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