フレデリック・バック、震災後の日本へ熱いメッセージ
2011年6月4日 19:27
[映画.com ニュース] 「木を植えた男・フレデリック・バックの映画」の公開と、「フレデリック・バック展」の開催を記念して6月4日、東京・SHIBUYA-AXで「クラック!」「木を植えた男」の特別試写会とともに、オークヴィレッジ代表・稲本正氏と三鷹の森ジブリ美術館の中島清文館長がトークショーを行った。
映画「木を植えた男」は、荒れ果てた大地にたったひとりで黙々と木を植え続ける男を描いた30分の短編アニメ。中島館長は、バックの生みだす作品がスタジオジブリの高畑勲監督や宮崎駿監督に大きな影響を与えてきたことを言及した。「高畑さんと宮崎さんが当時、フレデリック・バックの作品を見たとき、ふたりともその絵の美しさはもちろん、自然を守ろうというテーマが表現と実に合っている! と、ものすごく感動していました。自分たちにはかなわないと言っていましたね。特に高畑さんは20年以上も前から、フレデリック・バックの作品を上映してほしいと言い続けていましたから」。ちなみに、高畑監督作「ホーホケキョ となりの山田くん」は、バックを参考にして作られたという裏話も明かし、「まるで絵本が動くように流れていく映像は本当に美しい」と魅力を語った。
稲本氏は、30年以上にわたり“木”という再生可能な資源を使った循環型社会を実現するための活動をしている、まさに日本の“木を植えている男”。バックともゆかりのある人物で、これまでに本人に会いにカナダを訪れ、インタビューを行っている。「バックさんはとてもおとなしい人ですが、絵を描くときはすごいんです! 毎日、愛犬と一緒に森へ行って、森の木々を整えてから絵を描いています」と温かな人柄を伝えた。また、この日はバックから送られてきたという手紙を持参。「木を植え、その木が大きく成長している姿を見ると、人間(の気持ち)は強くなれるものです。3.11の震災があった今だからこそ、もっともっと木を植えてほしい」と、熱いメッセージを代弁した。自身も「今は自然と人間との営みの調和を考える重要な時期だと思う。そういう時期に、フレデリック・バックの映画が公開され、作品が展示されることには大きな意味がある」と力強く語った。
映画「木を植えた男・フレデリック・バックの映画」は7月2日から神保シアターで公開。
「フレデリック・バック展」は7月2日から東京現代美術館にて開催。