いしだあゆみ、変わり果てた石巻市に号泣
2011年4月26日 15:39
[映画.com ニュース] 東日本大震災前の宮城・石巻をメインロケ地とした映画「エクレール・お菓子放浪記」のチャリティ試写会が4月26日、東京・虎ノ門のニッショーホールで行われ、主演のいしだあゆみと林隆三が舞台挨拶に立った。いしだは、東日本大震災の津波により変わり果てた石巻市の現状に「つらいです」と言葉を詰まらせ、大粒の涙を流した。
西村滋の自伝的小説「お菓子放浪記」が原作。戦争孤児のアキオ(新人の吉井一肇)が、ある刑事からもらった菓子パンの甘味、そして優しい教員が歌う「お菓子と娘」に希望を抱きながら、過酷な戦時中をたくましく生き抜く姿を描く。宮城県を中心とした地方企業14社が共同製作し、“宮城発の映画”として製作。石巻での撮影は2010年10月から行われた。
アキオの養母を演じるいしだは「震災の前日に、この同じ場所で完成披露試写があった。まさかこんな結果になるなんて。協力していただいたボランティアの皆さんの中には、行方がわからない方もいる。ご無事でしょうか、案じております」と涙ながらに挨拶。「過去形にしたくはないが、私のなかには美しかった石巻が鮮明に残っている。この映画には(震災前の)風景が残っているし、いつか元通りに戻ってほしいと祈るしかない」と言葉をふりしぼった。
林は、アキオが身を寄せる旅一座の座長を演じ、石巻唯一の劇場だった「岡田劇場」でロケを行った。しかし、4月23日から先行ロードショーが予定されていた同館は、津波の影響で跡かたもなく流された。幼少期を仙台で過ごしたことから、「みやぎ夢大使」を務める林は、「今は生き残った方々が、元気になられることを祈るばかり」。すでに同作の出演料全額を寄付すると表明しており、「世界全体が幸せでなければ、個人の幸せはありえない」と宮沢賢治の言葉を引用し、故郷の復興を訴えた。
現在、宮城・岩手・福島での公開は見送られ、上映のめどもたっておらず「今すぐにフィルムを持って東北をまわりたいくらい」(いしだ)。同作を後援する全日本菓子協会は、「『エクレール・お菓子放浪記』製作と上映を支える宮城県民の会」を通じて被災地に菓子を届ける支援を開始。また、東京・神戸・福岡での一般試写会で、義援金を寄付するための募金活動を行うほか、前売り券の一部売り上げも寄付される予定だ。
「エクレール・お菓子放浪記」は、5月21日からテアトル新宿ほかで順次公開。