ひとりの独立系映画製作者の死から生まれた「あの夏の子供たち」
2010年5月28日 19:05

[映画.com ニュース] 昨年のカンヌ映画祭・ある視点部門で審査員特別賞を受賞したファミリードラマ「あの夏の子供たち」が5月29日から公開となる。弱冠29歳のミア・ハンセン=ラブ監督による同作は、フランスに実在した映画プロデューサーの死をモチーフに、独立系映画製作の過酷さと家族の再生を描いた傑作だ。
「何年か前では、私は独立系の映画の状況などをテーマにすることは思いつかなかったでしょうね。私にとっては独立系映画こそが自分のベースであり、当たり前なことだったからです。だけどアンベール・バルザンと出会い、彼の死がすべてを変えました。映画について全く別の見方ができるようになったのです」
バルザンとは主人公グレゴワールのモデルとなった人物で、カンヌ映画祭で絶賛された「炎のアンダルシア」(97/ユーセフ・シャヒーン監督)、「D.I.」(01/エリア・スレイマン監督)などの名作を手掛けた独立系映画のプロデューサー。バルザンは、ミアの長編処女作「Tout est pardonn?/すべてが許される」(07)を製作する予定だったが、ほかの作品の資金繰りがうまくいかず05年2月に自殺。ミアは、「彼の熱意と信頼は、私の作品を決定的なものにしてくれましたが、私は彼への感謝の念からこの映画の脚本を書いたわけではありません」と語る。
「彼は貴族出身で、貴族の風ぼうと独特の優雅さを持っていて、自殺という行為も一般的に行われる自殺というよりは、貴族が持っている自らの誇りの表現のように感じました。彼の映画に対する情熱やエネルギーはとても繊細で、それは確固とした内面的な美しさそのものでした。それこそが私にこの脚本を書かせたのだと思います。彼とは仕事上の付き合いしかありませんでしたが、少なくとも私が知っている彼は、とても面白く、エレガントで、誰に対しても温かみのある魅力的な人物でした」
ちなみに、ミアは「夏時間の庭」で知られるオリビエ・アサイヤス監督のパートナー。アサイヤス監督の「8月の終わり、9月の初め」(98)への出演を機に知り合い、昨年、2人の間には第一子が誕生した。アサイヤス監督からはどんな影響を受けたのだろうか。
「彼とは長いこと一緒にいるので、今さら影響と言われるとピンと来ませんね。特に脚本の執筆や映画製作の面においては、私は意図的に自分の殻の中に入り込んでしまうので、自分では他人の影響を受けているとは思っていないのですが、当然これは私自身の錯覚で、同じ職業の男女が一緒に生活して、映画を見て、たくさん議論を重ねているわけですから、何らかの影響を受けているのではないでしょうか(笑)」
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