名匠の娘のデビュー作「ぜんぶ、フィデルのせい」。監督&主演に聞く
2008年1月16日 12:00
[映画.com ニュース] 70年代パリ。弁護士の父と雑誌記者の母、かわいい弟と何不自由なく裕福な生活を送っていた9歳のアンナだが、両親がある日突然、共産主義に目覚めてしまい、社会を変えようと革命運動に乗り出したことから珍騒動に巻き込まれる。小さなアパートに引越すると、家にはヒゲ面の“革命家”たちが集まってくる毎日。不満を爆発させたアンナは。大人たちをこんなにしてしまったのは、どうやらフィデル・カストロという男のせいらしいと気づく。
世界が激動した70年代を、大人たちの主義や理想に振り回されてしまう子供の視点から描いた「ぜんぶ、フィデルのせい」が、1月19日より公開。来日した監督ジュリー・ガブラスと主演ニナ・ケルベルがインタビューに答えた。
本作は単なる子供の成長物語に留まらず、社会的、政治的なテーマも持ち合わせている。もちろん、これまでもそうしたテーマを取り上げた作品は多数あるが、「そうした作品に、新しい視点をもたらしかった」と監督のジュリー。「子供が革命的で大人が保守的というパターンはよくありますが、この映画は大人たちが革命を叫び、子供はこれまでの生活を望んでいるという逆パターン。そこが面白いと思いました」
そんなジュリーは、その名が示すように、「Z」「厳戒令」「ミッシング」で知られるフランスの名匠コスタ=ガブラスの実娘。「初の長編作品だからこそ、自分の力でやり遂げたかった」と、特に父の助力は得なかったが、「テーマ性がはっきりしたものを作りたいという部分は、明らかに父の影響」と語った。
一方、97年生まれのニナは、本作に出演するまで全く演技経験がなかった普通の女の子。「撮影そのものはすごく楽しかったけど、集中力を持続するのが大変!」と初体験の撮影現場を振り返る彼女は、演じたアンナについて「理解出来なかったことはあまりなかった。もし自分がアンナだったら、彼女が疑問に思うことは同じように疑問をぶつけていたと思うから」と好奇心旺盛な一面をのぞかせた。
劇中では大人たちに不満いっぱい、いつもふくれっ面のアンナがチャーミング。「うん。私も怒りっぽいから。そこもアンナと似てるかもしれないの(笑)」