音楽でつながる人間関係。「神童」監督に聞く
2007年4月20日 12:00

自身の才能に悩み、持て余している13歳の天才ピアニストの少女うた(成海璃子)が、音大を目指す落ちこぼれ浪人生ワオ(松山ケンイチ)と出会い、成長する姿を描く「神童」。さそうあきらの同名コミックの映画化となる本作の萩生田宏治監督は、“音楽でつながる人間関係”という映像化の難しい題材に挑戦するにあたり、「ただ原作の真似をするのではなく、原作から何を汲み取るか」ということを、脚本作りの段階から意識していったと語る。そして、「ピアノが好きだけど向き合えなくなってしまった女の子が、再びピアノに向き合い、多才な音楽家でもあった死んだ父を乗り越えて成長していく話」に軸足を定めていった。
主人公うた役に抜擢された成海璃子は、劇中でもその存在がひときわ光っているように見える。原作では小学5年生の設定だが、成海を起用するにあたり、「そのままの成海さんでやってもらいたかったので」中学生に設定を変更した。「脚本を練っている段階で、“神童だった自分”を客観視できる立場に主人公を置かないと、ドラマが動き出さないと感じていました。それで成海さんに演じてもらい、すでに中学生になった“元神童”という位置付けにしました。映画化にあたって、ただピアノを鳴らすだけでは観客を感動させられない。僕たちがどのような物語を作っていくかが大事だと思い、元神童という設定にすることで、逆に神童を語ることができるのではと考えたんです」
萩生田監督は前作「帰郷」でも、親子とも言い切れない主人公の男性と少女の交流を温かな視線で描いたが、本作のうたとワオでも、恋人でも兄妹でもない、音楽で惹かれあうような微妙な関係性を提示している。「人と人との関係というのは、周囲、あるいは自分から勝手に規定して、枠にはめこんでしまうところがありますよね。そうしないと社会が機能しないわけですが、逆にそのせいで見えなくなってしまうこともあるんじゃないかという思いが、少なからずあります。うまく言えないんですが、そういう人のつながりが街を行きかう人々にもたくさんあって、そういうものを切り取っていくのが面白いなと思っているところはありますね」
「神童」は4月21日より、シネマライズ、シネ・リーブル池袋、新宿武蔵野館ほかにて全国公開。
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