「水の花」弱冠24歳の新鋭、木下雄介監督を直撃
2006年8月4日 12:00
内田けんじ監督「運命じゃない人」や荻上直子監督「バーバー吉野」などの大ヒットにより、近年注目を集める「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」のスカラシップ。PFFが製作から劇場公開までトータルプロデュースする長編映画製作援助システムだが、15回目を迎える今年のスカラシップ作品は、03年PFFアワードにおいて、見事準グランプリを受賞した「鳥籠」の木下雄介監督による「水の花」だ。公開を前に新鋭・木下雄介監督に話を聞いた。
「水の花」は家庭に問題を抱える思春期の少女の心の葛藤と成長を、シンプルな映像で綴った人間ドラマ。弱冠24歳にして、すでに自らのスタイルをフィルムに焼き付けている木下監督は本作の製作を「毎日が修行だった」と語る。「今までの自主映画では、自分でDVカメラをまわして、頭の中のイメージを撮っていればよかったんですけど、今回はプロの35ミリフィルムの撮影監督が居たので、イメージを伝える言葉を持たないといけませんでした。それは役者に対しても同じで、覚悟はしていましたが、色々と大変でした」
作品では「ひと続きの時間や空気を大切にしたい」という意図から、長まわしを多用。「前作『鳥籠』では『水の花』とは全く違って、カットは多く割ってますし、カメラも寄ったりして、対称的なんですよ。今回長まわしが多くなったのは、この物語に最も適したスタイルだと思ったからで、特に一つのテーマやスタイルに固執するつもりは無いんです」
作品のテーマについては「『鳥籠』の時と同様、誰もが経験する“喪失の痛み”という通過儀礼を通して、人間は成長するということを描きたかったが、本作でこのテーマは終わり。次は東京を舞台にしたフリーター、ニートたちの群像劇を撮ろうと思っています」と語った。
「水の花」は8月5日、ユーロスペースにて公開。