音楽が生んだ戦場の奇跡を描く「戦場のアリア」
2006年4月25日 12:00

第1次大戦下、1914年のクリスマスイブ。最前線で戦うドイツ軍、フランス=スコットランド連合軍の兵士たちが、ひとつの歌声をきっかけに互いに塹壕から出て歩み寄り、一夜限りの休戦を行った――。軍の記録には残されてはいないが、ヨーロッパ各地で語り継がれるこの“戦場の奇跡”を映画化し、本年度アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた「戦場のアリア」の監督、クリスチャン・カリオンに話を聞いた。
本作はフランス人監督によるフランス映画ではあるが、英・独・仏の豪華キャストが集い、劇中でも3カ国語が入り乱れる。しかし、映画の中には言葉も国の違いも関係なく、各軍の塹壕を行き来してかわいがられる1匹の猫が描かれており、「戦時下においては、動物のほうが人間より自由だということを示したかったんだ。あのような猫がいたのは史実だしね。また、冒頭の戦闘シーンで虫が交尾している姿もあるが、これも同じ意味で、戦場では虫のほうがよっぽど生物として正しく生きているということを描きたかったんだ」と監督は語る。
さらに、各軍の兵士が友好を結ぶなか、ひとり友愛の輪に溶け込めない人物も描かれる。「彼の存在は“平和のもろさ”を描いたものだ。戦争するのは簡単だが、平和を維持することは難しい……ということだね」
本作で描かれる“奇跡”のきっかけは、クリスマスキャロルの歌声から始まる。“戦場における音楽のもつ力”を監督はどう捉え、どのように描いたのか?
「軍歌のように戦争を奨励する音楽もあるので一概には言えないが、この映画で音楽は、友愛のきっかけとなる重要なもうひとりのキャラクターだから、単に場面を盛り上げるためだけに音楽を使いたくはなかったんだ」。4月29日よりロードショー。
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