劇場公開日 2006年4月29日

戦場のアリア : 映画評論・批評

2006年4月18日更新

2006年4月29日よりシネスイッチ銀座、恵比寿ガーデンシネマほかにてロードショー

敵同士でも、言葉が通じなくても触れ合える

驚きの実話を、敵味方の区別なく兵士たちの心情を丹念に綴って映画化し、平和へのかすかな希望を切なく示した感動作。軸となるのは「戦場にいても、クリスマスだけは安らかに過ごしたい」という兵士たちの願いと、国の違いを超えて心を動かす音楽の力だ。

イブの夜、対峙する各国兵士たちは、塹壕内で息をひそめてクリスマスを祝いはじめる。と、荒んだ戦場にオペラ歌手のドイツ兵が歌う「きよしこの夜」が清廉と響き、スコットランド兵のバグパイプの厳かな音色が重なる。まさに奇跡の始まりを感じさせる素晴らしいシーンだ。やがて、おどおどしながら塹壕から出てきた兵士たちは、片言の外国語で挨拶を交わし、妻子の写真を見せ、自国の酒や食べ物をすすめ合う。国民性や文化の違いに戸惑う描写も自然で、思わず笑みがこぼれ、言葉が通じなくても触れ合える人間の優しさに心が洗われる。雪景色のなかで宗派を超えて行われるミサは、幻想的なまでに美しい。

だが、心を通わせた彼らは、もはや戦えない。映画は、翌朝も続くさらなる奇跡をユーモラスに描き、戦争の愚かさと、その後に兵士たちを待ち受ける苛酷な運命を際立たせる。名場面となるはずの女性オペラ歌手の熱唱が吹き替えとわかるのは残念だが、さまざまに感情を揺さぶられ、涙があふれて止まらない。

(山口直樹)

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