押井守が真面目に作ったバカ映画?「立喰師列伝」
2006年4月4日 12:00
「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」「イノセンス」などで、海外でも高い評価を得ている押井守監督の最新作「立喰師列伝」は、一食を得るために飲食店主に己の全てをかけて挑む、立ち喰いのプロ=“立喰師”なる人物たちを描いたコメディ。本作について監督に話を聞いた。
製作発表時「誰も見たことがない映画になる」と語っていた監督。出来上がった作品は、“立喰師たちを描きながら日本の戦後史を語る”という独特のテーマもさることながら、人物を撮影した写真を取り込んでデジタル加工した「スーパーライブメーション」と呼ばれる映像によっても、「誰も見たことがない」ものになっている。「実写に比べるともっとドライで軽い感じになるかと思ったんだけど、想像したよりはウェットなものになった。スチール写真といえど実際の人間が写っているので、その個人の匂いのようなものが最後まで残るからね」
本作に登場する立喰師たちに扮しているのは、一流の映画監督、プロデューサー、編集者、作曲家、イラストレーター、作家などなど……役者を本業としない人たちがほとんどで、監督がこれまで交流を深めてきた人たちだ。「知り合いを起用したのは、この企画に一番適した方法だと思ったから。予算的にも助かったし。日本はキャスティングの幅がないんだけど、今回は役者である必要がないからキャスティングの幅が無制限。あるとすれば、タダでやってくれそうなやつってこと(笑)。一番合理的に考えたつもり」
撮影の現場は楽しく「文化祭のようなノリ」だったという本作は、「誰も不幸になってない珍しい映画」と監督は言う。「あとはお客さんが入ってくれば、プロデューサーもハッピーになる。見たお客さんがハッピーになるかどうかは責任もてないけど(笑)。でも、基本的にはバカ映画だから。僕は大バカ映画って言われて全然構わないし、企画当初もそれを目指したからね。大真面目に大バカ映画を目指すって。真面目なふりしてるから笑えるんだ」
「立喰師列伝」は4月8日よりロードショー。