「ありがとうございました」光る鯨 itonoさんの映画レビュー(感想・評価)
ありがとうございました
■総評として
127分最後まで飽きずに見られた。一度しかない人生で、もう会うことができない誰かに会いたいという気持ちを題材にした思いも伝わった。ノスタルジックな団地やレトロなパソコンなど、昭和から平成という時代を過ごした人々へ向けた、監督からの贈り物だと思った。
■よかったところメモ
・とにかく直子とマスターがよかった。キーマンながら押し付けがましくないキャラクターの存在に救われた。
・プロローグの完成度が高いと思った。子役の芝居も、編集もよかった。一番団地を題材にした真価が出ていた。
■気になったところメモ
・時間とお金の問題もあっただろうが、CGはもう少し頑張れたらよかった。巨大な月は動かない輪郭の内側が回転していて作り物に見えたし、鯨の動きは不自然だった。
・台詞がところどころ聞き取れなかった。特に高島はかる。月央になにがあったのか聞き取れなかったのは致命的だと思った。
・学校の先生が少年を「高島くん」と呼んでいるのだから、もっと反応してもよかったのでは。
・躰道…はいいのだけど、せめてはかるに反復させないでほしかった。
・糸がどれくらいの期間パラレルワールドに行っていたのか謎。その間家が残されていたことなどからそんなに時間経過していないのかと思いきや、コンビニの店長やバイトが一掃されて跡形も無いくらいには経過しているという。そもそも冬海が糸の失踪届を出して、引っ越さずに粘って探し回って、それでも見つからずに諦めて引っ越しした、のだとしたらどれくらいの時間経過だろう。1年?3年くらい?
・失踪した糸が帰ってこられるように家を残しておいたのだとして。冬海は定期的に覗きにきていたのか。もしかしたら光熱費が動き出したから来たのかな。そもそも糸から冬海に連絡を取ることもできただろう。この辺りの姉妹の再会がぬるっとして気持ちが悪かった。いなくなってしまった人へ思いを馳せるのはいいけど、だからこそまだ会える人との時間を大切にしようってならないものか。
・したり顔の大学教授によるパラレルワールド解説は鼻についた。
・ブーツがローファーになってブーツに戻ったところ。せめてローファーではなくローヒールのブーツを用意できなかったものか。映画の神は細部に宿る!勿体無い。
・並行世界でのそれぞれの存在はどうなっているのか気になってしまった。どうして別のパラレルワールド同士で思い出を共有できるのか?月央の世界で糸とはかるがいないにしても、別れ方が一緒とは限らないのでは?両親の世界でも同様で、死後の世界ならともかく、事故で子供だけが死んだ世界線…はちょっと都合良すぎるのでは?と思ってしまった。