劇場公開日 2024年7月12日

「驚かされる意外な冒頭の掴み!」大いなる不在 ごはんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0驚かされる意外な冒頭の掴み!

2024年7月14日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ポスター情報のみ、あらすじも読まないで鑑賞。

あらすじ知らないのに冒頭「え、思ってた感じと違うかも!どういう事???」って始まり方がなかなか衝撃的。
その衝撃の答えも最後まで見ればそういうことかーとなるので、見事な掴みだったと思う。

読み解きにくさはあるが、真実を知りたくなる展開、そして何より森山未來さん、藤竜也さんはじめ役者さんたちの演技が素晴らしかった。

「説教臭いあの感じ」
藤竜也さん演じる父陽二のあの悪い言い方をすれば老害的な話し方。
何かにつけ説教臭く、押し付けがましいあの感じ。
見てて嫌だなぁと思ってしまう自然なその嫌味っぷりが見事だった。見事過ぎでホント嫌だなぁって思えた。

「ケア施設」
ケア施設って入居の段階であんなこと聞かれるんだなぁ。
主人公卓の言い方は劇中でも「良くないよ」と言われる感じなのはわかるけど、
そんなん今聞かれてもわかんないよって気持ちはなんだかよく理解できる。
卓のやや高圧的な感じは父陽二の偉そうな感じに少し似ているような気もして、まぁ親子って事なのかな。

「認知症」
本人もしんどそうだし、周りもやっぱりしんどいよなぁ…
認知症というともっとボーッとしてるイメージがあったけど、あんなに話し方はしっかりしてるけど…って場合もあるんだなぁ。
あれだけ話せているのにうまくコミュニケーション取れないのもまたもどかしいだろうな…

「電話」
冒頭のシーンに繋がるきっかけとなるシーン。
電話の内容全ては映されないので何をどんなふうに伝えたのかわからないが、冒頭のシーンの感じからすると相当な事言ったんだろうなぁ…
何言ったらあんな事なんのよ…

「何を伝えたかったのか」
本作冒頭の掴みの良さもあり最後までそれこそ卓と同じように徐々に父を知っていく感じで最後まで観れてしまうのだけど、全体としてのメッセージがちょっと汲み取れなかった…
人の気持ちの複雑さを描いている作品で、そこにひとつのメッセージってのはないのかもしれないし、登場人物それぞれからのメッセージ性があったのかも知れない。
卓は劇中父に「許す(赦す?)も何もない」と言っていたけど自分があの家に不在出会った期間の父の人生を追う事で「人を赦す」事がメッセージだった気もするし、
直美には確かに愛があったと思うが、いつの間にか呪縛のようになってしまっていたようにも思えひとつの「解放」のようなメッセージもあったと思う。
本作の登場人物たちはある種全員自分勝手にも見えたし、思いやりがあるようにも見えた。
第三者から見てそんな行動酷いとか、そんな選択はないでしょとかは無意味なのかも知れない。
劇中セリフでもあるように「普通」ってのはなくて、みんなそれぞれ「特殊」という事なんだろう。

「大いなる不在」
会えない直美の存在、卓が父と一緒にいなかった、その期間の父という人柄そんな「不在」で出来上がったストーリーだったと思う。

たまに会いにいくけど自分も親元を離れての暮らしは長く、離れている期間の事なんて知る由もなくここでいう不在と言えるわけで、
こんなミステリーな展開でなくても、いつか親の人生の軌跡を辿る時が来るかも知れないと思いました。

ごはん