「忘却は罪なのだろうか。」大いなる不在 iccoさんの映画レビュー(感想・評価)
忘却は罪なのだろうか。
今年一番好きな邦画かもしれん。
大いなる不在なのは、これまでの彼が不在になってしまった喪失によるものなのかと思ったら、そうでもあり、そうでもない。
卓が拾い集めた父のカケラたちはあんなに彼女への思いに満ち溢れていたのに、記録だけ残して彼の中からは消えてしまったことに涙が止まらなくなった。
藤竜也さんの名演技が凄すぎて、痴呆で何より辛いのは自分が自分でなくなることだと思い知る。何を忘れてしまったのかもわからなくなっていく状況が苦しくて悲しくてたまらない。
人生の中で最も大事なものを忘れていくってどんだけ辛いんだろう。
また、父の事はよく知らないからわからなかった卓が、父を辿った跡を探っていくうちに葛藤はあれども父を理解して行く様を、森山未來さんがとても上手く演じておられて、本当に親子みたいだった。
どうしても奥さんの気持ちに寄せて考えてしまって悲しくなったけど、皆さんどんな気持ちで観たのだろう。
監督はかなり遠近法にこだわって撮影されたとのこと、なるほど、とにかく私の中で何度も孤独孤独という言葉がこだましたのだけど、撮影方法の影響もあったのね。
見所の一つかなと思います。
痴呆がテーマかと思いきや、色んな面からの愛を描いたとても素晴らしい作品だった。
コメントする