「提言!エリオ語はもっとうまく演出に使えたはず。」星つなぎのエリオ やまちょうさんの映画レビュー(感想・評価)
提言!エリオ語はもっとうまく演出に使えたはず。
最近両親を亡くして、叔母さんに引き取らせて生活するも、周囲から変わり者と認知され自分の居場所がないと思い込んで宇宙、そして宇宙人と交信することにこだわり、周囲と衝突を重ねますます孤立してしまうエリオ・・・。その彼が自分の希望通りの未知なるものと遭遇する不思議なストーリーです。
まず、良いところをお伝えします。残念なところはその後、ネタバレ含めてしつこいくらい述べますのでお楽しみに(笑)。
吹替版で鑑賞しましたが、エリオの親友となった芋虫っぽい(失礼)グロードン役を演じられた佐藤大空(さとうたすく)さんの演技、声の質、優しく可愛い語り口・・・どれをとっても最高でした!名前の通り見た目グロいグロードンが、初出からもう可愛くさえ見えちゃって脳がバグって大変でしたよ。
あと、映像はさすがピクサーって感じでヌメヌメと色彩鮮やかで良かったと思います。こちらはとってつけたような感想ですみません(笑)
で、あまり良くなかったところは以下です。提言含めてお伝えします。
まず、「設定とテーマが不明瞭」な点。
設定で言えば特にエリオの両親と親代わりの叔母さん、オルガの関係性でしょうか。
エリオが問題児・・・ってほどでもないと思うんですが、彼のフォローのため自分自身の今後のキャリア(宇宙飛行士になる)を捨てようとする部分が彼女とエリオの両親との過去の関係性を含めて明かされないから、物語に感情移入するところの妨げになってしまいました。両親二人同時に失くすってのなら何か事故に巻き込まれた可能性が高く、そこにオルガが深く関係していて責任を過剰に背負ってしまったのなら納得もするでしょうけど・・・そこらへんをあえて触れないみたいな流れですすめる意図が良く理解できませんでした。
あと、テーマですね。大きなところは親友、友情、時に献身の大切さってところで、エリオとグロードンとの絡みはまあ良かったです。しかし、この作品の最後でアピールされた、まるでとってつけた様な価値基準「ありのままで良いんだ」にこれらが繋がるかって言えばそうでないと思います。言い方乱暴ですが、たまたま結果オーライ(奇跡的に宇宙人と交信できた)なだけな気がしました。エリオ語なんて空回りしてました(笑)。
では、文句ばかりいっても仕方ないので提言をひとつ。
この物語で明瞭なテーマとして設定可能だと考えられたのは「親の愛、絆は永遠に続く」でしょうか。
せっかく今は亡きグロードンママの愛をグロードンパパの「お包みのスキル」に継承させ、観客をほっこりできたんだから、エリオと彼の両親についても「エリオ語」あたりをキーワードにして同じことができたはずです。
今作ではエリオ語がエリオ自身が思いつきで考えた特殊で意味不明な言語体系・・・つまり単純に「エリオの個性」と決め付けちゃうから、話がそこから広がらなくなるわけです!正直、多様性をアピールするだけの薄っぺらい設定に成り下がっていると思います。
これを、「エリオの両親がエリオが言葉を話しはじめた時の単語を丁寧に拾い、家族同士だけ意思疎通ができるように両親が主体となって言語体系化した」・・・というふうに設定づけたらどうでしょうか。エリオがエリオ語を使う真の意味「亡き両親との絆」が深く明確になるし、使い方次第では叔母のオルガとエリオの両親との絆も構築できます。両親はエリオ語を理解していた旨の発言がエリオからありましたから、そこまでおかしな設定ではありません。
弱ったグロードンを載せた小型宇宙船が、全世界の無線ファン達の指示をリアルタイムで受けスペースデブリを避けるミッションがあったと思いますが、最後の絶対絶命のシーンで電波に紛れて「(家族でお決まりの慣用句での)エリオ語の指示」があったなら・・・私、そこで涙がとまらなくなったと思いますよ。
なんとも惜しい作品でしたね。
では。

