クオリアのレビュー・感想・評価
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慈愛と狂気
今日は、上映後に舞台挨拶のある回を鑑賞できたので、それも踏まえたレビューにしたい。
養鶏場の妻ユウコへの感情移入が、はじめは中々出来ずにいたが、ストーリーが展開していくに連れ、田中家(義姉サトミ、夫リョウスケ、従業員タイチ、そして夫リョウスケの不倫相手のサキ)との生活の中で起きる、様々な出来事によって、じわじわユウコの思いに導かれていく…
いいのか悪いのか、はたまたなんなのか、なんとも言えない、今まで感じたことのない感覚に陥ったのだ。
ユウコの自己犠牲といっても過言ではないほどの慈愛と、姉との過去を引きずり、不倫相手との逢瀬でストレスを発散するリョウスケ。その二人の間に入り込んでくる人間たちの狂気。
登場人物が全員、何らかの闇を抱えながら生きている…その様を「スクリーン」という窓から眺めているというのが、この作品との付き合い方だろう。
上映後の舞台挨拶、牛丸監督の「わからないことをわからないこととして見せる」という言葉が印象的だった。
兎角、映画はわからないことをわかるように、様々な演出や編集で見せることが多い中、あえてそのままにする。
だからこそ、初見の感情と二度目の感情の違いが明確になり、それがこの作品の大きな魅力となっているのではないだろか。
今回は監督の牛丸亮氏、主演の田中ユウコ役の佐々木心音氏、そしてユウコの義姉、田中サトミ役の久田松真耶氏のお三方の貴重な話を拝聴する機会に恵まれ、作品と共に素敵な時間であった。
二度目の鑑賞でどんな感情を得られるのか…
もう今から、その期待で一杯である。
犬顔なのに
もっとドロドロかと思いきや、序盤はかなりコミカル。
そこから終盤に向かうにつれ、作品の空気もキャラへの印象も変わっていく。
最も印象的だったのは優子で、いびられても怒鳴られてもニコニコした姿に最初は異常性すら感じる。
不倫に何も言わないのも、彼女の方が良介への興味や執着がないという皮肉かと思っていたのだが…
裏設定として、嫉妬の感情が極端に薄い(重婚主義に近い)とのこと。
必要とされることが何より大事なのに、少しずつ咲に居場所を奪われ、良介も自らの意思で出頭してしまう。
この時、自分の必要性が失われたと感じたのだろうか。
足の悪い姉と妊婦の咲だけを残せず、良介の出所を以て役目を終えたように家を出る。
それは決して愛想を尽かしたからではないだろう。
優子に偉そうに振る舞う良介を見て、咲が自分への態度を薄っぺらく感じるところが面白かった。
そうされたら嫌なのに。家族になったらそうされるかもしれないのに。
あんなThe無責任男、幻滅しそうなものなのに、子種をもらってまで続けますか。
太一の人間臭さは好きだし、スナックのあれは養鶏に携わってなくてもブチギレる。
ただ、道の駅の売店にもその客にもトラウマ級の被害を出したテロ行為は、擁護できないなぁ。
登場人物みんなどこかしら狂ってた。
咲の父親が何をしていたのかなど、余白もある。
しかし感情の動きやメタファー、タイトルの意味など、探りながら見返す面白さもある作品だと思う。
何より、舞台挨拶後にお話しさせていただいた際に楽しそうに語ってくれた牛丸監督が魅力的だった。
いい演技をする役者を知ってほしいという気持ちも含め、応援したい。
いかにもミニ系的な作品だが面白い作品
こんな村社会ならすぐに噂になっていられなくなるだろけどね 石川はすっかりミニ系の主役に今度メジャーな作品で主役級で出て欲しいが
子種下さいはいどうぞなんてあり得ないと思うが!
初監督の方の作品としてはおすすめ以上
今年90本目(合計1,182本目/今月(2024年3月度)8本目)。
(前の作品 「おまえの親になったるで」)
シアターセブンで見てきました。
初めての監督さんということでしたが、それを感じさせない品質の高さが良かったかなといったところです。
テーマというか舞台がほぼ養鶏場しか動かないし、解釈のゆらぎはあるとしても軽いホラーもの(ホラーというかは微妙ですが、怪奇ものというのも変?)という扱いになるんじゃないか…と思います。
一応気になるシーンもないわけではないですが(法律上怪しい行為がちらほら)、この作品、元ネタが演劇(お芝居)であることも関係してストーリー自体にあることないこと入れられない(原作改変どころではすまない)事情もあるし、飯田市(一応、クレジットとしては登場する)のローカルネタという事情まで鑑みれば、大きくは引けないといったところです。
また、主人公(この映画の主人公を誰に取るかは色々ありましょうが)佐々木心音さんが良かったかな、といったところです。
軽いホラーもので、PG12以上つくような内容ではないですが、一部表現上の「かわし」が見られる点もあり、PG12以上はついても仕方ががないんじゃないかな、と思います。
これらの配慮の問題ほかまで含めて以下のように評価しています。
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(減点0.3/養鶏上の一部の表現について)
テーマが養鶏であること、また軽いホラーものという事情もあり、動物愛護法上よろしくない行為がいくつか見られますが、これらについては通常はエンディングロールで「動物愛護については適正に対応されています」などの断り書きが出るのが普通かなと思うのですが、本映画ではなし。
ただ、そのあとの舞台挨拶(シアターセブンは比較的観客との「距離の短さ」が売りのシアター)で、それがないまま「ファミチキで油ぎっちょの~」といった漫才ネタに飛ぶのも、「やや」配慮が足りないかな…という気がします(ただ、個々個々複合的に起きる問題であり、「ファミチキ~」に関しては台本なしの漫才ネタで出てきただけで「結果的に」気分を害しうるという部分に過ぎないので、採点上はこの程度にしています。
(減点0.1/ニワトリが出荷される前日にパンくずをあげるのあげないのの話)
そのパンくずが、人間が食べるものではなく他に転用がきかない場合、鶏に食べさせるかどうかは、簿記会計上はいわゆる「埋没原価」と呼ばれるもので原価計算上無関係になります。一方で、この映画の経営者と思われる男性(父親)も、ある種ホラーという世界観からうかがい知ることは完全には難しいものの「養鶏なんてどうでもいい」とまでは思っていないはずです(そうであるとすると個々の発言がかなり矛盾する)。この点やや配慮を欠くかなといったところです(パンくずなんて、何年も持つものではないので、埋没原価になるのであればさっさと消費しないとある意味でフードロスです)。
※ なお、埋没原価になるというのは原価計算上の「理論的な」話です。養鶏においてどのような「実際上の」簿記会計が行われているかは調べてみましたが不明でした(個別原価計算?何らかの仮定をおいた総合原価計算?)。
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初監督でこれは凄い
冒頭の猟銃で皆殺しにするだろうとか、罪悪感や共犯者意識につけ込んで心理的支配者になるだろうなどと予想していた自分を恥じる。名前通り優しくて男前な人だった。ラストの爽快感は格別。
使い捨てにされるのは、そもそも使い途があるからなのだが、「使い途がある」と「必要とされる」とは違うんだなぁ…
めちゃくちゃ面白かった。
鶏の幸せとは?人間の幸せとは?
映画『クオリア』を観ました。
ブラックユーモアがある話でしたが、テンポがよく、最後まで引き込まれるストーリー展開でした。ラストも色々な考え方ができる作品で後味も良かったと思います。
作品の舞台は養鶏場です。卵を産めなくなったメスの鶏は処分されていきます。鶏にとっての幸せとは?生きることとは?ということを投げ掛けつつ、実は人間も一緒なのでは?という奥の深い意味を考えさせてくれてます。
主演の佐々木心音さんは、何も考えていないようで本当の幸せを考えている役を好演していました。良い女優だと思います。
深み感じた
主演の佐々木心音さん。脱ぎません。しかし、グラビアも演技の勉強と頑張ってきた彼女の、本領発揮!と言ったところではないでしょうか。不思議ちゃんのようで、憎めないフワフワ感は、このままだとイラっと来てしまうかもでしたが、最後の「あとは私、やっとくんで」と啖呵を切ったときのドスの聞いた眼差し、女優真骨頂を見た気がしました。
ジャンルレスな良作
ヒューマンドラマ、コメディ、スリラー等ジャンルの特定が難しい。
観終わると様々な情報が得られる。
2度目は見え方が変わるだろう。
それぞれのキャラクターの印象が劇中でもどんどん変化していく。
人間の行動や心理を考えることができる作品。
チラシの著名監督達の評価も納得の一本。
人の心は見た目より美しい。
田舎の養鶏場という閉鎖的な環境での家族や夫婦のあり方の映画かと思って映画館へ。
期待を大幅に裏切る、人の心の熱いモノを感じさせてくれる映画でした。
言葉や態度の一つ一つが後になって心に響く。結末というか、人物の背景•現実を知った後で(映画を観た後で)もう一度、表情や言葉の意味を見直したい作品。
5人のメインキャストを演じた方々も素晴らしかった、ありがとうございます。
秀作だと思います。私は大好きです。
おすすめです。
誰かが見ている
性的なものに限らず、人は自分の中の“劣情”を他人に見透かされているのではと焦りながら生きているのだ。養鶏場を営む田中家の中に一人の女が乗り込んで来て、養鶏場の人々はその劣情が生む焦燥感に苛まれ、更に疑心暗鬼に立ち回り出す。その滑稽さが何とも言えず人間的で哀れにすら見える。ことの最後に主人公が選び取った身の振り方は言わずもがな、人としてありきたりではある。妻がその上で選び取る結末もまたしかり。だからこそ尚の事人間臭くて愛おしくなる。最後に自らの殻を破ったのは鶏たちだった。
これが初長編の俳優・牛丸亮監督作品。登壇の瀬々敬久監督が「ショーン・ペン作品を見ているよう」との称賛に、賛成の一票を!
バケツ手洗いは自宅用ですよね!?
田舎町で養鶏場を営む田中家と、住み込みで働き始めた夫の不倫相手の荒んだ人間関係の話。
養鶏場を営む俺様夫、ゆるふわを通り越して最早発達障害?な嫁、弟と嫁のことを何でも決める足の悪い義姉、そして鶏ヲタクの住み込み従業員が暮らす家に、夫の不倫相手の妊娠したと宣う女がやって来て巻き起こっていくストーリー。
そもそもの夫との馴れ初めはまるでわからないけれど、やす子バリになんでもはい〜な嫁の勘違いでバイトに雇うことになったけど、世間体という意味では最早アウトだし義姉は何で…まあいざとなったら逃げるタイプだからそんなものかw
逆算したらすぐにわかりそうなものだけど…なんて思っていたら、まさかのあ〜そういうことなのね。
コミカルっていえはコミカルだし、ブラックといえばブラックだけど、ちょっとアホっぽ過ぎてそれほどは盛り上がらないし、最後も何でそのタイミング?鶏さんの為?今更その展開でそれだけではもの足りないっす。
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