「カムバックした漢(玉山次元)」次元大介 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
カムバックした漢(玉山次元)
『ルパン三世』の黒歴史…? 2014年の実写版。
作品自体はともかく、小栗ルパンや黒木不二子ら特にキャスティングに色々と声が…。
そんな中なかなかハマってたのが、玉山鉄二が演じた次元。
そしてまさかまさか、9年ぶりに玉山再演で次元が主人公の映画が作られるとは…! 実写ルパンより興味惹かれたかも。
Amazon Prime Videoオリジナル映画。U-NEXTでの配信も始まり、先の『ルパン三世vsキャッツ・アイ』と併せてようやく鑑賞。
愛銃、コンバットマグナムに不調。修理の為、次元は世界一のガンスミス(銃職人)がいる日本へ。
意外にも世界一と言われるガンスミスは、寂れた商店街で時計屋を営む老女だった。その老女・矢口はもう引退したと言い、愛銃の不調を見抜けなかった世界一のガンマンにも落胆し、修理を断る。
そんな時、店を訪れた一人の幼い少女。名は、オト。
ある時計を持っていて、昔矢口が依頼を受けその時は断った客の娘らしく、オト自身も言葉を話せず何か訳あり。
きな臭さを感じた矢口は、銃の修理を引き受ける代わりに、この件への協力とオトのボディガードを頼む。
渋々引き受けた次元だったが、きな臭さは的中。犯罪者たちの巣窟、泥魚街の陰謀絡み…。
泥棒アクション、サスペンス、コメディなど娯楽色濃いのが『ルパン三世』の作風なら、こちらは“次元大介”というキャラを活かしたハードボイルド。
ニヒルなガンマンにはやはり犯罪街が映え、メイン舞台の泥魚街は往年の日活アクションのような無国籍ムード充分。
泥魚街にそびえ立つ巨大なビル。“鯉のぼり”と呼ばれる組織が街を牛耳り、組織内でも下克上。
先代を殺し、新たなボスの座に就いたのは、アデル。
元伝説の殺し屋。金髪ボブで、車椅子で片足が義足。声も変声期で。本名不明、国籍不明、年齢不詳の謎めいた女。
キャスティングを見て真木よう子は次元と大人のムード漂わせるヒロインかと思ったが、まさかまさかの敵ボス。クールビューティー怪演。
いや、怪演はこちらこそかもしれない。アデルの部下、川島。演じているのは、永瀬正敏。
…の筈なのだが、その永瀬正敏が時折別人に。それも一度や二度じゃない。登場の度に。
見る人によって、顔も姿も性別さえも別人に見えるという特異体質の川島。怪演と言うより、超異色キャラ。
“鯉のぼり”がオトを狙う理由。“鯉のぼり”は子供の身体から薬物を作り出す人体実験を行っていた。その薬物は人の老化を止める作用が。若く見えるアデルだが、実年齢は50歳を超えている。
人体実験はいずれも不適合続くが、唯一オトだけ適合。
それ故、過酷過ぎる過去が…。両親を殺され、幾度も人体実験に晒され…。
それを記した手帳を読んだ時、さすがの次元も顔を歪めたほど。そのショックからオトは言葉を話せなくなり…。
命からがら逃げ出し、矢口の店へ。
次元や矢口との交流、まだ幼いながらも想像を絶する過去…。あどけなさや可愛らしさも魅せ、注目の子役・真木ことかが難役を見事に演じる。
コミック原作のアクション映画に、草笛光子とは珍しいキャスティング。しかしルパンの世界観に、こういう食えない老女キャラは居そう。さすがの存在感を発揮。
周りが個性たっぷり。食われそうにならず、玉山鉄二もカッコ良さ渋さを存分に発揮。ガン・アクションも勿論。
子供が嫌いな次元。そんな彼がオトとの交流を通じて…。
不器用ながらも、トレードマークの帽子を被せてやる。手帳に紐を通して掛けてやる。次第に情が沸く。
オトの過酷な過去を知り、守ると誓う。
アニメとは違う、実写玉山次元。
こんなの次元じゃない!…との声もあるだろう。が、ハードボイルドの漢は意外や人情や優しい一面もある。それがハードボイルドの漢の魅力の一つでもある。
急襲され、オトは再び囚われてしまう。
奴らから助け出し、オトの止まった時間(とき)を放つ。この愛銃と弾丸で。
邦画では昨今珍しいガンマンを主人公にした本格暗黒街ハードボイルド・アクション。
往年多く作られた同ジャンルに、新たな風穴を開ける!…までの威力は無かったようだ。
子供の身体で薬物を作るが、どうもピンと来ない。
川島の特異体質も何故に…?
泥魚街のムードや設定はいいが、それをリアリティー無しと見てしまったら、作品自体に乗れない。
ガンアクション・シーンに於いて、敵の銃弾乱れ撃ちの中、次元には一発も当たらず。一応悪組織なのに、揃いも揃って射撃下手なの…? 何だか凡作アクション『リボルバー・リリー』を思い出す。
ラスト、アデルと一対一、一発対一発の決着。ここに来るまでの間部下たちと銃撃戦繰り広げ、ここでまた同じ事繰り返したら冗長に過ぎず、一発対一発はカッコ良くていいが、ちとアデルが呆気なかったかな…。奇抜な車椅子ガンアクションを魅せたのは先代ボス殺しの時だけで何だか勿体ない…。
一匹狼と少女は『レオン』のようにスタンダードだが、演出や脚本にご都合主義やツッコミ所は多々。荒唐無稽なら話題の実写『シティーハンター』も同じだが、原作リスペクトや粋やセンス、振り切ったエンタメを感じた。
橋本一監督は『探偵はBARにいる』では粋なセンスを魅せていたが、こちらではムードやカッコ良さを重視してちょっと窮屈さを感じてしまっただけに惜しい。
賛否は激しいが、そこまで駄作とは感じず。
基本次元単品アクションとして見れるが、見え見えよりちょっとしたリンクネタも心憎い。
闘い終わって、次元が矢口とオトに振る舞う料理。その中に、ミートボール入りのスパゲティ。
ラストシーン。次元を迎えに来た黄色のフィアット。乗っていたのはやはり“小栗旬”…?
それこそその実写ルパンよりかはエンタメ・アクションとして良かった。
ルパン一味の単品実写は鈴木亮平が銭形を演じた日テレ&WOWOW製作ドラマと、本作。
いずれは五ェ門や不二子も…? その時は続投? キャストチェンジ?
単品実写とアニメコラボ。どっちがこれからも見たいかな…?