市子のレビュー・感想・評価
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深淵なるもの
お、これはいいぞ。
年末までの鑑賞候補作には入ってなかったのだけれど、ポスタービジュアルに惹かれて鑑賞。そしたら、予想以上に面白い! 思わぬ拾い物だった。
真夏のアスファルトの道。何故か女性の低いハミングのオープニングが印象的。
訳ありの彼女の失踪から、ちよっとしたミステリを装いながら、過去と今を行き来しながら物語が進む。まあ、普通のミステリ風に、だんだんと彼女の過去が明かされていくのだけれど、そこにとてつもない闇が帳を下ろしていた。
平板な描写の連続で、昭和のドラマを思わせる撮影スタイル。セリフも掛け合いは静かで、沈黙も多い。派手さは無いのに、何故かグイグイ来て、画面から目が離せない。
なんといっても杉咲花が、秀逸。
浮世離れした存在感が作品にぴったりマッチしていて、話の先を知りたいような知りたく無いような、不思議な感覚にとらわれる。彼女の、死んではいないけど、生きてもいないような目。単なる絶望感とも、諦めとも違う、深い沼の底のような目が良い。それを覗きたいが、近づくのが怖く思える。崖の上から真っ暗な海を覗くような感覚だろうか。
エクソシストより、よほど怖いかも。
そこそこの客足だったのだけど、エンドロールで、最後まで誰も立たなかったのが印象的。好き嫌いはありそうだけど、一見の価値あり。
3.6なかなか難役を杉咲花が良かった
傑作というよりは問題作、杉咲花に脱帽
タイトル通りです。
技術面で細かく気になる点はあれど、圧巻な作品の内容とそれを見事に演じ切った杉咲花に言葉もありません。
ラストの汗と鼻歌が示す結果と、それでも前に進む彼女の足取りはしばらく頭から離れないでしょう。
杉咲花さんの素のような表情が好き
切ないというよりただただ哀しい。生まれや環境は選べないし、安全圏にいる人間がこうすれば良かったとか、なぜそうしなかったのかなど、外野から口を出すのは容易い。その中で与えられている選択肢があまりにも少なくて過酷で、より現実みがあった。恋人の誠実さに救われていた市子、大雨に打たれて歓喜する市子、そして夢を語る市子の顔が美しかった。だからこそやるせない。杉咲花さんの素のような自然な表情がとても良かったです。
市子と義則の出会いのシーンが一番好きです。何かが始まる予感、互いにピタッとハマるような感覚っていいですよね。
引き込まれたが、ラストがよくわからなかった
けっこうはまりました。
2時間の作品でしたが、丁寧にストーリー展開されていて、観ご耐えありました。
杉咲さんはじめ、素敵なお芝居でした。
もっとこういった秀作を上映してくれる映画館が増えて欲しいと思いました。繰り返し観たい作品でした。
仮定法過去完了
辛くて衝撃的な作品だった。 暗いしスッキリするような話ではないけど...
おちょやん
杉咲花の陰キャ芝居。
ここにはいない
主題歌の無い映画は怖い。落ち込むほど食らってしまう。作品のテイストによるだろうけど、邦画はこうあるべきだと思う。エンドロールに何かある訳でもないのに、誰一人として席を立たない。このたった3分間の暗幕が身震いするほど恐ろしい。「福田村事件」以来初めて、もどかしくやるせない感情が全身を襲った。
テーマとしては昨年度日本アカデミーの作品賞を受賞した「ある男」と似たものを感じるが、それ以外は他のどの作品にも当てはまらない唯一無二の独創性があった。映画を熟知している人が撮ったんだと見て取れる。登場人物に迫るカメラワーク、無機質で静かな演出、そして他人目線で描かれる市子という存在。どれもこれも秀逸。パンフレットによると、大好評により2度も再演した人気舞台が原作で、映画化にあたり黒澤明監督の「羅生門」をベースにして作品を構成したらしく、おかげで非常に厚みのある物語に仕上がっている。とても舞台が原作だとは思えない、小説らしくもあり映画的でもある作品。魔法にかけられたように惹きつけられた。
市子というタイトルでありながら、市子目線で描かれることは決してない。常に第三者目線で市子という人間が語られるため、彼女がどんな気持ちだったのか、何を考えていたのかは全く分からない作りとなっている。当人の目線で描いていれば、他人からは見えない部分が見えてくるため、より一層感情移入し共感出来たりするのだけど、本作ではあえてその手法をとっていない。それがすごく辛い。他人から見た市子はどれも本当の市子ではなく、真の姿は母親ですら知り得ない。当然、観客である我々にも分かるわけもない。だが、1人だけ彼女を知る人間がいる。それは是非とも劇場でご覧頂きたいが、とにかくその人物との関係性が悲しく辛いのだ。
人を理解すること、そして逃げること。失踪事件から始まった市子探しは、いつの間にか市子本人ではなく、市子の気持ちを探す物語へと変貌。サスペンス、ミステリーのような序盤から、胸にグサッと刺さる人間ドラマに持っていく展開の上手さ。時系列を見事にバラし、観客を困惑させながらも作品の渦へと巻き込んでいく。ストーリーから演出まで、映画のあるべき姿を徹底して練り込まれた、杉咲花の代表作とも語られるだろう大傑作。言語化するのは難しいが、少しでも興味を持ったら見て頂きたい。今週、いや、今月のベストムービー。ぜひ。
北くんはどうなったの?
プロポーズした彼女市子が翌日失踪した。 彼女と関わってきた人たちの...
がっつりミステリーな本作
今ではすっかり死語と化した「親の七光り」という言葉。尤も、芸能界と言われる「業界」にも多くのカテゴリーが存在するし、変に印象をつけられないために芸名を変えたり、プロフィールをぼかして紹介する事務所も多いようです。そして、今作の主演である杉咲花さんも私の世代なら知る人の多いギタリスト木暮"shake"武彦氏の娘さんですが、私自身がそのことを知ったのは彼女が活躍し始めてしばらく経ってのことでした。勿論、それを知ったところで特に印象は変わらないだけの実力とパーソナリティのある女優さんです。子役の頃の活躍こそ知らないものの、最初に目に留まったのはTV CMの「Cook Do(11-17)」、そしてテレ東ドラマ『なぞの転校生(14)』、さらに映画『トイレのピエタ(15)』『湯を沸かすほどの熱い愛(16)』など、タイプの違う役柄を次々とこなし、そのクオリティが高いことから私にとって気にならざるを得ない、存在感の大きい俳優さんの一人です。
いつもの如く「前置き」が長くなっておりすいません。
まだ今年観た映画をきちんと振り返ってはいないのですが、本作における杉咲花さん、おそらく年末年始の賞レースで最優秀賞主演女優賞を多く受賞すると感じさせるだけの名演だと思います。個人的に、彼女の「感情高ぶった演技」が好きなのですが、本作においても「突然の雷雨」のシーンなど最高でした。惜しむらくは、彼女が演じる主人公「市子」はアバンタイトルで失踪、その後しばらくは「過去」を回想するシーンが続くため案外前半は出演シーンが少ないこと。まぁ、それを補って余りある「市子」の想像だにしない人生を知りながら観る杉咲さんの演技に、「それだから…」と説得力を感じさせる表情や雰囲気に唸るものがあります。
それにしても、近頃にしては案外珍しいくらいがっつりミステリーな本作ですが、きちんと現代における「社会問題」をベースにして作られており、ストーリーとして大いに見応えがあります。監督自らが原作した戯曲だそうですが、どれだけ映画としてのオリジナリティがあるのか。舞台と映画における題名の変化は、トータルにおいて「バランス」の変化が影響したのかなど気になります。そして、映画の終わらせ方はそっちで来たか、と思いつつ、エンドクレジットの後ろで聞こえてくるのはもしや「幸せだったあの頃?」と思える家族の声にまたザワッとします。
助演の皆さんも総じて素晴らしいわけですが、特に宇野祥平の配役は大当たりかな、と。と言うのも劇中、宇野さんが演じる後藤刑事は「刑事がそんなことする?」という、物語の展開に大きく影響することをしでかしつつ、その後のフォローもしないという暴挙(笑)なのですが、宇野さんの醸し出す人間味あふれる雰囲気で何となく許せるから不思議です。
とまぁ、ツッコミどころがないわけではないながらも、昨今の邦画に多い「伏線回収」的なギミックで胡麻化さず、堂々たるミステリーとなっており、「人はなぜそれを犯すのか」を考えさせてくれる良作です。観る価値あり。
忘れることが出来ない存在感
はたして市子は悪魔だったのだろうか
お断りしておくが、これは連続殺人の容疑者の市子が行方をくらまして逃亡を続ける話だ。
現に映像は、犯人を追う刑事が、容疑者の関係者といつ会って事情聴取したか、といった捜査メモの記録の体で流れていく。
見方によっては、男心を巧みに操る悪魔が、壮絶な運命に抗い、すべては生き抜くために(映画の広告コピー)、やったことと捉えられてもしかたがない。
ところが、そんな固定観念を見事に覆す、市子演じる杉咲花の快演がそこにはあった。
彼女は守られるべきだ。幸せになってほしい。
若葉と森永扮する恋人たちのフイルターを通して、誰もがそう懇願することになる。
連続殺人の容疑者が、普通の生活を手に入れるラブストーリーと錯覚して画面に釘付けになる。
よく言えばほっておけないタイプ、悪く言えば人たらし。そんな見方も入り込んでくる。
はたして市子は悪魔だったのだろうか。
そんな議論も、杉咲の乾いた熱量の前にあっては、いともたやすく宙に浮く。
市子がどうであろうと、杉咲の魔法にかけられて、ただなすがままにじっとしていよう。
ベストな鑑賞はそれに限る。そう実感した。
ただ普通に生きたいと願う市子
すべては、生き抜くために
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