劇場公開日 2023年12月8日

「杉咲花がすごい。」市子 Marikoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5杉咲花がすごい。

2023年12月28日
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鑑賞方法:映画館

今年最後の最後にキターーー
【市子】にびっくりした。

窪田正孝&妻夫木聡の去年の「ある男」にテーマは似ていて、簡単に言うと「なりすまし」で生きざるを得なかった人の話。
市子の場合は、まず自分の戸籍がそもそもありません。
戸籍がないということは、保険証もない、学校にも通えない。それでどうしたか?というと、他人を【始末】して、その人になりすまして生きていくわけです。
でも、その大きな秘密を抱えながらひっそりと生きていても、人生の選択においてどうしても誤魔化しきれない事になり、彼女は逃亡する場面から映画はいきなりはじまります。
この映画、オープニングとエンディングがめちゃくちゃセンス良くて、最後なんか音楽も無し。鼻歌と、足音だけなんです。韓国映画のようなエッジが効いています。

まず特筆すべきは、市子役の杉咲花ちゃんがべらぼうに上手く、
恋人役にこれまた芸達者な若葉竜也(大衆演劇出身の彼には最近とっても注目しております。「愛がなんだ」ナカハラ役でまずやられました)。

決して裕福ではないけど、ある夏の祭りの夜に出逢ってやがて一緒に暮らし始めた2人の3年間。狭いけどなんか私好みな小さなアパートで仲良くつましく暮らしていた。
ところがその暮らしはある日を境に一変し、市子は失踪してしまう。
義則がプロポーズをした翌日、忽然と消えてしまう。

途方に暮れ、警察とも協力しながら市子の行方を追う義則は、やがて信じがたいほどの苦難に満ちた市子の過去を知ることとなる。といったストーリー。

子供時代から成人後まで、市子と関わりの深かった人物が数人登場しますが、各々のエピソードを通じて、市子の複雑な胸の内や葛藤を知ることができ、いかに彼女が自らの宿命を振り払うように懸命に生きてきたかを知ることになります。

彼女を心から愛して、死ぬほど心配して探し続ける義則に若葉竜也くんが非常にハマっていて、彼の曇りのない真っ直ぐな愛が素敵です。

それだけに、切ない。

結末は、ありません。ベタな御涙頂戴演出も、ありません。
胸が締め付けられるけど、すごい作品だな、と呆然としました。邦画では稀な事です。

Mariko