けものがいる

劇場公開日:2025年4月25日

解説・あらすじ

人々が感情の消去を余儀なくされた近未来の社会を背景に、100年以上の時を超えて転生を繰り返す女と男の数奇な運命をスリリングに描いたSFドラマ。

2044年、AI中心の社会において人間の感情は不要とされ、重要な仕事を得るためには感情を消去しなければならなかった。孤独な女性ガブリエルは感情の消去に疑問を抱きながらも、仕事に就くため消去を決意する。彼女は、前世のトラウマを形成した1910年と2014年へさかのぼり、それぞれの時代でルイという青年に出会うが……。

「SAINT LAURENT サンローラン」のベルトラン・ボネロ監督が、イギリスの小説家ヘンリー・ジェームズの中編「密林の獣」を大胆に翻案。近未来をクールに映像化した2044年、35ミリフィルムで撮影した1910年、実際の事件に着想を得た2014年と、異なるコンセプトの3つの世界観で描きだす。レア・セドゥがガブリエル、ジョージ・マッケイがルイを演じ、グザビエ・ドランが共同プロデュースおよび声の出演。2023年・第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。「横浜フランス映画祭 2024」では「けもの」のタイトルで上映された。

2023年製作/146分/G/フランス・カナダ合作
原題または英題:La bete
配給:セテラ・インターナショナル
劇場公開日:2025年4月25日

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映画レビュー

4.0スローターハウス5×マトリックス×D・リンチ風が錯綜する迷宮世界を、レア・セドゥとバッドトリップ

2025年5月7日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

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高森 郁哉

3.5特殊すぎる構造を持つ近未来SF

2025年4月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

本作にはSF的な要素が溢れてはいるものの、それらを真逆のクラシックなストーリーテリングへと落とし込んでいるのが本作のユニークさだ。舞台となる2044年では人間の感情というものが、もはや不測かつ理性的な判断に欠ける「脅威」とみなされている。それゆえ人間に与えられるのは3K的な仕事ばかり。もしもそれ以外の上級職に就きたければ、「意識を前世にまで遡らせる」という半ば儀式的な審査過程を経た上で、感情の浄化(消去)を行わねばならない。本作の肝ともいえるこの設定と展開。セリフだけで聞くと理解するのに時間がかかるものの、私は途中から「要は『インセプション』の感情版のようなもの」と半ば強引に解釈することで少し受け止め易くなった。評価が割れる作品ではある。それでもなお魅力を失わず成立したのはセドゥとマッケイの磁場があったから。今よりも10年後、20年後に理解が追いつき、再評価されるタイプの作品かもしれない。

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牛津厚信

3.5Modern Alienation

2025年4月7日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

La Bête is a critique on the Western world's love of tech, done with a tongue-in-cheek approach reminiscent of films like The Square or Bad Luck Banging. There is a sci-fi narrative that parallels Je T'aime, Je T'aime in its scenes that jump across time and space. Its focus on an LA incel vlogger and gunman is characteristic of what a late Godard film might have been. It's funny to think it is based on a 1903 novella.

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Dan Knighton

4.0未来の前世療法物語

2025年7月22日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

前世療法とは、現在抱えている心理的な問題を、前世を想起させることで解決しようとする心理療法です。

催眠を使うこともあるようだ。

前世療法に於いては、想起された「前世」が現実に起こったことかどうかには関心がない。(そもそも検証不可能)

要は、今抱えている心理的問題が解決すれば良いのだ。

そう思ってこの映画をとらえ直すと構造が見えてくる。

ディスコシーン(1910年のパリでは舞踏会)、占い師、ナイフ、得体のしれない獣、鳩、は全体を通して「鍵」として通底する。

ようは、ガブリエルはルイが好きで苦しい→未来のシステムはその苦しみを前世療法で解除しようとして失敗する。

という話として矮小化できなくはない。

恋の苦しみを解除してもらわなくて結構、余計なお世話というわけだ。

2044年は英語で会話がなされるが、1910年のパリではフランス語。

ガブリエルとルイが隠された前世療法の目的に触れる時は英語での会話になる。

2014年のロサンゼルスでは英語が通常で、ところどころフランス語が挟まる。

過去世がフランス語、現在が英語という対応が最後になるにつれ混乱してくる。

過去世を通じて今を解決しようという試みのセッションの中では納得的な展開である。

過去世の中で結局、ガブリエルとルイは結ばれない。

どちらでもガブリエルは死ぬ。
パリの人形工場が何の説明もなく水没するが、あれは前世療法におけるガブリエルの心象風景なのだ。
ルイが溺れ、ガブリエルはかんぬきを開けられずに死ぬ。

ロサンゼルスではガブリエルはルイに抱かれたかと思うと彼は見知らぬおじさんに変貌し、最後にガブリエルはルイに銃でうち殺される。(いかにもフロイトっぽい)

心象風景のイメージ化であるから筋立てが混乱するのだ。(そうでなくてはならない。)

前世療法の「前世」をクリアにイメージさせるというのが2044年のテクノロジーなのだろう。
グリーンスクリーンはその暗示。

最後にイメージが、ぶれ、巻き戻しになるのはそういうことだ。

この映画のテーマは「苦しみを取り除く」ということの胡散臭さを突くことにあるように思える。

「DNAに刻まれた前世の不都合な記憶を浄化する。」

なんという陳腐な言い草であろうか。

コントロール出来ない「ケモノ」こそが人間の証ではないかと。

しかし、そのテクノロジーに抵抗できるのはたった0.6パーセントなのだ。

肝心の現在のルイは浄化されてしまう。

最後のガブリエルの叫びは0.6パーセントの絶望に聞こえた。

アンドロイドの黒人のお姉さんは優しくガブリエルを慰めるが、結局、「ケモノ」を処理することは出来ない。

当然だろう。

人形とは?
ダンスとは?
ナイフとは?
ケモノとは?
未来を語る占い師とは?
襲いかかる聖なる鳩?
潰れた血まみれの鳩(キリスト?)
心理療法のオンパレードだ。

追記
ルイはどこかで見た役者だと思ったらfemmeのプレイストンだ!
ジョーシ・マッケイ、大した役者だと思った。

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ふくすけ