けものがいる

劇場公開日:

解説・あらすじ

人々が感情の消去を余儀なくされた近未来の社会を背景に、100年以上の時を超えて転生を繰り返す女と男の数奇な運命をスリリングに描いたSFドラマ。

2044年、AI中心の社会において人間の感情は不要とされ、重要な仕事を得るためには感情を消去しなければならなかった。孤独な女性ガブリエルは感情の消去に疑問を抱きながらも、仕事に就くため消去を決意する。彼女は、前世のトラウマを形成した1910年と2014年へさかのぼり、それぞれの時代でルイという青年に出会うが……。

「SAINT LAURENT サンローラン」のベルトラン・ボネロ監督が、イギリスの小説家ヘンリー・ジェームズの中編「密林の獣」を大胆に翻案。近未来をクールに映像化した2044年、35ミリフィルムで撮影した1910年、実際の事件に着想を得た2014年と、異なるコンセプトの3つの世界観で描きだす。レア・セドゥがガブリエル、ジョージ・マッケイがルイを演じ、グザビエ・ドランが共同プロデュースおよび声の出演。2023年・第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。「横浜フランス映画祭 2024」では「けもの」のタイトルで上映された。

2023年製作/146分/G/フランス・カナダ合作
原題または英題:La bete
配給:セテラ・インターナショナル
劇場公開日:2025年4月25日

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映画レビュー

3.5特殊すぎる構造を持つ近未来SF

2025年4月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

本作にはSF的な要素が溢れてはいるものの、それらを真逆のクラシックなストーリーテリングへと落とし込んでいるのが本作のユニークさだ。舞台となる2044年では人間の感情というものが、もはや不測かつ理性的な判断に欠ける「脅威」とみなされている。それゆえ人間に与えられるのは3K的な仕事ばかり。もしもそれ以外の上級職に就きたければ、「意識を前世にまで遡らせる」という半ば儀式的な審査過程を経た上で、感情の浄化(消去)を行わねばならない。本作の肝ともいえるこの設定と展開。セリフだけで聞くと理解するのに時間がかかるものの、私は途中から「要は『インセプション』の感情版のようなもの」と半ば強引に解釈することで少し受け止め易くなった。評価が割れる作品ではある。それでもなお魅力を失わず成立したのはセドゥとマッケイの磁場があったから。今よりも10年後、20年後に理解が追いつき、再評価されるタイプの作品かもしれない。

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牛津厚信

3.5Modern Alienation

2025年4月7日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

La Bête is a critique on the Western world's love of tech, done with a tongue-in-cheek approach reminiscent of films like The Square or Bad Luck Banging. There is a sci-fi narrative that parallels Je T'aime, Je T'aime in its scenes that jump across time and space. Its focus on an LA incel vlogger and gunman is characteristic of what a late Godard film might have been. It's funny to think it is based on a 1903 novella.

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Dan Knighton

2.0いわゆる映画というものへのアンチテーゼ?・・・分からん、難し

2025年5月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

冒頭から相当変わった入り方、途中も出役が変わらず時代が行き来して、内用も似て非なるもの─でも全く別物でのないような・・・シンプルなようでかなり複雑な展開・構成で、結構ガンバって見ていたのに、ヤバい!措いて行かれそう・・・と思いきや、中途半端なところで場内の明かりが付いて映像もブラックアウト─まじか!こんなブッツと終わってしまうエグい演出なの作品なのか!?と思ったのですが、それは考えすぎで、単に劇場の警報装置の誤作動で上映が止まっただけでした。残り30、40分ぐらい・・・安全確認・動作確認の後、続きを上映とのことだったので、待つこと30、40分、結局上映中止となり無料券を頂きました。たくさん見たけど中途半端、無料券でまた見るべきかどうか・・・正直また最初からこの小難しい作品に付き合うのはきついのですけど、結構次の展開がな気になる場面でのぷっつりだったので、めっちゃ悩む~・・・という挙げ句、その日はメンタル的にパスしました。
後日、最初から観賞。一度みたところは、ぶっちゃけ寝ました。ここ!というところから頑張って目を見開き─、いやーやっぱ訳分からんけど、最終版を見逃しと作品の真の姿は掴めなかったなぁ、だから見てよかったと思うと同時に全部しっかり見切ったところで咀嚼できたかどうかは微妙なところ。カラオケ、ネット、分割・繰り返し、バグった感じ・・・まぁ何となくこれら全てはあるビジョンなんだと感じ取れるし、ちょっとしたディストピアなのかな?と思ったりもできましたけど、オチはいまいち理解できなかったし、あのエンドロール?もねぇ・・・あのせいでこちらは何だコレは栄華へのアンチテーゼなのか!?全部・・・と変な勘ぐりまで─。
なかなか絶妙な体験をできた作品でしたが、そもそも見なければこんな・・・などと負の感情で満たされてしまった次第です。

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SH

4.0🎵雪は降る あなたは来ない…… SFを身にまとった大メロドラマ(悲恋の物語)には奇妙な昭和テイストが漂う

2025年5月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

舞台はAIに管理された近未来。効率的な社会の運用の前に人間の感情は邪魔物扱いされ、重要な仕事に就くには感情を消去する必要のある時代になっていました。主人公のガブリエル(演: レア•セドゥ)は意を決して感情消去プログラムを受けます。そのプログラムの中で彼女は前世でトラウマのあったと思われるベルエポックの頃のパリとか、2014年のLAとか、その他諸々の時と場所に出現することになります。そして、そのどこでもルイという青年と出会います。

とまあこんな話なのですが、鑑賞者の数だけ解釈が生まれそうな作品です。AIとか、感情消去プログラムとかのSF仕立ての内容がありますが、実はガブリエルとルイの恋愛を描いた古典的な恋愛映画、それもロミオとジュリエットばりの悲恋の物語だと私は感じました。この恋愛を成就するためには乗り越えなければならない壁がある、ところが、その壁を乗り越えてしまったら、恋愛感情が消えて恋愛そのものが成り立たなくなるーーそんな八方塞がりのキャッチ22的な状況に陥ってしまった、永遠に結ばれることのない愛を描いた悲恋の物語。まあ、そんなのは星の数ほどある解釈のうちのひとつに過ぎなくて、この作品の本当の醍醐味というのは本篇のそこかしこに散りばめられたいろいろな仕掛けを楽しむことにあるのかなという気もしています。

監督/脚本のベルトラン•ボネロさん、いろいろとやってくれます。LAが舞台のときに英語を使うのは当然ですが、ベルエポックの頃のパリでのガブリエルとルイの会話、最初はフランス語で途中からシームレスに英語にスイッチします。で、英仏を行きつ戻りつします。どういう意味だろうと考えていたのですが、よく分かりませんでした。原作のヘンリー•ジェームズの小説を直接引用するため英語を使った? まさか、ねぇ。このフランス語、英語問題は別のところにも。クラブでガブリエルが女性3人組と会話するシーンが2回出てくるのですが、1回目が英語で2回目がフランス語。この3人組、1回目の英語のときに汚い4文字言葉連発でしたから、2回目も同様のことをフランス語でもやってるはず。英仏両言語に堪能な人には笑えるシーンなんでしょうね。

あと、画面サイズも時折り、変えてきます。たぶん、デジタルではなくフィルム撮影の箇所もあるかもしれません。横幅が狭くなったシーンではダンスフロアみたいなところで「ここは緩衝地帯だから」とかなんとか、そんなセリフが出てきました。そして、突如流れる日本語の🎵雪は降る あなたは来ない…… サルバトーレ•アダモさんの歌う哀愁メロディが否が応でもメロドラマ感を高めてくれます。

また、私だけかもしれませんが、セルロイド人形の工場のシーンあたりから、絶えず、既視感というか、なんだか懐かしい感じに襲われておりました。たぶんですけど、作り手側が1960年代、70年代あたりの映像のテイストを意識していたのではないかと。日本では昭和40年代、50年代の昭和真っ盛りの時期にあたります。近未来を舞台にしたSF仕立ての作品に漂う昭和テイスト。なかなかの見ものです。

まだ、いろいろと小ネタがあるでしょうけど(セルロイドの人形工場での鬼太郎のおやじみたいな目玉とかね)、キリがないのでこの辺で。あ、最後にレア•セドゥさん、とても素敵でした。

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Freddie3v