DOGMAN ドッグマンのレビュー・感想・評価
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同じ匂いを嗅ぎ分け、そして託す
2018年のマッテオ・ガローネ監督のイタリア映画のDOGMANはみましたけど、暗くてちょっと難しくて、私的にはイマイチでした。
今回はもちろんケイレブ・ランドリー・ジョンズお目当て。しかも、リュック・ベッソン監督作品。
冒頭は Ikkoかよ!
Ikkoさん、ごめんなさいね🙏
マフィアにみかじめ料を取られ生活に困窮するランドリー(洗濯屋)のおばさんのために、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズがいかにもな中南米系のマフィアを相手に一世一代の闘争を仕掛ける。
ランドリーつながりである。
リュック・ベッソン流の洒落か?
犬を使った鼠小僧的財産再分配を裏稼業とする犬の調教師兼ドラァグクイーン。
しかも、下半身まひで、両足に装具をつけて車いす生活。
物語はひとまず過去に遡り、警察署の嘱託医の精神科医に過去を打ち明けることから始まる。その彼女もまた、シングルマザーであり、父親のDVを経験していた。
実際の俳優の彼女もスタンダップコメディアンからのし上がった。
わたしはこういう映画が好きだ。
外国の映画動物会社は本当にすごいなぁ。
リュック・ベッソンの新作は新鮮でとてもよかった。
あと、ZZ Topがかかって嬉しかった。
旧約『ヨブ記』を思わせる、報われないダークヒーローと神(GOD)と犬(DOG)の物語。
『JOKER』みたいな話かと思ったら、
デイヴィッド・クローネンバーグの『ザ・ブルード 怒りのメタファー』と、
ディズニーの『101匹わんちゃん』混ぜたみたいな話だったな(笑)。
あるいは、『銀牙 ―流れ星 銀』とか。
アメコミヒーローでいうと、キャットウーマンの犬ヴァージョンといったところか。
にしてもこれって結局、
「GOD」を裏から見たら「DOG」だよね、
ってひとネタを膨らませただけの映画でしょう?
よくこんなの撮るよなあ(笑)。すばらしい。
宗教映画にして、お犬様の映画。
『ザ・ブルード』の「怒りの侏儒軍団」の代わりに、
犬が手足になってドッグマンのために頑張る映画。
女装家(トランスヴェスタイト&ドラァグクイーン)、虐待児童、身体障碍者(下肢麻痺)、保護犬、と徹底して「少数者/被差別者」に寄り添ったダークヒーローものでもある。
期待していたよりは、やけにチープでキッチュな映画だった。
でも、こういうリュック・ベッソン、俺は嫌いじゃない。
この人の本質は、むしろ徹底的なおバカさ加減にあると思うので。
頭の良い監督なので、デビューからしばらくは『グラン・ブルー』『レオン』『ニキータ』と、マトモな監督の振りをしてみせていたけど、演出の端々に「どこかおかしい」気配はなんとなく漂わせていた。
それが成功を収め、全権的な企画決定権を手に入れたとたん、いきなり『フィフス・エレメント』でその本性をあらわにしてみせた。
なんだこのおバカ映画?? 封切りで観に行った僕は最初軽く怒りまで覚えていたが、そのうち馬鹿笑いしながらリュック・ベッソンのファンになってしまっていた。
とりとめのないガキの夢想をそのまま映画にしたような変態映画。
なるほど、この人は本当はこういう心底どうでもいい映画を撮りたくて撮りたくて仕方がないのに、ぐっと我慢して今までマトモなふりを偽装してたんだな。
その心意気や良し。そうさ、監督なんてやりたいようにやればいい。
その後のタランティーノばりのB級活劇愛好路線は、みなさんもご存じの通り。
しかも、脚本・製作も含めて只事じゃない量産体制を敷いて娯楽映画界に貢献している。
ついでに、次々と娘みたいな齢の奥さんをすげかえていったり(ヒロスエ含む! あれでヒロスエが壊れたのをみんな忘れてるようだが俺は忘れていない)、セクハラで訴えられまくったりと、私生活がクッソろくでもなさそうなのもひっくるめて、俺はリュック・ベッソンが嫌いじゃない(笑)。
今回の『ドッグマン』は、あからさまに監督が「撮りたい」映画を「好きに」作った匂いが充満している。なんでドラァグクイーンなのか。なんで犬が自在に操れるのか。なぜに「死刑執行人」との対決シーンがあれだけチープなコント仕立てなのか(ほとんど『ホーム・アローン』だよね、あれw)。
いろいろとバランスの悪いところも含めて、リュック・ベッソンの男気と稚気と個性とやる気があふれかえっている。
俺は、こういう映画が嫌いじゃない。
― ― ―
本作の本質は、「宗教映画」なのだと思う。
幼少時から、ただひたすら神に試練を与え続けられる男。
そんななか、必死で生き続けなければならない辛い定め。
神を篤く信仰しているのに、神に振り向いてもらえない人生において、宗教は何のためにあるのか。神は自分に何を期待しているのか。
ここで扱われているのは、旧約聖書における「ヨブ記」に相当する重大なテーマだ。
いわゆる「神の試練」というやつである。
神(もしくは神と賭けをしたサタン)に10人の子どもの命を奪われ、すべての財産を奪われ、全身を覆う皮膚病に苛まれ、路上生活者にまで身を落とした義人ヨブ。どれだけマジメに生きても奪われるばかりの人生で、なお信仰は生きる拠り所たりうるのか? いかに正しく生きても試練ばかりを与えてくる神は、はたして信用たり得る存在なのか?
リュック・ベッソンが『ドッグマン』の全編を通じて必死で思索しているのは、まさに「呼びかけに応えない神」の意図についてだ。
その意味で、彼が本作に託したテーマはベルイマンやパゾリーニにも近いものだといえる。
教会前に落ちた十字架の影のなかでダグラスが横死するシーンは、まさに象徴的だ。
「I’m standing for you!」
これは、自分の脚で立っているという状況を表わすと同時に、「私はあなた(神)のしもべです」というイデオムにもなっている。
彼は、神の代わりに遣わされた守護天使たちである犬(GODの逆位)に見守られながら、神の恩寵を賜るかのように天へと召されていく。
教会、犬、野垂れ死に。あれ? なんかデジャヴがあるなと思ったら、『フランダースの犬』だったか。「もうこれからは寒いことも、哀しいことも、お腹がすくこともなく……」ってやつですね。……(涙)。
まあ、犬たちは別段ダグラスと一緒に天に召されるわけではなく、ちゃんと新たな「宿主」候補をすでに嗅ぎつけているんですけどね。……(笑)。
(書いた後で人の感想で「死んでいない」説を見て、ああそういう可能性もあるのかとw まあ続編の出だしですっくと立ちあがっても別におかしくはないんだな……盲点でした)
― ― ―
俺の実家は、犬を飼う家だった。
小学生のときは、柴犬、シェパード。
中学のときからは、ラブラドル・レトリーヴァー。
社会人になってからは、プードルとエアデール・テリア。
プードルには両親が子供も産ませて、最大で9頭が家のなかで暮らしていた。
なので、俺にはダグラスの言っていることがよくわかる。
よくわかるというか、当たり前のこと過ぎて、聞き流してしまうくらいだ。
犬は人間より信用できる。
犬は強くて勇敢だけどおごらない。
犬には人間の美徳がすべて備わっている。
犬を愛するほうが人間を愛するより容易い。
そりゃそうだ。俺もそう思う。犬は無条件に素晴らしい。
だが、ダグラスはその犬を使って犯罪をおかす。人を殺める。
犬に悪いことや殺人・食人までさせて、はたして愛犬家と言えるのか。
きっと犬好きのなかには、この映画にそんな反感を覚える人もいると思う。
ただ、これだけはいえる。
ダグラスにとって、犬はもはやペットでも友達でも仲間でもない。
犬は彼の一部であり、彼の生存本能の発露であり、彼と連動した「環境」そのものなのだ。
彼が生きるためにあがくとき、無条件に犬は彼のために動く。
彼が念じただけで勝手に最善の状況を組み上げていく。
それはすでにリアリティを超えたある種のオカルトであり、
宗教的にいえば、いわゆる奇蹟(ミラクル)というやつだ。
神はダグラスから、すべてを奪った。
代わりに神はダグラスに、犬を与えたのだ。
― ― ―
犬を手足に使って戦うといって、パッと思いつくのは、
●『刑事コロンボ』の第44話「攻撃命令」(2匹のドーベルマンに「殺しの合言葉」を覚えさせて、それを口にさせることで妻の愛人を遠隔で殺そうとする話)
●テレビドラマ『爆走!ドーベルマン刑事』(原作の要素が人名以外何一つ残っていない珍品中の珍品。犬みたいな刑事の話だったのが、なぜか警察犬を使役する黒バイ隊の話に!)
●テレビドラマ『標的』第7話「殺意の調教」(多岐川恭の『的の男』を原作とする珍品)
●テレビドラマ『闇を斬れ』(天地茂主演の時代劇で、隠密犬の甲斐犬、風林と火山が大活躍する)あたりか。
あとは、『ジョン・ウィック』とか『少年ジェット』とか『猛き箱舟』の野呂とか『キャシャーン』とか『サスペリア』のダニエルとか。
犬小屋で人が飼われている設定だと、ジャック・ケッチャム原作の『ザ・ウーマン』とか。
なんにせよ、ダグラスの能力はちょっと単なる「犬を飼いならして」いる域をはるかに超えており、テレパシーの範疇に属する能力を発揮している。
最近のラノベで死ぬほど出てくるファンタジー職業「テイマー」(モンスターを手なずけて使役する職業)に近い存在といえばよいのか。
― ― ―
この映画で意外に良く出来てるな、と思うのは、主人公であるダグラスを「そこまで追い詰めきらない」ように、絶妙のさじ加減で「ゆるさ」が調整されているところだ。
たとえば、ダグラスは過酷な少年時代を生きるが、お腹に子供を抱えたお母さんはなんとか家を脱出することに成功する(『ザリガニの鳴くところ』を彷彿させる展開だが、こちらの子どもはしっかり汚く臭そうに描いているので、10倍『ドッグマン』のほうがまともな映画だと思う)。
保護施設でも、ダグラスは意外なほどに幸せな日々を過ごしている。
演劇少女との初恋は悲しい結末を迎えるが(『オペラ座の怪人』みたい)、少女は女優としてそれなりに成功して子供を2人作って引退する。そのあたりも変にドロドロさせたり、ダグラスに新たな罪を負わせたりしない。
ドッグシェルターを追い出されるのは災難だが、彼らは独力で自分たちの城を手に入れ、泥棒稼業ではあっても、自給自足の生活をちゃんと成立させている。
少なくともゲイバーでの毎週金曜日のショーは、ダグラスの表現者としての承認欲求を大いに充たしたことだろう。店のドラァグクイーンたちはみんな優しく親切だ。ここでも製作者はダグラスに「癒し」を敢えて与えている。
その後、彼らは何度か人間に手をかけることになるが、経緯を見るといずれも正当防衛に近いもので、なるべくダグラスに対して観客のヘイトを溜めないように気が配られている。
こうして、観客は「適度にダグラスに同情する」ように仕向けられ、そこまでヒリヒリしない微温的な空気のなかで、ダグラスの「活躍ぶり」をそこそこ楽しめるようにもてなされる。物語が拘置所での「昔語り」としてフラッシュバックで語られるのも、緊迫感を高め過ぎない穏やかさを生んでいる要因だといえる。
リュック・ベッソンは『ドッグマン』を、極限まで悲惨な物語にはしたくなかった。
彼はおそらくなら「寓話」を撮りたかったのだ。
あるいは「御伽噺」を。
ダークでキッチュではあっても、敢えてリアリティは欲しなかったし、ダグラスを気分が悪くなるほどに追い込みたくはなかった。
魔法の使える足萎えの青年と使い魔たちの物語は、メルヘンでなければならなかった。
その意味では、監督の意図は多少雑にではあっても、ちゃんと成功していると俺は思う。
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音楽に関しては、エディット・ピアフの「群衆」とマレーネ・ディートリッヒの「リリー・マルレーン」が、ドラァグクイーンの演目として印象的に使われていた。
どちらも名曲中の名曲だし、自分にとっての愛聴歌でもあるんだが、これ明らかに口パクで元曲流してパフォーマンスしてるだけにしか聴こえないんだけど、それってどうなんだろう?? 口パクよりはちゃんと本人が歌ったほうがよほど良かった気がするけど。終盤で襲われるシーンでの、マリリン・モンローの「お熱いのがお好き」(モンローつながり)みたいに。
いや、「すげえ声真似」してるんだっていうのなら、それはそれでいいんだけど……。
ちなみに「リリー・マルレーン」は先月映画館で観たクストリッツァの『アンダーグラウンド』で主題歌扱いだった。あと、犬に餌をやるシーンでシャルル・トレネの「残されし恋には」が流れていた気がするが、ついこのあいだ映画館で観たジャン・ユスターシュの『ぼくの小さな恋人たち』のOPがトレネの「うましフランス」だった。
こういうのって、不思議に被るよね。
あと、保険屋と金の話をするときに、ダグラスがいきなり「マニ、マニ」と歌い出して、「マジ? ビリー・アイドル??」と一瞬思ったが、よく考えたらABBAだった(笑)。
あと、どうでもいいことだけど、『マエストロ』『枯れ葉』『瞳をとじて』『落下の解剖学』と、最近観た新作ではみんな主人公がバンバンに喫煙してるなあ。これも時代の揺り戻しってやつか。
最後に、パンフ掲載の風間賢二先生の解説は必読!! これこそが映画解説っていう腑に落ちまくりの分析になっていて、やっぱり他の論客とは格がぜんぜん違うなと改めて感心しきりでした。
GOD AND DOG
犬がすごい
この不穏な軽くザワッとする感じ。「レオン」を思わせるシーンもあって、リュック・ベッソンだなーと思いながら見ました。
犬と生きてきた男の話で、逮捕された彼が精神科医から事情聴取を受けながら、これまでの半生を振り返ります。
猟奇的な内容かと思っていたら、そういう方面ではなく、切なかったです。
(「羊たちの沈黙」の犯人みたいな感じを想像してました ※Dr.レクターではない)「52ヘルツのクジラたち」を見た後で、ここでも信じらんない親兄弟が登場。
ひどい仕打ちを受けても、主人公は神を口にする。彼はラストで救われたのだろうか。
パンフにもGodとdogについて翻訳家の方が書かれていますが、日本人にはわかりにくいなと思いました。
ワンコたちがおりこうさんだし、かわいい。犯罪犬にしないでーと思いながら見ていましたが、暗闇のお目々キラーンは怖いですー。
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズを知らなかったのですが、いい俳優さんですね。今後も一癖ある役など楽しみで、そういう意味ではダークヒーローではなく自分にとってのニューヒーローです。あの唇の感じと表情、誰かに似ている気がするのだが思い出せない。もっとタラコだけどA・ジョリー?
もう一度見たいけど、好きな映画かというと違うな…という感じで星3.5。
*****
字幕翻訳家さんも知らない方が増えました。今後も沢山の映画で、新しい方々のご活躍に期待。
衝撃的な作品でした!彼は神になった?
本作品は、ダークヒーローのイメージのまま、緊張感あふれるストーリー展開に運ばれて、あっという間に見終わってしまいました。主人公は、闘犬業を営む父親の家に生まれましたが、人間や動物に対する愛情のない父親に虐待を受け育ちました。「犬が好き」と言っただけで、犬小屋に長い年月の間監禁されてしまう人生は、一体なんなのでしょうか。そして父親の撃った弾丸で下半身付随になるのです。それでも、彼は施設に移り、勉強をし、シェイクスピアを教えてくれた若い女教師サルマに恋をします。やがて恋に敗れてしまいますが、犬を保護する仕事をして生計を立てたり、キャバレーで歌姫として活躍するのです。そして、犬たちを養うために盗賊のようなことをしたり、最後には町のゴロツキとの真っ向勝負となり勝利するのです(バイオレンスアクション)。最後のシーンでは、宗教は果たして人を救うのか、ということを考えさせられ、衝撃が走りました。もちろん、彼は警察に捕まり贖罪の人生を歩まなくてはなりません。とはいえ犯罪者である彼が、最後には宗教的生き方に決別することを選んだ時の笑みは?心に深く残りました。結局キリスト教は、彼を本質的に救うことができなかったのかもしれません。キリスト教よりも、犬の忠実な愛の方が救いであったということを、暗に示している衝撃的作品なのでしょうか。この作品をどう捉えるかは皆さん違うと思います。ただ、どんな捉え方も正解だと言えるでしょう。そして、宇宙の中で幸不幸を考える場合、犬を愛した彼の人生は幸せだったかどうかは、彼が決めることなのでしょう。
追記 犬たちの演技が宝物でした。天才的な行動に涙が出ました。
ベッソン久々の大当たり。
最近はアクションと女性の脚ばっかり撮ってた印象のベッソンであるが、久々にぶちかましてくれた。
タイトルがパッとしなくて躊躇してたが見てよかった。
動物苦手、嫌いな人には荒唐無稽な話に見えるかも知れない、しかし長く動物飼っている人にはわかるはずだがウチのバカ猫でさえ私と意志が通じ合う瞬間がまれにあるのである。
女装癖、ステージ、車椅子、シェクスピア、犬達、、なかなか一緒にならない要素が上手く料理されていて新鮮である。
主演のケイレブランドリーは「ニトラム」が凄く良くて注目していた。今作もかなり屈折したヒーロー役だが楽勝で演じている。この先大きな仕事に恵まれブレイクするといいなぁ。
カッコ良い終わり方だったが、シリーズ化可能な逃げも打ってある。どうなるかな?ちょっと期待しちゃうな、興行収入次第だけど。
もっとバイオレンスかと思った。
さほどのバイオレンスさはなく意外に普通な人とわんちゃんたちのホームアローン的な展開だった。それでもわんちゃん同盟の成り立ちはオリジナルで面白いし独特な世界観。見て損なしな仕上がりだった。
ギャング間抜けすぎ
痛み
DOG=GOD
これだよこれ!!!マジでこういうのが見たかった!!!「DUNE Part2」で落胆して冷えきっていた心に、ぶっぢ刺さっちゃったよ。。。何も考えずに楽しめる作品でありながら、しっかりとカタルシスもある。見事だった。
いやぁ、映画って面白いなぁ。大金かけるとか豪華なキャスティングにするだとか、そういう要素が一切無くとも、アイデア1本握りしめていれば、観客の一生心に残るものが作れるんだからな〜。「JOKER」にインスパイアされたような作風ではあるけど、何もかもが新鮮で、主人公・ダグラスの悲劇のダークヒーローとしての描きもたまらず、冒頭から引っ張られているかのようにグイグイ引き込まれてしまった。あまりに好きなんだけど、この映画。
レコードの似合う舞台ミュージックと、リュック・ベッソンらしいぶちかましアクション。そして、クルエラも驚きの調教力を持つ主人公の、悲しくも痛快な犯罪ドラマ。全てがパズルのように超絶気持ちよくハマっている。
ケレイブがオスカーレベルの神演技。彼にもこの映画にも、完全に映画の神が味方していた。犬を使った全てのシーンもあまりに最高すぎる。見つけて、走って、かぶりつく!犬は、神から人間に与えられた贈り物。その言い伝えを実体化したのが、この作品。マジもんだよ。
無駄がなく、完璧に磨き上げられたら脚本のおかげで、今年ダントツで終わるのが一瞬に感じた。何回も見たくなる映画って、マジでこういうのなんだよ。アイラブユー。
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの見事な歌声に魅了される!
久し振りのリュック・ベッソン監督作品。
彼が描くフランスアクションなんだな。
“ドッグマン”と呼ばれる女装男の愛と暴力に満ちた切なくも壮絶な人生に生きた半生を描く~
今日は「DOGMAN ドッグマン」の鑑賞です。
この映画、予想を裏切る高評価でしたわ。
前半はダグラス(主人公)が家族からの暴力、虐待に耐え 沢山の犬達と一緒に小屋で隔離生活。普通なら気がオカシクなって死んでそうな環境を生き抜いて、警察に無事に保護される。何とも酷い話。父の放った銃が脊椎を損傷し 歩行や立つことが出来ない車椅子の身体障害者になってしまうのだ。
施設で出会った女性に、シェ-クスピアの戯曲や歌、演技をそして女性のメイクもばっちり教わるのである。元々女装趣味ではなく、生きてゆく為にお金を稼ぐ手段としてそれを遣っているのである。そして犬達との生活を守るために 住む環境も選び身体障害者の一人として自立して生きている。
犬を指示しての大富豪から盗みとかは確かに有ったけども、犬達以外に彼に手を貸す者はいない。完全にダークヒ-ロ-化を作り上げている。
一番驚いたのは、初めてのステ-ジで歌を披露する場面でしょうか。
予想外に素晴らしい歌のステ-ジで 魅了されてしまいます。
そこが素晴らしい所でしょう。
そして 終盤の地元ギャング等の襲撃に対峙し戦う犬と彼。
凄まじい打ち合い、彼のショットガンが炸裂!
この辺りは さすがベッソン監督の作品領域を感じますね。
足が不自由な男の 孤独さ、そして愛。そして彼を慕う犬達。
総てを告白した彼に 神(GOD ⇒ひっくり返ってDOG)の
許しは訪れるのであろうか。
必死に教会屋根上の十字架影を自分の足で目指し歩こうとする彼。
そこに 今までも、これからも自由に生きて行こうとする
彼の本心が伺える。
ご興味ある方は
劇場へどうぞ!
ドッグマンになるまでの切ない物語
リュックベッソンの最高傑作だと思う。
このところ制作総指揮とか名ばかりでパッとしなかったリュックベッソン。
彼の映画をある程度観てる方なら彼の癖や色づかい、カメラワークやストーリー構成をある程度理解してるから、今回の作品はその彼らしさが円熟みがかかり最近の映画にない心地良さを感じた。
話の軸は宗教的でDOGとGOD。
それに守られて生きた男の半生。
犬の存在は確かにそうだ、唯一の欠点は人間を信じてしまうこと。
登場人物達のベタな演出も含め背景を説明しなくても伝わるのはベッソンの良さ。ストーリーもテンポ良く、トントンと漫画をペラペラとめくる様に進んでいく。
初めて彼の映画を観る人には「なわけない」感が鼻に付くかもしれないが、古参からするとそれさえ彼の世界観で帰ってきたなぁと思ってしまった。
話のレイヤーや古典的な仕掛けは教科書ともいえる。
あと主人公の演技が巧い。手の震えとか目の使い方。しびれました。
変なオシャレさや見栄も抜けて本当に伝えたいことを正面からエンタメしてくれる良作です。
家族で観ても良し、恋人や友達と見ても良し。
その後の感想も意見も別れず盛り上がれるでしょう。
なんだかんだリュックベッソンって偉大なアーティストだな。
好みは分かれるでしょうが、私は大好きなタイプ
おっ、リュック・ベッソン復活か!のダーク・ファンタジー秀作の誕生です。ズバリ、ホアキン・フェニックスの「ジョーカー」と表裏一体の様相です。ホアキンがそうであったように、本作も主演のケイレブ・ランドリー・ジョーンズの圧巻演技によって支えられている。米国公開が日本より遅く今年の3月下旬だそうで、2023年作品に入らず年明けからの映画賞がらみで取り上げられることはなく来年までお預けですが、そう書いて憚れない圧倒的な魅力に満ちている。これをオリジナルで創作したベッソンが、だから凄いのです。
一世を風靡したと言って間違いないでしょうフランスの俊英監督リュック・ベッソン。「サブウェイ」(1984)、「グラン・ブルー」(1988)で颯爽と登場したフレンチ色男。「ニキータ」(1990)、「レオン」(1994)、「フィフス・エレメント」(1997)等で早くも頂点に達し、製作会社ヨーロッパ・コープまで設立し、フレンチ・ハリウッド帝国の勢いでした。制作が多く直接の監督作も少な目になりつつありましたが、「LUCY/ルーシー」(2014)そして「ANNA/アナ」(2019)と相変わらずの女性賛歌作品に続いての本作です。ジャン=ジャック・ベネックスそしてレオス・カラックスと同時期に登場したものの、作家性は抑えめのエンタテイメント路線まっしぐら、その多くが英語作品であるように世界マーケットを徹底的に意識している優秀な商売人でもありますね。
上に記した諸作がそうであるように、彼にリアリズムは興味なく、フィクションの中にこそ真実を託すタイプでしょう。だから、そんな多くの犬がそこまでやるの? の現実より、颯爽と走り回り主人公ダグラスのプライベート軍団のように振る舞う映像美を描き、ダグラスと犬との精神性に希望を託す。五歳児を犬小屋に四年間も閉じ込めたクソ父親がいた、なんて現実のニュースを基に創り上げたとかで、狂信者の被害者に寄り添うベッソンの温かさが、私は好きですね。ヒスパニック系の悪役ギャング達が絵にかいたようなステレオタイプなのもシンプルな対立構図で分かり易い。
この壮絶ストーリーを引き出すのが、警察側の女性精神科医に課した設定。悲惨な過去をダグラスに語らせ、守秘義務を超えた殺人告白までも導き出す。聞き上手な手法で過去完了として描くことにより、悲惨話にワンクッションが挟まり観客に受け入れやすい作劇が功を奏している。もし、時系列で少年時代から描いてたら、壮絶過ぎで耐え難い。今は肌艶もよく優雅にタバコを吸いながらの現在の姿を見せているから、安堵出来るわけ。ただ、彼女の側の逼迫状況とのリンクまでは旨く行ってません、残念ですが。
IN THE NAME OF GOD と示されるとおり、キリスト教的救いをファンタジーに染み込ませ、ラストはキリストに似せるまでをも描く。こんな狂信者が信仰熱いともてはやされ、トランプを応援するのでしょうね。GODの垂れ幕を裏から見ればDOGとは、よくぞ見つけた秀逸描写です。施設に入った少年に夢と希望を与える年上女性とのエピソードは胸を締め付け、本作の白眉のシークエンスとなっている。
もうひとつ「ジョーカー」がそうであったように、本作も流される歌曲が見事な効果を上げ、琴線に染みてくるのです。母親の好きだったレコードから、数多の求職活動に存在すら否定されかねないどん底で出会ったドラッグ・クイーン達の助けを借りての、シャンソンの数々が素晴らしい。ピアフからディートリッヒの哀愁が彼のシチュエーションと重なる名場面に成し得た。ただ、どう聞いてもオリジナルの声のようで、主演のケイレブの声と思えないのが惜しい、間違ってたら御免なさい。
何故見え透いた強盗を犬にやらせるとか、殺人にまで手を出さなくとも、と思われるかも知れませんが、それではベッソン流の画にならないでしょ。理屈で動くタイプじゃないのですから。彼はまだ64歳、今後も期待しましょう。
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの演技がいい。 犬たちも名演。
ダークヒーローもののような宣伝の仕方ですが、そんなフォーマットにははまらない。
悲惨な少年期、暴力親父と兄の最低な扱いに胸が痛む。
人に虐げられながらも、犬たちの純粋で忠実な愛に助けられて生き延びてきた。
確かに、リュック・ベッソン版、犬版の「ジョーカー」のようではある。
主演のケイレブ・ランドリー・ジョーンズの演技がいい。
犬たちも名演。
(ごめんなさい。以下、大事なことを思い出して追記します。☆0.5追加します。3.5→4.0)
主人公が歌うピアフの『水に流して』に感動。
キャバレーでは同じくピアフの「群衆」が披露されて驚き、
終盤の「水に流して」が特に素晴らしかった!
クリストファー・ノーランの映画「インセプション」でもたびたび流れる名曲です。
大竹しのぶ主演の舞台「ピアフ」(最前列で観た!)でも、聴いて大感動でした。
他にも歌の使い方が秀逸です。
但し、映画の音楽を担当したエリック・セラの曲は、他の歌のインパクトが強烈なこともあって、全く印象に残ってません。
「007ゴールデンアイ」も担当されたのですが、そちらも全く記憶に残りませんでした。
リュックベッソン監督
ワンちゃんたちの名演!何か賞をあげて!
ダークな予告、リュック・ベッソン監督作ということに惹かれて、公開2日目に鑑賞してきました。この日の4本目の鑑賞で、しかも最終上映回だったので寝落ちを心配しましたが、全くの杞憂で最後まで目が離せませんでした。
ストーリーは、ある夜、女装して運転するトラックの荷台に多くの犬を載せていた男・ダグラスが、検問で止められて身柄を拘束され、彼から話を聞き出すために呼ばれた精神科医エヴリンに対し、親から虐待を受け、犬に育てられたという壮絶な過去を話し始めるというもの。
本作はその大半が、ダグラスが語る自身の半生として描かれます。そして、その壮絶な物語に心を握りつぶされそうになります。無慈悲な父から虐待を受け、父の顔色をうかがう兄にひどい仕打ちをされ、頼みの母は守ってくれないどころか、自分を置き去りにしていきます。愛を注いでくれるのは周囲の犬たちだけ。この悲惨な体験が、後のドッグマンの原点になっていきます。
こんな過去をもちながらもダグラスが道をそれずに成長できたのは、神への信仰とサルマの存在のおかげでしょう。しかし、神は自由の代わりに足を奪い、それはその後ずっと重くのしかかり、彼を苦しめ続けます。闇の中から自分を救い出し、心の拠り所であったサルマに対しても、結局その思いは届きません。その後、誠実に務めた犬の保護施設も閉鎖されるに至り、自身に残されたものは犬たちだけだと悟ったのでしょう。行き場を失ったダグラスの思いは、愛する犬たちと虚像の中に見出した自分へと注がれます。
街のゴロツキを懲らしめ、富裕層の富を盗むダグラスの姿に、神の加護に疑問を呈し、自身の理屈と信念で事態を乗り切ろうとする強さを感じます。虚像の中に真実を見たダグラスは、「GOD」を鏡に映した「DOG」の中に本当の“神”を見出そうとしたのかもしれません。ラストシーンで、自身の足で歩き、十字架の影に倒れるダグラス。その姿は、神にはもうすがらないという決別と、犬とともに自身の力で生きるという決意の表れでしょうか。それとも、エヴリンにすべてを語ることで忌まわしい過去を断ち切った、新たなダグラスの誕生でしょうか。観る者によってさまざまな解釈ができそうな印象的なシーンです。
主演はケイレブ・ランドリー・ジョーンズで、彼の怪演が本作の大きな見どころの一つとなっています。脇を固めるのは、ジョージョー・T・ギッブス、クリストファー・デナム、グレース・パルマら。そしてなんといっても、数々の名演を披露したワンちゃんたち。これがCGじゃなくて実写なら、何か賞をあげてほしいです。
88点 なぜドッグマンと言われたのか?
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