「歪だけど大好き! エンタメに救われた人間なら共感できるはず。」DOGMAN ドッグマン pepperleeさんの映画レビュー(感想・評価)
歪だけど大好き! エンタメに救われた人間なら共感できるはず。
なに? ストーリーにとりとめがないだって?
あなたは整合性の取れている「だけ」の映画を見たい人でしょうか?
自分は、なにか光るものを見たい。心動かされるものを見たい人間です。
主演のケイレブ・ランドリー・ジョーンズさん、詳しくは知らないけど、この主人公の存在感が、もうこの映画を支配している…!
登場シーン、ドラァグクイーンの姿で現れ、血まみれになりながら、タバコの火を求める。
檻の中で、細いタバコを吸いながら、自分の過去を語る。その姿が、ちょっと知的で、少し現実からズレている、まるで夢みたいな…そんな錯覚を起こさせるシーンから始まる。
この映画に一気に惚れた。
主人公は、過激すぎるDVで、足も動かなくなり、養護施設に送られた主人公。10年以上の片思いに破れ、社会から見放され…、そのたびに絶望し、声にならない叫び声を上げる。それも地下室で。
その時に、彼に寄り添うのが「犬たち」だ。絶望の悲しみ、殺意のこもった怒り、それに犬たちは遠吠えで答え、彼の心に呼応する。彼は犬で、犬が彼なのだ。
絶望の中、彼が見つけたのがドラァグクイーンが毎夜きらびやかなショーを見せるクラブ。
恋に敗れたとき、社会から追い出されたとき、彼を救うのはショーに出ること…それは変身し、物語に入り込むことだ。
これって、映画を見ている私達と同じじゃない?
悲しいとき、ふてくされたとき、迷ったとき、人を救うのは夢や物語だ。そういった意味で、私はこの主人公に入れ込んでしまった。
ちなみに(というと変だけど)、この映画の犬はとてもかわいいです。怖いシーン、人を襲うシーンもあるのだけど、全部かわいいです。
物語のちょっと重い雰囲気を、いっぺんに吹き飛ばす犬の演技……! なので、犬好きの人にもぜひぜひおすすめの1作なのです!