「ワンちゃんたちの名演!何か賞をあげて!」DOGMAN ドッグマン おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
ワンちゃんたちの名演!何か賞をあげて!
ダークな予告、リュック・ベッソン監督作ということに惹かれて、公開2日目に鑑賞してきました。この日の4本目の鑑賞で、しかも最終上映回だったので寝落ちを心配しましたが、全くの杞憂で最後まで目が離せませんでした。
ストーリーは、ある夜、女装して運転するトラックの荷台に多くの犬を載せていた男・ダグラスが、検問で止められて身柄を拘束され、彼から話を聞き出すために呼ばれた精神科医エヴリンに対し、親から虐待を受け、犬に育てられたという壮絶な過去を話し始めるというもの。
本作はその大半が、ダグラスが語る自身の半生として描かれます。そして、その壮絶な物語に心を握りつぶされそうになります。無慈悲な父から虐待を受け、父の顔色をうかがう兄にひどい仕打ちをされ、頼みの母は守ってくれないどころか、自分を置き去りにしていきます。愛を注いでくれるのは周囲の犬たちだけ。この悲惨な体験が、後のドッグマンの原点になっていきます。
こんな過去をもちながらもダグラスが道をそれずに成長できたのは、神への信仰とサルマの存在のおかげでしょう。しかし、神は自由の代わりに足を奪い、それはその後ずっと重くのしかかり、彼を苦しめ続けます。闇の中から自分を救い出し、心の拠り所であったサルマに対しても、結局その思いは届きません。その後、誠実に務めた犬の保護施設も閉鎖されるに至り、自身に残されたものは犬たちだけだと悟ったのでしょう。行き場を失ったダグラスの思いは、愛する犬たちと虚像の中に見出した自分へと注がれます。
街のゴロツキを懲らしめ、富裕層の富を盗むダグラスの姿に、神の加護に疑問を呈し、自身の理屈と信念で事態を乗り切ろうとする強さを感じます。虚像の中に真実を見たダグラスは、「GOD」を鏡に映した「DOG」の中に本当の“神”を見出そうとしたのかもしれません。ラストシーンで、自身の足で歩き、十字架の影に倒れるダグラス。その姿は、神にはもうすがらないという決別と、犬とともに自身の力で生きるという決意の表れでしょうか。それとも、エヴリンにすべてを語ることで忌まわしい過去を断ち切った、新たなダグラスの誕生でしょうか。観る者によってさまざまな解釈ができそうな印象的なシーンです。
主演はケイレブ・ランドリー・ジョーンズで、彼の怪演が本作の大きな見どころの一つとなっています。脇を固めるのは、ジョージョー・T・ギッブス、クリストファー・デナム、グレース・パルマら。そしてなんといっても、数々の名演を披露したワンちゃんたち。これがCGじゃなくて実写なら、何か賞をあげてほしいです。
こんにちは。
そうですね。サルマの存在が彼の世界を広げ、ステージで脚光をあび拍手を受けたんですもんね。
彼女への募る想いはあの流れとなり辛かったことでしょう。
犬たちには賞をあげたいくらい!共感です。
共感ありがとうございます。
自分はラストは「キリスト教徒らしく」息絶えたんだと思いました。これで終わりで勿論良いですが、残されたイヌたちに赤子から育てられたイヌ少女みたいなのもちょっと観たい気がします。