劇場公開日 2024年3月29日

「集団レイプ犯の見張りを哀れんでも」オッペンハイマー momoさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0集団レイプ犯の見張りを哀れんでも

2024年4月14日
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原爆の父という呼び名はは誇るべきことなのか。
黒澤明の羅生門を見習って欲しい。
どの視点から見るかによって多面的に物事を捉えようとしている。
戦争映画こそ多面的に捉えなねばならない最たるものだ。
だからこそ日本は集団レイプされた被爆国なのだから、集団レイプの見張りをしてた舎弟のオッペンハイマーがどれだけ悔いたとて、その残虐さや辛さを描いてくれないとフェアではないのだ。
短いセリフの縞模様の着物を着ていた人が縞模様に火傷したとか、後から死亡者が出たとか欧米人が聞き逃すレベルのささやかな表現ではダメだ。
昭和生まれの日本人は戦争を知らない子供たちであっても親や祖父母から多少は戦争の話を聞いてるし、修学旅行で原爆ドームに行ってその目を覆いたくなる辛い状況を体感しているのだ。
その辺りを世界に見せて欲しかった。
そこを描かないでオッペンハイマーの泣き虫姿を描いても何も同情する気にならない。
そして、音楽が全て陰鬱で暗い。
戦場のメリークリスマスのような美しい音楽と 北野武のメリークリスマスミスターローレンス的なユーモアのある和らぎもない。
火垂るの墓やこの世界の片隅にやゴジラ-1.0を思い浮かべながら2箇所、情けなくなって涙ぐんで観るしかなかった。
戦争に突き進む男たちという生き物は本当に愚かだ。
人間は今もたいして進歩していない所がつくづく情けない。
原爆をどこに落とすか、候補地の中で京都を外す理由が、新婚旅行で行って文化遺産があるから外すといったシーンは失笑ものだ。
この映画をIMAXで観たいという人の気が知れない。
そんな映画じゃないはずだ。本質を見てほしい。
もちろん賞賛された挙句、最後にハシゴを外されたオッペンハイマーはやるせないとは思うけど、悲哀はそこじゃない。被爆した国のこともビジュアルで見せなければ本当の悲哀では無い。
劇場内は若い人が大半で昭和世代少し、戦前戦後生まれの80~75くらいの高齢者はいなかった。
時代劇映画を観に行くとその世代が沢山いるのに。
でもその世代には観せられない映画とも思いながら、じゃあドイツ人はこの映画をどう観るよ?とも思いながら映画館を出ました。

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momo