劇場公開日 2024年3月29日

「IMAXで観る金があれば他の映画をもう1本観る」オッペンハイマー たあちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5IMAXで観る金があれば他の映画をもう1本観る

2024年4月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

幸せ

きっかり3時間またしてもクリストファー・ノーランの時系列交錯難解ものという前評判だったので覚悟していたのだが全くの肩透かしをくらった。時間の行きつ戻りつは映画的手法の常識範囲を逸脱しておらず聴聞会部分を白黒できっちり区別していて寧ろ親切で「ダンケルク」や「TENET」に比べれば100倍分かりやすい。さすがに議会と小部屋での吊し上げの前後関係は分かりづらかったが…私は赤狩りが時間的に後だと思い込んでいたしまさか5年も隔たっていて…研究者生命を絶たれたところで終わりだと映画的に分かりやすいのだがルイス・ストローズ(ロバート・ダウニー・Jr)の物語がそのあとにくるとは。SFでもアクションでもなく大虐殺兵器を生み出した男の生涯というだけで長時間引っ張るのだが、米ではトリニティ実験が成功した7月に公開して大ヒットしており決して原爆礼賛映画ではないのだから日本でもすぐに公開して何の問題もなかったのだと思うのだが東宝東和は何をびびったのか逃げて、ビターズ・エンドがアカデミー賞まで待ったのは被爆関係者たちの批判を恐れてというより寧ろ内容の地味さによる不入りを心配したのではないだろうか?作品賞・監督賞含め7部門独占したらさすがにね。対話劇が8割を占めるのだが驚くべきカットつなぎが切れ味鋭くテンポ良くて飽きさせず普通に面白いのだがここまで評価される作品では無いしまして2度3度観れば良く分かるIMAXで観なきゃダメなんて評論家は配給会社の回し者としか思えない。クライマックスのトリニティ実験での描写は映像で1回、爆音で1回という凄まじさを見事に表現しきっていてさすが。でも鑑賞後に広島で使われたのが他チームが作った原爆(リトルボーイ型)だと知って複雑な気持ちが膨らむ今日この頃。「原爆の父」というレッテルを貼ることで核兵器開発責任をこの気弱な理論物理学者一人に押し付けていることは明白でそこを曖昧にして逃げたノーランもちょっとずるい。

たあちゃん