「ストーリーだけを追える日本人もいるのか?」オッペンハイマー ミーノさんの映画レビュー(感想・評価)
ストーリーだけを追える日本人もいるのか?
時代に翻弄された天才科学者、を描くためのエピソードの1つが広島、長崎への原爆投下であって、原水爆の恐ろしさそのものを描いた映画ではないってこと。
途中までは確かに有名人気俳優ではあるロバート・ダウニー・Jrが、何故この役で最優秀助演男優賞だったのか?と思っていたが、終盤で多少理解できた。
3時間あるが、3分の1が実験な苦手だった学生時代からロスアラモスまで、中盤が原爆開発と実験、日本への投下〜世間の熱狂、後半3分の1が戦後の彼への事情聴取と分けられるかもしれない。事情聴取の成り行きがややこしくて分かりにくい。
7月の実験が成功し、ロスアラモスのメンバー全員の歓喜と祝福を見ていて、その後の日本への原爆投下と切り離せるわけもなく、胸がグッと苦しくなった。ヒロシマ、ナガサキへの投下も成功していよいよオッピーが英雄となり、満席の階段教室のような所で人々が彼に大歓声を送っているシーンで、一瞬女性の顔の皮膚が捲れたり足元を黒い泥に埋まる幻覚を見るが、原爆の被害はあんな薄皮が剥がれる程度のものではなかったし、足元だって泥のレベルではなかった…と思ってしまう。
罪悪感に苛まれたオッピーが晩年心穏やかな生活を送れなかったと描くことによって、結果的に彼の贖罪が赦されるような結末になっているのではないか。
ただまあしかし、3時間を感じさせない迫力ある展開は1本の映画としては面白かった。
それでも、監督やプロデューサーにはオスカー受賞式で一言でも核開発について言及して欲しかった、喜びだけでなく。
コメントする