「金本法子の物語を演じきった芋生悠に拍手を。」青春ジャック 止められるか、俺たちを2 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0金本法子の物語を演じきった芋生悠に拍手を。

2024年3月25日
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鑑賞方法:映画館

前作「止められるか、俺達を」は1969年から吉積めぐみさんが亡くなった1971年頃までが舞台。(前作を観ていない方に念のためお伝えしておくと若松プロの事務所に掲げてある門脇麦の写真、あれが吉積めぐみさんの遺影という設定です)
本作品はシネマスコーレがオープンした1983年頃の話で前作との間隔が10年以上ある。私自身の学生時代(口はばったい言い方だが青春時代)はすっぽりこの間に収まってしまう。前作の時代は子どもだったし本作の時代は既に会社勤めをしていた。ということであまり同時代感はなく、そういう観点でこの映画を味わうことができない。
そこで芋生悠に注目し彼女の演じる金本法子の姿を中心に観た。この映画は、群像劇であり、主役それぞれの物語である。ただし、どちらかというと若松監督と木全支配人は保護者的に後景に退いており若い井上と金本2人それぞれの物語であるといっていいかもしれない。
金本は「三重苦」で苦しんでいる。このうち「才能がない」は本人の問題だが「女である」と「在日朝鮮人である」ことは全くに本人の責任ではない。金本は苛立ち、他人を攻撃する。他人がのうのうと有利な地位を占めること、そして卑怯にも逃げ出すことを許すことができない。
この人物像を演じきった芋生悠が素晴らしい。彼女は演じる役それぞれで雰囲気をガラリと変えることのできるカメレオン役者であるが(「朝になるとむなしくなる」も「夜明けのすべて」も脇役ではあるが素晴らしかった)芯の強さを感じさせる役を演じさせると若手女優の中ではピカいちである。
ちなみにレビューではどなたも触れていないようなので敢えて言及すると、在日外国人の指紋押捺制度は2000年まで存在した。特別永住者(戦前から日本に居留していたものとその子孫)への指紋強制は1993年で一応中断されている。つまり映画の時代から10年間の闘いを要しているのである。
最後に下世話な感想をひとつ。金本は男性と「寝る」って言うんですね。「エッチする」とか「やる」ではなくて。これってとても80年代的というか村上春樹的というか懐かしかった。

あんちゃん
Mさんのコメント
2024年4月28日

芋生悠さん。いい役者さんですね!

M