「映画は熱だ!」青春ジャック 止められるか、俺たちを2 sankouさんの映画レビュー(感想・評価)
映画は熱だ!
シネマテークが閉館し、名演小劇場も休館中。
かつて存在したシルバー劇場、ゴールド劇場も利用したことがあるが、名古屋からミニシアターが姿を消しつつあるのはとても寂しい。
とりたててシネマスコーレが居心地の良い劇場だという印象はないものの、ラインナップは面白いものが多かった。
そんなシネマスコーレの誕生エピソードを興味深く拝見することが出来た。
とにかく画面から伝わる熱量が程よく、重すぎずも軽すぎずもしないとても心地の良い作品だった。
それぞれの登場人物の人生にしっかりと寄り添った作品でもあり、支配人の木全、映画監督になりたい金本、井上、そしてもちろん前作に引き続き井浦新演じる若松孝二監督もとても魅力的に描かれていた。
木全は本当に映画に対する熱が強く、名画座の集客が悪く、ピンク映画をかけざるを得なくなった後も、映画の未来を信じてインデペンデント系の映画を上映することを若松監督に強く訴えかける。
その熱意が今もこの劇場がしっかりと名古屋の地に根付いている要因でもあるのだろう。
奥さんとのエピソードもとても心が暖かくなった。
そして夢を追いかける金本と井上。
夢を追いかけることは決してポジティブなことばかりではない。
むしろこれ以外に選択肢はないと執着してしまえば、ただひたすらに苦しいものである。
金本と井上の存在はとても対称的に感じた。
どちらも人間的には闇を抱えており、決して好感の持てる人物ではない。
最初は井上は口ばかりの男だと思っていたが、若松監督を追いかけて新幹線に乗ってしまう場面には驚かされた。
彼はとても行動派な男だったのだ。
そしてあまりビジョンがないようにも感じられるが、実は心の中には強い想いを持ち続けている。
彼の初の監督作品もほぼ若松監督に乗っ取られた形になってしまうのだが、それでも悲壮感はほとんどなかった。
一方、金本は自分が女であること、才能がないこと、そして在日であることを理由に、なかなか一歩を踏み出すことが出来ない。
そして運のある井上に嫉妬し続けている。
あまり自分のことを大事にしない金本に良い印象は抱かないものの、だからといって彼女が決して魅力的でないわけではない。
苦しみの中でもがき続ける人間だって、とても美しいものだ。
そしてただひたすらにマイペースな若松孝二。
何だか前作以上に彼の優しさが滲み出る作品だったが、むちゃくちゃといえばむちゃくちゃでもある。
だが何だか憎めない。
滝田洋二郎、黒沢清、荒井晴彦、周防正行と、現在の映画界の大御所が若手として名前を連ねているあたりがとても感慨深かった。
結局最後は映画は熱なのだと思った。
若松監督の「映画は心なんだよ」という言葉が印象に残った。
井上の初監督作品の実際の映像がエンドロールで流れるのは感動的だった。
今は亡き赤塚不二夫、そして本編にも本人役で登場する竹中直人の若かりし日の姿が目に焼き付いた。