「貴重な現代史の証言」続 戦車闘争 [戦争]を伝え続けるということ LSさんの映画レビュー(感想・評価)
貴重な現代史の証言
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ベトナム戦争で後方拠点として機能していた在日米軍基地。その一つ、戦闘車両の整備修理を行っていた米陸軍相模原補給廠からの車両輸送を止め、廠を人力で封鎖した出来事があった。
本作は、現場で取材していた新聞やグラフ誌のカメラマンたちが語る当時の状況を軸に構成されたドキュメンタリー。封鎖に参加した当事者、関係者の証言はないが、それらは多分正編(未見)にあるのだろう。「続」と銘打たれているが単体で見て問題なく完結している。
見る前はタイトルから反戦平和運動の文脈での取り上げを想像したのだが、製作者の立ち位置はフラットで、証言では彼らから見た運動の政治的側面や活動家と市民の乖離、相模原という地域社会の特質といった点も語られる。
むしろ本作の中心は、カメラマンが行動原理として、あるいは仕事として、こうしたイベントを眼前にして何を考え、どう行動したかにある。
個人的には(もちろん証言者により度合いは異なるが)、どのカメラマンも、報道としての使命よりも、記録し発表しなければならないという本能に突き動かされているように感じた。
作品後段ではより俯瞰的に、そうした熱量が結果としてベトナム戦争を終わらせる方向に米世論を動かしたが、一方で湾岸戦争以降、当局の「メディアコントロール」による世論誘導が進む契機となったことも研究者から述べられる。そして改めて、記録を後世に残すことの重要性が示されて終わる。
本作は戦後日本における貴重な現代史の証言であるとともに、戦争や災害といったカタストロフに際してのメディアの役割について考えるよい材料だと思う。広く観られてほしい。
(石川文洋氏が現役であったことに驚くとともに敬意を表したい)
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