ナポレオンのレビュー・感想・評価
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アンチ・ナポレオン?
ホアキン・フェニックスといえば、「ジョーカー」の怪演で知名度大幅アップしましたが、リドリー・スコット監督作品なら、「グラディエーター」の憎たらしい悪役でとっくにお馴染みでしたね。
それにしても、英雄ナポレオンまで怪演になるとは、予想外でした。
フランス人と仲が悪い(?)イギリス人監督だからなのか、従来のイメージの時代精神的ナポレオン像ではなく、不器用で田舎者っぽい、おっさんくさい姿に描かれています。
ナポレオンに何か恨みでもあるんですか? と問いたくなる内容。
込められたメッセージは、どうやら、野心から戦争を重ねて多数の人を犠牲にしたという糾弾のようですが、フランス革命後期のカリスマ的指導者の実像が、あんな凡庸な人物だったのなら、多くの人々の支持を得ることなどありえなかったでしょう。
私にナポレオンの肩を持つ義理はありませんが、実在の人物を描く作品にしては、公平さに欠けるように感じました。
フランス革命とナポレオン戦争の予備知識がないと「なんで戦争ばかりし...
フランス革命とナポレオン戦争の予備知識がないと「なんで戦争ばかりしてるの?」「この人誰?」ってなるかと思います。
英雄ナポレオンと人間ナポレオンを対比させていますが、どうにも中途半端なように思いました。
ナポレオンの事績を追いかけるのも駆け足だし、ジョゼフィーヌへ入れ込んだ理由も分かりにくい。
アウステルリッツやワーテルローの再現は迫力があり、ルイ・ダヴィッドの絵画を再現したような戴冠式は流石に巨匠ですが、クフ王のピラミッドを砲撃したり、ジョゼフィーヌの不倫を知ってエジプト遠征軍を放り出して帰国するなんてあんまりじゃありませんか?
二つの孤独な精神の交流
2023年。リドリー・スコット監督。マリー・アントワネットが断頭台に送られたときに一人の将校に過ぎなかった男が、大胆な軍事作戦を成功させることによって成り上がっていき、やがてフランス皇帝となった後、急速に没落していく様を描く。冷静沈着で目的遂行のためには手段を択ばない冷酷無比な人間離れした男としてのナポレオンが、唯一人間らしい交流を持つのがジョゼフィーヌ、という設定。常に満たされない憂い顔のフェニックスと目玉の大きなびっくり顔のカービーが、人間味をまったく感じさせない、かといって愛がないわけではない夫婦を演じている(こういうのを怪演というのではないか)。全体に重苦しくシニカルな人間観が漂っている。
この二人以外はほぼエキストラといってもいいほどの密度でそれぞれの孤独と二人の関係が描かれていく。ほんの一瞬の心の交流があればそれで人生はめっけもので、そのほかの大部分は労苦に過ぎないという暗鬱なメッセージを突きつけられている気がする。しかもその一瞬さえ偽りかもしれない不安がつきまっているのだ。
映画の最後にナポレオンが率いた戦争の死者数が現れる。つくづく、革命の熱狂の余韻がなければこれだけの死者を生み出す戦争は成し遂げられなかっただろうと感じられる。ナポレオンが世界精神の体現者として表れて歴史は終わる、とヘーゲルは考えたらしいが、人々を死に追いやる世界精神とは何だろうか。
英国人が描くフランス
英国人のリドリー・スコットがフランスの英雄ナポレオンを描く。なぜ?
ナポレオンを演じるホアキン・フェニックスは様々な民族の血が混ざっているので、ナポレオンの出自からすると最適なのですが・・・。
結論から言うと面白くなかったです。ただ飽きる事はなかった。
戦争シーンは迫力あるし、何より怪優ホアキン・フェニックスがここでも見せてくれるので、彼が出てるだけで異様な雰囲気がスクリーンから発せられるます。
でもそれだけ。
フランス革命からワーテルローの戦いはヨーロッパ史では常識なせいか、描写があっさり過ぎ。何よりもナポレオンとジョセフィーヌの関係が全く面白くないのにやたら時間を費やしている。
そもそもリドリー・スコット監督に(下手だから)男女のドラマなんて求めてはいないのに、監督自身がそれが下手なのを自認していないからだと思う。
でも一番ガッカリしたのは普通のワイドスクリーンの映画だったこと。
ナポレオンにまつわる映画は意外と少なくて、すぐに思い浮かべたのは1927年のサイレント映画。それをフランシス・フォード・コッポラが復元し、日本では黒沢明監督が協力して公開された、オーケストラ伴奏の3面マルチスクリーン上映のもの。
それがあるからフランス史なのに、映像派リドリー・スコットがナポレオンを撮って、最高の絵と音に拘った絢爛豪華な映画になると期待したのになあー、至って普通の歴史劇である。
これなら2部作にして、砲長から皇帝に登りつめる栄華を描いた前編と、ロシア進行からワーテルローの戦いの敗北を描いた後編でじっくり観たかった。
切ないジョセフィーヌの生涯
戦闘シーンは大迫力。当時のフランスの再現性は緻密でさすが。でも、せっかくの映画館での鑑賞なのに、最後なぜか寝てしまうという、、、(疲れてたのか私・・・?)
歴史通りの時系列で話が進み、すごく盛り上がる場面があるでもなく、重厚な雰囲気に包まれたまま物語が淡々と進む。そのせいか何かこう、どうしても物語に入り込めなかった。。。たぶんフランスのあの頃の歴史の知識がある人なら、面白いんだと思う。
ナポレオンが生まれた我が子をジョセフィーヌのところに連れて行って、ジョセフィーヌが赤ちゃんを抱っこする場面は、すごく切なかった。ナポレオンの子供を産めなかった彼女の気持ちを考えると、涙がでました。
千とヘレナの神軍師
「ナポレオン」と言えば、あのキューブリックが映画化を切望したが、資金難から断念せざるを得なかったタイトルだ。今般リドリー・スコットが映画化したというので、どのようなものになったのかと見に行ってみた。
ジョセフィーヌとのぐちゃぐちゃした関係の顛末は正直あまり興味が持てなかったが、アウステルリッツやワーテルローの戦闘シーンの大迫力には度肝を抜かれた。CGとかも使用しているのだろうが、ロングショットで戦場を俯瞰で捉えた壮大なロケーションにわくわくする。邦画の「関ケ原」などには欠けていたものだ。一応満を持してIMAXで鑑賞したのは間違いなかった。
劇中フランス人が全員英語をしゃべっているので、ナポレオンと英国人のウェリントン公が通訳なしで対話するという珍妙なシーンが出現する。ロシア人などそれ以外の国の発言には英語字幕が入るのに。フランス本国での評価も知りたいところだ。
49歳のホアキン・フェニックスがトゥーロン攻囲戦当時24歳のナポレオンを演じるのもちょっと無理がある。若い役者が中年まで演じるのと中年の役者が若者を演じるのでは、後者の方がハードルが高そうだ(「ワーテルロー」では当時45歳のロッド・スタイガーがナポレオンを演じているが、こちらはワーテルローの戦い前後のみを描いた映画なので違和感はない)。
当然人件費や衣装代、オープンセットもろもろ膨大な制作費がかかっているのだろうけど、それはかつてキューブリックが構想した時の費用と比較してどうなのか。今さら繰り言にはなるが、無理してでも調達できるものなら、撮らせてあげたかったとも思う。
切なく美しい
さすがリドリー・スコット、ひりついた戦場の空気感と心の襞が震えるような大人の情愛を同時に突き付けてくる凄さ。ホアキン・フェニックスがまた素晴らしい演技、当時の女性には考えられないほど大胆で勇気のあるジョゼフィーヌを愛することでナポレオンの魅力は増している。
面白くないけど最高の映画、人を選ぶぞ
星5です。
面白いか?楽しいか?と言われれば、NOかもしれない。楽しいエンターテイメントを求めるなら期待外れ。
しかし、間違いなくすごい、とてつもなく凄い映画です。リドリースコット度 150%全開の最高傑作。
一般的な楽しくエキサイティングで万人が楽しめる映画をUSJとかディズニーランドとするならば、「ナポレオン」は美術館の様な感じです。分かりやすい興奮では無いが、間違いなく「凄い」。
何が凄いか?それは、映画館に来たのに19世紀のフランスに来たかと錯覚するような世界観の徹底的な作り込み。建物、家具、食器、衣装、文化、空気、草や木、、、全てが徹底的に作り込まれており、美しく、たいへんな完成度です。フランス革命、ほんとに時に来てしまったかと錯覚する、自分があたかもその時代にいてナポレオンの半生を目撃している、それを自然に感じてしまう凄さ。
全てのシーンが絵画の様に美しく、構図に趣がある。特に戴冠式のシーンは、あの有名な絵画「ナポレオンの戴冠」と見間違う程の美しさ。衣装、背景、人の配置まで、狂気を感じるくらい完璧なのです。
リドリースコットの真骨頂と言った映画ですので、つまり「面白く無い」ということです。間違いなく映画史に刻まれる一作です。
単なる「印象操作」じゃないと信じたい
『ナポレオン』と単純明快なタイトルをつけた映画としては、3作目らしい(出典:映画com)。初回作から97年、2作目から68年経過している。
さらには、ナポレオンを登場人物とした映画の本数は177を数え、これはギネス世界記録らしい(出典:Wikipedia)
″ナポレオンの人物像に関する新解釈″、という前宣伝
86歳になったリドリー・スコット御大の魔法やいかに
なにより、ホアキン・フェニックスの新作!
という要素が私を映画館に連れていったのだが、
なにが、″人物像の新解釈″に当たるのか、判然としなかった。
ナポレオンを「偉人」や「英雄」として扱いたくない意図は伝わってきたが、作りて側がナポレオンをどう″解釈″したか、については観客に判断を任された、と受け取るのがよいだろう。
私はどう受け取ったのか?
故・安倍晋三さんが国会答弁で好んで使ったフレーズ、
『印象操作』というワードを思い出してしまった。
事実の積み上げだけでは決定的なものに行き着かないので、状況や動機を想像で埋めている。
事実としてハッキリしてるのは、
「偉人や英雄ではない」としても
「世界の歴史を動かした人物の一人」ということだ。
愛妻家で別に構わないし、ヤキモチ妬きでもok、
後継ぎが欲しいのも単に個人の感情だけではなかろう。
ジョセフィーヌを手放したら運も尽きた???
ホンマかいな(笑)
ホアキン・フェニックスが主演を演じてなくて、
リドリー・スコットがメガホンをとっていなかったら、
敬意を欠いた評価が乱れ飛びそうな、そんな映画だった。
【好きなシーン】
エジプトでミイラと対面するシーン
アウステルリッツ・ワーテルローの戦闘シーン
もぬけの殻になったモスクワで玉座に座るシーン
ホアキン版ナポレオン、全体通して良かった!
VFXのクォリティの高さ!
【個人的に好まないシーン】
ジョセフィーヌとの濡れ場?(笑)
冒頭のマリー・アントワネットのシーン
全編を英語で貫いたこと
ホアキン・フェニックス、やっぱ上手いわ!という感嘆を込みで、★2.0(辛すぎ?)
鑑賞前にナポレオンの履修は必要
軸になっているのは最初の妻との関係。
ナポレオンが何故勝てたのか、何故負けたのか、彼の何がすごいのか、映画を観ただけではわからなかった。
ホアキンが演じるどこか頼りなげ(に私は見えてしまった…)ナポレオンもは魅力的だが、彼のカリスマ性がどんなもんなのかよくわからず…。
鑑賞前にナポレオンの歴史は押さえておいた方がいい。
戦闘シーンは流石の一言。スペクタクル。
尺足らず
リドリー・スコット、監督歴長いですよね〜。最初にブレードランナー見てからもう40年たっててまだ現役とはおそれいります。
今回の映画、ナポレオンの巧みな戦術が良く描かれると共に、ホアキン・フェニックスの演技を得て内面の焦燥感もあぶり出される素晴らしい作品だったと思いますが、さすがに3時間は短すぎて彼とジョセフィーヌの人生を盛り込むには駆け足すぎた印象もありました。
あまり詳しくない人は事前にウィキペディアのナポレオンとジョセフィーヌの項だけでも読んでおくことをお勧めします。映画のシーンがなるほどとつながると思います。私もあまり詳しくないのであとで読んで後悔しました。えらそうにすみません。
よく作ったと思うが、ヒロインは..
さすがの歴史大作、日本の戦国ものとはやはりスケールが違うなと感心した。アウステルリッツの三帝会戦からワーテルローに戦争の技術と指揮官の技量が変わってくるさまも見られる。ナポレオンの偉大さの陰に隠された背丈と人格の小ささを描くのもよし。ただ、ヒロインは残念だが違和感を感じた。俳優は実際との容貌の相似でなく演技力で決めるものだとしても、あまりにも似ていない。旬の売れっ子女優をオリジンが遠いのに入れたのが仇になっている。主演がナポレオンらしかっただけに、どうしても気になった。
奇妙な2人のヨーロッパ征服記
ナポレオンとジョセフィーヌの二人がお互いをどう思ってるのか、本当の感情がよくわからなくて良かった
やはり夫婦の仲は当事者しか分からないということか
その主人公ナポレオンはおんおん泣くし、おんおん子犬のマネをするし、情事も犬のようにやるし、とにかく愛情表現がとても幼稚で笑えた
あのホアキン・フェニックス自体何を考えているのかよく分からない怪優だから余計今回のナポレオンがよくわからないなにかになってた
しかもホアキン・フェニックス以外の俳優陣は背が高いからナポレオンの(色んな意味での)小男ぶりがよく表現されてた
ジョセフィーヌを演じてたヴァネッサ・カービーもミッション・インポッシブルの時よりも生き生きと演じてて素晴らしかった
彼女はやっぱりあの大きな瞳が素晴らしく、あの瞳でミッション・インポッシブルの女優だと思い当たりました
あの瞳のおかげで演技がより映える気がします
(特に泣く演技)
今回あれだけの歴史的な大人物を描くにあたって神々しい感じは一切なく、むしろ戦争の才能がたまたまあるおじさんとして描き、それと壮大な戦争絵巻とを対比させるのは観てて痛快ですらあった
また絵画から飛び出したような絢爛豪華な戴冠式は素晴らしくこれだけでも十分お金を払う価値があったように感じた
特に衣装や小道具などはとても美しいのにちゃんとこなれ感があり、絵画的であるのに、日常を切り取ったような地続き感もあるのも良かった
圧巻の映像と人間ナポレオン
ナポレオンの生涯を描くとしたら仕方ないのかな、と思うくらいの駆け足の展開でした。
大河ドラマ並みに時間がかかるだろうに、158分にまとめてきたのは編集の力技ですかね。
それを埋める一助に物語の語り方が詩的になっていたのが印象的で、どこかシェイクスピア作品を彷彿させられ、時代は違いますがヨーロッパ史を見るにはよい雰囲気でした。特に議会のシーンとかですね。
(英語だからかな?皮肉にもそんな効果が)
ナポレオンの人生すごろくを知ってる前提で描かれるので、逆に知らない人にとっては不親切かもしれないなと感じました。
彼の年表が頭に入っていたならば、それはもう美しくて克明で迫真の作品で、間違いない、評価しないわけにはいかないだろうという感じ。
戦争シーンは兵法を丁寧に描くあたり、21世紀最新版の近代戦争映画に仕上がっているのではないでしょうか。
しかしトゥーロンの戦いでは「そんなに火薬あったの?」とつっこんでしまいましたが、どうなんでしょう?笑
あったのかな。
ジョセフィーヌとの愛を軸にストーリーを構成している点については、もっと出会いのシーンをわかりやすく、観客の心に残るだけのものを描いても良かったのではないかなと個人的には思います。これは好みの問題。
ホアキンフェニックスだと歳をとり過ぎだろう、とそこは不安視していましたが、杞憂でした。彼の演技をもってしてそこにいたのは青年から成長を重ねるナポレオンでした。
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作品を離れるために蛇足になるかもしれませんが、偶然佐藤賢一さんの小説「ナポレオン」を読んだ後に鑑賞したため、映画もとても通りやすく見ることができました。
映画のクレジットの最後に登場した(翻訳)監修の松嶌先生の解説もありましたので、未読で興味ある方には情報提供まで。
ナポレオン
学生時代、世界史にまったく向き合って来なかった私でも知ってる名前。
でも恥ずかしながらナポレオンが何をしたのか無知状態での鑑賞。
それでも見た理由はただホアキン・フェニックスを見たいから。
ふむふむ、なるほどなるほど、とにかく自国愛が強くてそのために色々間違ったり人生注いだ、と。
あとでWikipediaでちゃんと調べます…
鑑賞中から思っていたことがあり、
それは、戦闘時の戦略的なものが、どの国も時代も同じなんだなぁ、と。
今、コミックのキングダムを読んでいて、あれは中華統一のお話で史実に基づいているはず。と、言うことは中国はナポレオンの時代のもっともっと前から、同じような戦略をとってきたということ。
どの時代もどの国も、参謀的な将軍的な人が色んな意味で活躍して時代に名を残すのですね。
勉強になりました。
とはいえ、何も知らずに見た私には終始難しく、顔と名前覚えられないまま終わってしまいました…
女性向けでは…ないと…思います…
多少の予習はあったほうが○
一部、観た方のアドバイスもあったので、一応ナポレオンの史実について簡単にまとめた動画やWikipediaにはサラッと目を通してから劇場へ赴いた。
結果的にそれは正解だったかな、と。
欧米人にはナポレオンという人がおそらく日本人にとっての織田・豊臣・徳川くらい認知度の高い英雄だとすれば、いちいち説明なんかしないのは『首』だってそうなワケで。
まあ、聞くところによると、製作したApple TV版には4時間以上の「完全版」があるらしいので、いわばこの劇場版がダイジェストって感じだろうか。
それでも最低限の状況説明はあるし、謂わば「予習=ネタバレ」でもあると思えば、そこは巨匠リドリー・スコット。もちろん予備知識ナシでも大丈夫なレベルだと思う。
「大砲を用いた戦術」という魔法を手に入れてしまった、戦争の天才ナポレオン・ボナパルト。
歴史の中では一時の英雄として名を遂げた彼が、人間としてとしてはとても不器用で、愚かで、哀れな人物であった…という解釈のもと、その半生を描いている。
そんな不完全さを浮かび上がらせるキャラクターとして登場する、妻のジョセフィーヌ。
彼がもし「皇帝」などにならなければ、二人の未来はまったく異なっていたと考えると、彼の才能の開花は結果として彼の凋落を招いたとも言える。
主役のホアキン・フェニックスは、何を考えているかよく分からない(=感情表現が下手な)ナポレオン像を体現していて、戦場以外では下を向いて食事しているシーンばかり。
我々観客も、彼になかなか感情を寄せにくい。
あえてそんな距離感で描かれるので、作品が終わって、ナポレオンのことがよく分かったか、ましてやナポレオンを好きになったかと言われれば、そういうタイプの映画ではないという感じ。
ただ、ロケやセットの規模(もちろんCGも多用されているだろうけど)、衣装やエキストラの数など、最近の映画ではお目にかからないレベルだし、ロシアへの遠征や三帝会戦、クライマックスのワーテルローの戦いなんかは、もっと見ていたいと思わせるシーンの連続。
上映時間もあまり気にならなかった。
…ただなぁ。
これがダイジェスト版だからなのか、やはりジョセフィーヌを中心とする人間関係はあまり細かく描写されていないので、全体としては「舌足らず」な印象も残ってしまった。
あ、ジョセフィーヌ役って「MI:デッドレコニング」のホワイトウィドウじゃん。
監督リドリー・スコット、題材はナポレオンと、予告映像からして壮大な...
監督リドリー・スコット、題材はナポレオンと、予告映像からして壮大な戦争スペクタクル物と想像して臨むも、前半、ナポレオンの妻ジョゼフィーヌとの出会い、夫婦愛?を絡めた尺が長く、肩透かしを食らう。しかし中盤からタイトルを「ナポレオンの女」と脳内転換すれば、「レジェンドアンドバタフライ」の如く、覇王と妻の愛憎、葛藤を軸とした物語として楽しむ事ができます。また、中、後半の戦闘シーンは生々しい演出とスピード感に溢れ、迫力があって当初の期待も十分に満たすことができました。
戦闘シーンを観ていくうちに、隊列の先頭に立つ兵士が気の毒で、ストーリーよりそっちが気になってしまいました。あんな軽装で歩いて敵陣に進む戦い方って史実なのか、薄くてもいいから甲冑や盾くらい持たす事ができなかったのかと。市民の命が軽薄に扱われていたこの旧王族・貴族たち支配層の壮大な暇つぶし、陣取りゲームは、やがて第一次世界大戦、そして現在もなお続いているのだなと、映画館を後に思うのでした。
ナポレオンとジョゼフィーヌの物語
重厚な予告に興味を惹かれ、しかも主演はあのホアキン・フェニックス!もうこれは観るしかないと早々に鑑賞予定に入れていたので、まさかの低評価レビューを尻目に、玉砕覚悟で公開初日に突撃してきました。
ストーリーは、18世紀末のフランスで革命の嵐が吹き荒れる中、一介の軍人であったナポレオン・ボナパルトがその才を生かして活躍し、運命に導かれるようにジョゼフィーヌと結婚し、ついに皇帝にまで上りつめるものの、心のすれ違いからジョゼフィーヌとは離婚、敗戦の責めを負って流刑、再起をかけるも失敗に終わるまでの波瀾万丈な人生を描くというもの。
フランスの歴史にも地理にもまったく疎いので、ナポレオン以外に登場する人物も地名もよく知りません。それでも、ナポレオンが軍略家として功績を上げ、皇帝にまで上りつめたことはよくわかりました。あわせて、彼が相当な野心家であったこと、妻を溺愛していたこともよく伝わってきました。その一方で、彼の愛は本物だったのか、独りよがりなものではなかったかとも思えてきます。
また、ジョゼフィーヌ自身もどこまで本気で彼を愛していたのか疑問に思う部分もありました。当時のフランスの上流階級の人々の恋愛感覚がわかりませんが、女性は男性に隷属するものと考えているようなナポレオンも、己の心に忠実で奔放なジョゼフィーヌも、どちらも相手を思いやる気持ちが少し足りなかったように思います。そして、それに気づいた頃にはもう手遅れであったというのは、いつの時代も変わらぬようです。
でも、本当は二人の恋愛物語より、ナポレオンの軍人としての戦略や政治家としての謀略など、彼の才能と野望をもっと映像で感じさせてほしかったです。もちろん自分の不勉強が原因で捉えきれない部分も多かったと思いますが、もう少し軍の進行ルートや作戦をCGで描いたり、人物相関図を挿入してくれたりするとありがたかったです。
とはいえ、戦争シーンはすべてが圧巻でした。IMAXで鑑賞したおかげで臨場感マシマシで、これだけでも観る価値があると感じます。いったいどれほどの人間と予算を投入したのかと、ため息が出るほどの映像に打ちのめされます。一方で、それが最後に計上される死者数に説得力をもたせ、観客に重くのしかかってきます。戦争とは、膨大な屍の上に一人の英雄を生み出す愚かな行為だと改めて思い知らされます。
主演はホアキン・フェニックスで、もはやナポレオンにしか見えない演技はさすがの一言。脇を固めるのは、バネッサ・カービー、タハール・ラヒム、マーク・ボナー、ルパート・エベレットら。
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