「ナポレオンにも、ジョゼフィーヌにも、魅力が感じられない」ナポレオン tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
ナポレオンにも、ジョゼフィーヌにも、魅力が感じられない
ナポレオンとジョゼフィーヌの話を描きたかったのは分かる。
だが、その一方で、3時間近い時間をかけながら、ナポレオンが、どのようにして数々の戦いに勝利し、皇帝にまで上り詰め、フランスの威信を高めていったのかが今一つ伝わってこない。
ジョゼフィーヌを溺愛していることは分かるものの、宣伝にあるように、悪魔だとか、英雄だとか、暴君だとか、天才だとか言われたナポレオンの多面的なキャラクターが描き切れているとは思えないのである。
確かに、アウステルリッツやワーテルローの戦いのシーンは、迫力のある大スペクタクルを堪能できるのだが、それ以外で本格的に描かれるのはトゥーロンの戦いとロシア遠征だけで、勝ち戦と負け戦が2つずつということもあり、ナポレオンの軍人としての優秀さが実感できないのも物足りない。
また、ナポレオンにカリスマ性がないばかりか、部下に慕われるようなエピソードもないため、エルバ島を脱出したナポレオンを制圧しようとした部隊が、彼の配下に加わるという流れにも説得力が感じられない。
さらに、ギラギラとした野心や上昇志向の持ち主にも見えず、彼が成り行きで皇帝になったり、仕方なく戦争をやっているように描かれていることにも違和感がある。
肝心の夫婦の物語にしても、魂の深い部分での葛藤が感じられない2人の愛憎劇には少しも共感することができず、見ていてちっとも面白くない。
特に、ジョゼフィーヌは、浮気癖のある性悪女にしか見えず、どうしてそこまでナポレオンに愛されるのかが理解できないし、子供ができないという理不尽な理由で離婚させられるという悲劇にもまったく同情することができなかった。
せっかく良い俳優を揃えながら、ナポレオンにも、ジョゼフィーヌにも、少しも魅力が感じられなかったのは、残念としか言いようがない。