「多少の予習はあったほうが○」ナポレオン キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
多少の予習はあったほうが○
一部、観た方のアドバイスもあったので、一応ナポレオンの史実について簡単にまとめた動画やWikipediaにはサラッと目を通してから劇場へ赴いた。
結果的にそれは正解だったかな、と。
欧米人にはナポレオンという人がおそらく日本人にとっての織田・豊臣・徳川くらい認知度の高い英雄だとすれば、いちいち説明なんかしないのは『首』だってそうなワケで。
まあ、聞くところによると、製作したApple TV版には4時間以上の「完全版」があるらしいので、いわばこの劇場版がダイジェストって感じだろうか。
それでも最低限の状況説明はあるし、謂わば「予習=ネタバレ」でもあると思えば、そこは巨匠リドリー・スコット。もちろん予備知識ナシでも大丈夫なレベルだと思う。
「大砲を用いた戦術」という魔法を手に入れてしまった、戦争の天才ナポレオン・ボナパルト。
歴史の中では一時の英雄として名を遂げた彼が、人間としてとしてはとても不器用で、愚かで、哀れな人物であった…という解釈のもと、その半生を描いている。
そんな不完全さを浮かび上がらせるキャラクターとして登場する、妻のジョセフィーヌ。
彼がもし「皇帝」などにならなければ、二人の未来はまったく異なっていたと考えると、彼の才能の開花は結果として彼の凋落を招いたとも言える。
主役のホアキン・フェニックスは、何を考えているかよく分からない(=感情表現が下手な)ナポレオン像を体現していて、戦場以外では下を向いて食事しているシーンばかり。
我々観客も、彼になかなか感情を寄せにくい。
あえてそんな距離感で描かれるので、作品が終わって、ナポレオンのことがよく分かったか、ましてやナポレオンを好きになったかと言われれば、そういうタイプの映画ではないという感じ。
ただ、ロケやセットの規模(もちろんCGも多用されているだろうけど)、衣装やエキストラの数など、最近の映画ではお目にかからないレベルだし、ロシアへの遠征や三帝会戦、クライマックスのワーテルローの戦いなんかは、もっと見ていたいと思わせるシーンの連続。
上映時間もあまり気にならなかった。
…ただなぁ。
これがダイジェスト版だからなのか、やはりジョセフィーヌを中心とする人間関係はあまり細かく描写されていないので、全体としては「舌足らず」な印象も残ってしまった。
あ、ジョセフィーヌ役って「MI:デッドレコニング」のホワイトウィドウじゃん。