劇場公開日 2023年10月13日

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「臭いものには蓋をしろ?」月 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0臭いものには蓋をしろ?

2025年4月2日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 幻想的な月夜の風景。そして東日本大震災の惨状。心の傷が未だにイヤされてないように思える堂島洋子(宮沢)。東日本大震災を扱った小説で脚光を浴びるものの、それからは全く小説が書けない。夫の昌平(オダギリジョー)は人形アニメーション作家を目差しているが、マンション管理人のアルバイトで食いつなぐ。

 同僚のさとくん(磯村)が危険な思想を持っていた。ヒトラーにも通ずる優性思想。噛み付かれたり、幽閉されている障がい者の実態を見てバケモノへと変化していくさとくん。心がない者はヒトではない。やがて彼は洋子の告発によって精神病院へ入所することになるが、わずか2週間で退院・・・そして実行へ。

 障がい者施設の実態は確かに隠蔽工作があったように描かれてはいるけど、どうせなら税金を使った杜撰な管理をもっと描いても良かったのでは?とも感じる。助成金や闇の事実など、所長のモロ師岡ならいくらでも抱えていそうだ。暴力や虐待などももっと深刻に扱ってもらいたかったところだ。

 重すぎるテーマを中心に様々な闇を抱える登場人物。ちょっと詰め込みすぎとも思うが、生きること、生まれてきたことを上手く表現していた。そして「月」。冒頭の幻想的な三日月やアニメーションの月、そして「月に追いかけられている」と感じるさとくん。井上陽水の「東へ西へ」を口ずさむ様子も彼の心の中を見透かしたようで意味深だった。

 盛り込みすぎの要因の一つ。二階堂ふみ演ずる陽子はクリスチャンの家庭に育つが、旧約聖書も詳しく知っている様子から、ヒトラーとユダヤ人の関連もほのめかしていたこと。回転寿司のタマゴにしたって・・・考えるのはよそう。

kossy
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