「見て見ぬふりをすること」月 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)
見て見ぬふりをすること
あの事件を題材に石井裕也監督が映画化すると聞いて、本当にできるの?公開できるの?と危惧していたが、ミニシアターながらほぼ満員のお客さんの中で観ることができ、そのことだけで素直に良かった。
実際の障害者も出演しているようだし、ナチスや優生思想という言葉もはっきり使われていて、現在の日本映画ではタブーというか、忌避されてきた部分を真っ当に取り上げている。その点は、放送禁止用語が飛び交う「福田村事件」と同じ。
多分、石井裕也監督でなければ、観なかっただろう。この題材をゴリゴリの社会派作品に仕上げられたら、あまりに観るのが辛い。辺見庸の原作を換骨奪胎したようだが、石井監督ならではの軽みと希望が加えられている。ただ、これだけの題材を扱うにしては軽すぎる、という批判はあるだろう。そもそも現実の事件からまだ7年という生々しい時期に映画化するのはどうなのか、という思いが拭えないところはある。
俳優陣は、出演すること自体に悩んだだろうが、宮沢りえをはじめ、みな力は入っていた。磯村勇斗は、近頃の問題作の常連という感じ。特に良かったのが、オダギリジョー。ちょっと情けなく、危うい感じの役をやらせたら比類がない。
この作品の大きなテーマである「見て見ぬふりをすること」については、自分の考えがまとまらない。そのことを「嘘」だと言い切るのは違うと思うし、「だから自分が何とかする」というのは独りよがりになってしまうのでは、としか言えない。
いる人、いらない人ー
誰がいつ、決めるの?
じゃあ、わたしは?
赤児の時から、
実親に…親戚宅に置き棄てられた私は……
けっして、その暮らしが貧し過ぎた訳では無い。
寧ろ、裕福な方に入るしー健康状態も良好だった両親。
なんで。
母親に、育児能力と其の気力が、
無かったから〰
愛情も、ね。
でもね。
優しく穏やかな養母に、
彼女が急死する迄ー育てられたよ。
私、
ふつう!の子だったよ。
ほんとうに、
誰が、
いつ、
どのような基準でー
決められるの?
教えて欲しい。
何とか夢中で、
子育てを終え、
養母の魂を支えに、
今を〰
小さな生き物達経と、
自己肯定を見付ける役を、
移してる私に。