「障害者施設で働いています。」月 りりさんの映画レビュー(感想・評価)
障害者施設で働いています。
私は障害者施設で働いている者です。映画を観た感想は、だいぶ角を取って作られたな。と言う印象です。
映像が暗い、事務所が暗いとか色々な書き込みを目にしました。確かに働いている職場の事務所は日当たりが良くて明るいです。そこじゃなくて、あの暗くて、不穏な雰囲気は職員の心の中を表しているんだな。と私は思いました。
幸いにして、私が勤めている職場には虐待はありませんが、強度行動障害や重い自閉症や知的に遅れがある方は時として大暴れします。噛みます。服をブリブリに破られた職員もいます。唾をかけられて、殴られたり、猛ダッシュで体当たりをされたり。自制が効かないので全力で向かってきます。それに職員が何名も取られて他の利用者さんに手が回らないとかザラにあります。映画の様に、虐待に走る、おかしな支援になる事は案外容易に起きてしまう空間ではあります。いかにそうならない思考を持つかが大変なんです。
ちょっとしたドアの閉まる音に反応して暴れることすらあります。出演された障害者さんはきっと撮影と言う慣れない人、空間で不穏な中の撮影だったと思います。変化を嫌い、新しいを苦手とされるのでよく撮影できたな。と感心すら覚えます。
同僚は、殴られて骨折した者もいます。変な話、職員が下に見られたら、とことんかかってくる利用者もいます。障害者とは言え、殴られたり蹴られたり世間からすれば暴行と値することでも私達は我慢し、暴れず安心して生活できる空間づくりができる様な対応を常に考えていますが、実際心はボロボロで。。相手が誰であろうと殴られたら腹が立ちますが、みんな、あの時こうしたから良く無かったね。これから気をつけよう。そんな無理のある切り替えで日々頑張っています。
確かに預けっぱなしの親御さんもいます。とてつもない常識はずれのクレーマーもいます。
私は親でもあるので、深読み先読みして障害者の親だったら。。と美化しながら障害者の親御さんを考える事もあります。美化しないと、心が優しくなれない部分もあります。
すごく太った利用者さんの親御さんが(暴れたときに好きな食べ物を大量に食べさせると静かになるからと大量に食べさせていた。)痩せてほしいから散歩してほしいとニーズがありましたが、道路で急に暴れる事もあるので、公園でで散歩していたら「大人が公園で走っていて怖い」と通報された事もありました。本当に毎日疲れます。少しこの現場から離れたいとも思います。激務を超えています。
外でマスターベーションする方もいます。
それでも、誰にも命の線引きはできないと思います。殺すなんて言語道断です。
映画を観てもやっぱり答えはわかりません。
この子が大切なのよ。と言う親御さんもいます。そう言う優しい思いに耳を傾けて、優しい心を維持してもいます。
綺麗事抜きで、自分の子が障害があったとして、治療したら治る。くらい医療が進歩したとしたら、大金をはたいてでも治療する。が今ある思いではあります。
でも、本当に笑顔は可愛いですよ。心がないって事はないです。訴えだったり、苛立ちだったりで暴れるんですよね。見えない話せない。でも、指の動きだったりで訴えている事もあります。受け手がどう相手を見ようとするかで大きく変わってくると思います。
この映画の中の事はほんの一握りにも満たない出来事に過ぎませんが、世に知って頂いて考えてもらえるきっかけになったと思います。
心から感謝申し上げます。