「🎵 月は流れて、東へ西へ 天狗舞よりも月桂冠「つき」」月 カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
🎵 月は流れて、東へ西へ 天狗舞よりも月桂冠「つき」
石井裕也監督らしい鬱映画である。
独特の世界感の表現に成功したかも。
深い森の奥の社会から隠ぺいされた障がい者養護施設を舞台に、ひとりよがりの優越感(相手を見下す心理や態度)や優生思想について、メビウスの輪の上を歩くが如く出口のない迷路から逃げ出せない感覚にハマる。
クセの強い俳優(二階堂ふみ、モロ師岡)の洋子に対する辛辣なセリフや馬鹿みたいにワンパターンのマウントを取ってくるマンションの管理人などはとても不愉快。
心臓病の子供を手術中のトラブルから3年間の植物状態の末に失った夫婦。妻のことを師匠と呼ぶ気弱な夫と処女作後まったく書けなくなった小説家の妻。今後妊娠しても生むかどうか、出生前診断するかどうかの答えも出せない。父親から虐待されながら育ちながらも実家を出ないひねくれ女。ネガティブなことを言わせたら右に出るものはいない。軽度の知的障害があり、その素直さゆえに物事に執着しがちな若い介護職員のさとくん。
これらの少ない登場人物に閉鎖的な舞台設定。
一番恐ろしいのは劣等感の裏がえしの根拠に乏しい優越感。
それに優性思想がかぶってくると鬼に金棒。
施設の所長は現実を見なさいと言って職員を丸め込もうとする。
さとくん(磯村勇斗)は陽子(二階堂ふみ)の毒にまずやられてしまったような気がする。
不快な匂いと音は視覚以上に感情に訴えてくることを滔々と話したり、はなさかじいさんの悪い爺さんの話などがループして、おかしくなってゆく。
自分とコミユニケーションを取れない心のないものは人間ではないと決めつける。
一方、ろう者の彼女は障がい者でも手話でコミュニケーションとれるからと
都合のいい線引きをする。
そんなさとくんはわざとろう者を恋人にした気がする。
さとくんが歌う井上陽水の「東へ西へ」。
このころの陽水のアルバムの曲は憂鬱な歌詞で溢れている。
🎵 がんばれ みんな がんばれ 月は流れて 東へ西へ
オダキリジョーが三人に負けじ?と、すごく真面目な演技。
よかった。短編映画で賞もらえて。
でも、天狗になるときっと離婚することになる予感。
回転ずしの玉子のエピソードも石井裕也の独特の世界感。
誰も取らないのでぐるぐる廻っている玉子は最終的には廃棄されるのか?
あなたが今取ったのは~ 金の皿ですか? 銀の皿ですか?
私はつつましく謙虚に暮らしております。
600円の金の皿はがまんして、100円の皿。
天狗舞よりも月桂冠「つき」
こんばんは
一番恐ろしいのは劣等感の裏返しの根拠に乏しい優越感ということばにどきりとしました。
玉子のお寿司については、選び方もタイミングもふたりの気の合い方(価値観含め)を示していたように思いました。昔も現在もでしたね。
カールさんのさと君と陽子についての分析、鋭いです。おっしゃる通り、と思いました。陽子のキャラクターが強烈ですね。吐いた毒に、最後は自分がやられた感じ。実際に犯人に連れまわされた職員の方とあのキャラクターを結びつけるのはどうなんだろうとも思います。事実を基にしたフィクション、と断った方が良かったですよね。
お寿司の玉子は人気が無いんですか?私は好きですが。玉子とかっぱ巻きに手を抜かないのは良い寿司屋、と聞いたことがあります。でも私も回転寿司では玉子を取らないかも。洋子と夫は気が合うのは確かですね。