「何か起こることを期待してしまう自分。」栗の森のものがたり ラーメンは味噌。時々淡麗醤油。さんの映画レビュー(感想・評価)
何か起こることを期待してしまう自分。
クリックして本文を読む
争いや事件が起こるわけでもない。
何かが起こることを期待して観てしまう自分の前提が、この作品を観ていると、その浅はかさが嫌に思えてくる。
作られた世界ではなく、ひとに忘れられた、とある場所の景色がとても豊かで、自然光で撮影された映像からは、匂いや気温、肌触りみたいなものを感じさせるほど美しく、とくに綿毛や波で表現する風の存在は見事。
老夫婦の営みは「消えるもの」として、かすかな希望と切なさを表し、静かな絶望を抱えて立ち去る女性の存在はアクセントにもなっている。そして、老夫婦の息子は、どこか能天気に描かれる。
人にはひとりひとりに物語があって、その物語を繋ぎ続けて、ひととして全うすることに、しみじみと浸ることのできる作品。
コメントする