「悪党うごめくこの世界が俺の狩猟場」クレイヴン・ザ・ハンター レントさんの映画レビュー(感想・評価)
悪党うごめくこの世界が俺の狩猟場
巨大マフィアの跡取りと目されていた主人公はハンティング中の事故で瀕死の重傷を負い、伝説の猛獣ライオンの血と呪い師の妙薬の効果により驚異的な身体能力を身に着けることになる。彼はそのパワーの源である大自然に導かれるがままに父のもとを去り、母の遺産である自然公園の土地で暮らしていたが、そこで動物たちを無下に殺す密猟者を倒したことから彼はリストに載せた悪党どもを狩り始める。彼の存在は闇の世界で恐れられる伝説となった。
マフィアものとヒーローものを掛け合わせたような異色作。例えれば「ゴッドファーザー」と「スパイダーマン」を足して二で割ったような作品とでもいえようか。
ただ、その設定が充分に生かされていたかというと否であろう。マフィアの家業を継ぐかあるいは悪を成敗するヒーローとなるか、どちらを選ぶべきかという主人公の葛藤が描かれなどしたらこの設定を生かした作品にはなっただろうが、初めから主人公は家を継ぐ気もなく出ていってしまうので。
端から家業を継がないというのなら、イマイチ敵役として魅力のないサイノや催眠術師との対決よりも父親との対決をメインで描いた方が良かった気がする。彼が悪党を狩り続ける限りいずれその悪党の頂点に君臨する自分の父親を狩らねばならなくなる。しかし悪党は殺すのに自分の父親だけは殺せない、そのあたりの主人公の葛藤をじっくり描いた方がより見ごたえのある作品になったのではないか。最後に黒幕だった父をあっさり熊に殺させるよりも。
あるいは自分が家を出たことで家業を無理やり継がされた弟との確執などが描かれていればさらに見ごたえがあったかもしれない。
最愛の弟が父の跡を継ぎ最大の敵になるという展開は次作に持ち越されるようである。描きようによっては面白くなりそうだが、続編が作られるかは本作の出来からいって微妙なところ。
マーベルのヒーローものにしては珍しくR指定がついていたので期待したが、アクションも予告編を超えるものはなく総じて物足りない作品ではあった。