「登場人物の行動が理解できず、取り残される」バジーノイズ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
登場人物の行動が理解できず、取り残される
いくら彼氏にフラれてショックだからといっても、夜中の3時過ぎに見ず知らずの部屋のチャイムを鳴らして音楽が聞きたいと頼み込んだり、それを受けて大音量で音楽を演奏したり、どうやって侵入したのか分からないが、ベランダでサッシの窓ガラスをぶち破ったり、それから2人で海に行って、挙句の果てに、同じアパートで音楽は演奏できないはずなのに、「自由に音楽を作って」と男を部屋に住まわせたりと、エモーショナルと言うよりも、あまりにも非現実的かつ非常識な展開に、冒頭から呆気に取られてしまう。
その後も、主人公が人間嫌いなのは、過去に誰かに裏切られたような過去があり、人間不信に陥っているからなのかと思っていると、自分が人前で演奏するのに怖気づいたからだという理由が分かって、肩透かしを食らってしまった。
それでも、そんな主人公がバンドを組むことにしたのは、他人と一緒に音楽を作る楽しさを知ったからなのだろうが、その相手は以前のバンド仲間と同じ人間で、だったら、その時に、同じような楽しさを味わえなかったのだろうかという大きな疑問が湧いてくる。
主人公を見い出した少女にしても、女性のドラマーをバンドに迎えて、主人公が楽しそうに演奏するのを見ただけで、姿をくらましてしまうという行動には、それこそ「独りよがり」で、到底納得することができないし、あまりの自虐ぶりに同情することもできない。
それで引きこもりに戻ってしまう主人公も主人公だが、自分のせいで引きこもった主人公を、再度、世間に引きずり出そうとする少女も「マッチポンプ」としか思えない。
いかにも今風でポップな音楽はそれなりに楽しめたし、俳優たちのミュージシャンぶり(特に、円井わんのドラマーぶり)も見応えがあったのだが、肝心の「人と関わることは素晴らしい」というメッセージについては、主人公たちの行動原理が少しも理解できず、彼らに感情移入することもできなかったため、残念ながら、まったくと言っていいほど心に響いて来なかった。
ありがとうございます。
格好いい雰囲気や心地よい音楽に身を委ねれば良いだけの映画なのかもしれませんが、本当に「ノイズ」だらけで、それができなかったのは残念でした。