ミャンマー・ダイアリーズのレビュー・感想・評価
全2件を表示
意義はあるけれども、やや戸惑った
ニュース映像に出てくるような軍による市民への銃撃場面の続出を予想していて、もちろんそのような映像もあったものの、合間に挟まれた幻想的な映像には、やや戸惑いを感じた。蛹から蝶への変態は、雌伏の時期だという意味なのだろうか。妊娠を恋人に打ち明けるかどうかを迷う映像には、昔ながらの革命物語にも準えられるけれども、18歳未満の年齢設定には賛同できない。辺境地域における武装訓練の話は、別の報告集会で聴いたことがあるけれども、こうした映像公開も秘匿しなくて大丈夫なのかと思った。
状況はさらに悪化している
クーデター直後から概ね2021年中のミャンマーの状況を基に作られた作品。生命の危険があることから、制作者や出演者は匿名とされている。
実際の市民的抵抗のフッテージをはさみながら、抵抗に殉じた人、残された人、間で悩む人の心持ちが描かれる。明確な特定のキャラクターは登場しないが、抵抗を象徴する個人の心情に寄せた造形をされているのがダイアリーと題する所以だろう。
フッテージ以外のシーンが現実の出来事か、再現なのか、創作なのかは明示されない。映画全体の立ち位置は抵抗側にあるが、CDM(市民不服従運動)に参加して家を追い出される人、参加を拒んで子供がいじめられる人など一様ではないさま、そしてそういうことを議論できない社会状況も捉えられている。とはいえ、圧倒的な印象は非武装の市民による抗議と、それに対する治安当局の圧倒的な力の行使である。「時代革命」にもあった、自分の子供と同じ世代の若い警官(兵士)に丸腰で取締り停止を呼び掛ける親の行動には涙が止まらなかった。
終盤でカバーされていたように、時が経つにつれ反軍政の抵抗はCDMから国軍との武装闘争へと拡大している。国軍による空爆などで市民の死傷や避難民も急増している一方、反軍政派による軍政に協力する市民の殺傷も相当数起こっているとされる(「ミャンマー、市民殺害6300人超 民間報告、反軍派も3割関与か」時事通信、2023年6月13日)。暴力の応酬はエスカレートしている。
ミャンマーの民主主義と市民の自由の復活のために闘う全ての人々に敬意を表したい。部外者として暴力行使の是非にはコメントできないが、全ての暴力が停止できるよう、対話による問題解決の道筋が一刻も早くつくられることを望むとともに、暴力に傷ついた人々に対する人道的支援の努力のためにできることをしたい。
全2件を表示