「愛をかたちにするならば」BAD LANDS バッド・ランズ マスゾーさんの映画レビュー(感想・評価)
愛をかたちにするならば
あいりん地区(ドヤ街)
大阪市西成区の新今宮駅南の一角
昔から日雇い労働者や路上生活者が多く
日本で唯一たびたび諸外国のような
暴動が起こった場所
近年では行政の改善構想の影響や
全体的な高齢化に伴い
NPOや宗教団体の炊き出しなどが
行われ福祉の街になりつつある
と言われている
自分も学生時代に
待ち合わせの場所を探して
迷い込んだことがありますが
この一角だけ空気感がまるで違い
昼間から道路の真ん中で
普通に人が寝てたり
すごいところであった
そんな地域を舞台に
今回の原田眞人監督は社会の底辺
で狡猾にあるいは逞しく生きる
人間たちを描いた今作
どうだったか
相変わらず原田監督特有の
あえて聞き取れない
ほどのハイペース台詞と
大阪弁の相性も抜群によく
自然に描き出されたキャラが
作り出す世界観に引き込まれ
非常に面白かった
本当に話がどっちに
飛んでいくかわからない
映画って楽しい
この監督のあの
ぬる~っと長回ししながら
カメラが動いていく感じ
くせになります
特に主人公の煉梨(ネリ)を
演じた安藤サクラの細かな
仕草がほんとに面白い
作中ほとんど何の説明もない
様々な虐待に逢ってきた過去ですが
見ていくうちにだんだん
わかってきます
東京の狂気的な男から
逃げ出して大阪に流れてきた
ことから警戒心が強い
などの理由もあるのでしょうが
特殊詐欺の受け子においても
最終判断「三塁コーチ」
を務めたり
高城が住まわせている
老人たちの生活保護の
家賃管理をしたり
それでいて協力者に
ねぎらいは忘れなかったり
「優秀」さにジワジワ
動きから気がついて行きます
たとえば高城と話すシーンで
度数96とかあるスピリタス
火気厳禁なんですが
高城からダルマストーブを
遠ざけてその後スピリタスも
動かしたりするんですよね
自然と最善策がとれる
高城も過去に色々あった
ように見えて
受け子を中止した煉梨の
判断を信頼しているし
後を任せるつもりでもいた
このへんが親子関係だった
だけでなく普通に
有能だったからというのも
あるのでしょう
またトラブルばかり
持ってくるジョーにも呆れつつ
淡々とすべきことを提示していく
部分にも有能さが表れて
います
でもそれは打算なのか愛なのか
そんな葛藤を抱えながら
自然と観ていくことになる
感じがこの映画は終盤に
向けて解放されスカッと感が
すごいのです
こういうのがほんとテンポよく
143分パンパンに
詰まってるんで長さとか
全然感じませんでした
長いとかまとめろとか言ってる
文章を見ましたがまったく
笑ってしまいます
配信で倍速で見てればいい
っていうかそいつのレビュー
全体的にそんな感じなんですけどね
共感数いっつも多いけど
(くれぐれもどう感想しようが
自由ですが)
またこの映画には
天童よしみ
サリngROCKなど舞台で活躍する
そんなに今まで見なかった
歌手・俳優さんが出てますが
この世界観だとほんと
なんでもはまり込んでしまう
なんでこんなとこで博打やってんの
こんなとこで最高裁判事が
麻雀やってんの
(そういえばリアルでもそんな
検事長がいたような)
よくよく考えると色々おかしい
んですが不自然さをあえて
使ってる感じが普通に凄い
前の「ヘルドッグス」でも
テノールが上手いヤクザ
というなんじゃそりゃを演じた
吉川光夫さんは今回は見事な
ンジャコラボケカスを披露し
光ってました
原田監督の
ヘンな人大集合感
それによる世界観作りは
ガイ・リッチーより
全然上手いと思います
「金融腐蝕列島」くらいから
ファンですがまた次作も期待です