「何が正しいのか、何が悪なのか、何が聖なるもので、何が愚劣なものなのか。」春画先生 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
何が正しいのか、何が悪なのか、何が聖なるもので、何が愚劣なものなのか。
R15+指定。史上初、無修正の浮世絵春画上映。そう聞くとどこか猥雑な印象を持ちかねるが、鑑賞後の気分はとても気分がいい。自分の美意識に、卑下ることなく、日和ることなく、純真さを持って芸術に触れようとしている愛すべき人たちがこの映画にはいるからだ。
とにかく、北香那の表情がいい。この役はこの子こそ似合う。まぐわう男女を目の前にして、紅く火照った顔をする北香那。しかしそれは画が発する直接的なエロスに興奮しているのではなく、男の視線や女の仕草に隠された感情を感じ取って悶えている。その高揚した気分が見事にこちらに伝わってくるんだよな。この映画的に言うと「心のリミッター」を外した時がいいのだ。これがフェロモン駄々洩れの女優が演じてしまうとエロ映画になってしまうのだけれども、まだ幼さが残る肢体であり、走り方に鈍さもある彼女が演じるからこその味がある。しかも、時たま凛とした色気を見せる。
内野演じる芳賀の言葉も含蓄がある。「セックスは一種の運動」とか「痛みこそが生きているという感覚を呼び覚ます」とか、ちょっと世ズレた感覚があってこそ春画をしっかりと芸術として味わえるんだろうなあ。あの崇高なるマゾヒスティックな美意識が成せるものだ。その気分は、尊敬ではなくてややバカバカしさも含まれるのだけれども。多分僕はこの先、堅いかつおぶしを見るだけで、さらにはシャカッシャカッと削る映像か動作を見れば尚更、この映画を思い出してしまうかもしれない。
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