「必見の時代劇」キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン 蜷川吝塀さんの映画レビュー(感想・評価)
必見の時代劇
レイトショーで観ました。
なんと1900年代にアメリカで実際に起こった事件を基にした映画です。
今までのハリウッド映画で、この映画ほどネイティヴアメリカンの人々をきちんと“人間”として扱った映画はあったでしょうか。
私が知る限り、米国エンターテインメントの世界は彼らの事を“ユニークな見せもの”として扱っていたと思います。
本作ではネイティヴアメリカンのイメージとして定着している【無骨な中年男】や、【芯の通ったお母さん】はもちろん、お酒に溺れる女性や、鬱病を患い自殺を図った経験のある男性など、いわゆる“人間らしい姿”も見られます。
個人的には主演のリリー・グラッドストーン演じるモリーの“人間らしい美しさ”は、今後のエンタメ業界に影響を与えて欲しいです。型に嵌めたような極端な美しさは健康的とは思えません。
前置きが長くなりましたが、本作は長編という事で途中一度だけ小用に立ちましたが、それ以外気持ちがだらける事はなく、エンドクレジットまで集中して観ることが出来ました。マーティン・スコセッシ監督の技量に感服です。
レオナルド・ディカプリオが演じるアーネストには、何度怒りを覚えたか分かりません(苦笑)。ロバート・デニーロ扮するビル・ヘイルの露骨な善人面に対してもかなり血管が浮き出ました。また、アナの妊娠の際に彼がさりげなく発した言葉は今思い出しても戦慄します。
アメリカ先住民族に対しても理解のある白人男性であるマーティン・スコセッシ監督が、ハリウッドとネイティヴアメリカンの間に橋を架けてくれたと思います。
これからのハリウッド作品の俳優やスタッフの他、監督の名前にもネイティヴアメリカンの名前が記される事を心から期待しています。
追記:レイトショーでお客さんが少なかったですが、エンドクレジットで席を立つ人は数組だけで、殆どのお客さんは席を立たず余韻に浸っていたのが印象的でした。終電20分前でも魅力的な映画は客を引き留めるんですね😁