哀れなるものたちのレビュー・感想・評価
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世界を知れば、世界を手にできる
まず、想像したよりグロかった。そしてエロい。それなのになぜか清々しい。それは、この映画が人間賛歌を謳っているからなのだろう。人間の愛欲を皮肉たっぷりに描く、成長物語、冒険物語だからだろう。人造人間と言えば、フランケンシュタインかキャシャーンかって思い浮かぶけど、このベラの陽気さはチャーミングだったし、知能、感情、性欲、理性がぐんぐんと発達していく様は見事だった。エマ・ストーンの演技の賜物だった。邪悪なものを憎み、哀れなるものを慈しみ、未知の世界に貪欲に、閉じこもることを好まず、果てしなく広がる世界へと恐れずに足を踏み出していくベラの魅力。美しく、新鮮で、不穏で、奇妙。性的な興奮でさえ背徳的なものと思っていない。そんな純粋なる人造人間を前にして、むしろ生身の人間の浅ましさが浮き彫りになるのが滑稽とも思えた。
そして最後、ベラの聡明なる笑顔を見た時、「ベラに幸あれ」とエールを送りたい気分で満たされた。
エマ・ストーンの覚悟
世界をもっと知りたい。良識なんてクソくらえって感じ
人造人間ベラのヨーロッパSEX漫遊記
結論から先に言うと凄まじい傑作、封切り間近だからと去年の東京国際映画祭でスルーしたことを激しく後悔しました。まあこんなほぼ直訳の邦題はオシャレではあるんですが映画の内容自体は判らないので私ならこう名付けます。
“人造人間ベラのヨーロッパSEX漫遊記”
直接説明はないですが舞台は19世紀のヨーロッパ・・・ですが世界史の教科書で見覚えのあるそれかと思いきやヨルゴス・ランティモスが描いてみせるのは『ブレードランナー』みたいなスチームパンクなマシンが日常に溶け込んでいる全然デタラメで美しい世界。この辺りは18世紀を舞台にしながら風景にもサントラにも違和感が滲んでいた『女王陛下のお気に入り』からさらにシュールさに磨きがかかった感じ。お話を書くと野暮にも程があるので似たような作品で喩えると、序盤は『フランケンシュタイン』、中盤は『エマニエル夫人』、終盤は『ファントム・スレッド』もしくは『バービー』という感じ。とにかく執拗に繰り返される性描写が赤裸々にも程があってしかも無修正、まさかエマ・ストーンがシルビア・クリステルを軽々と超えてくるとは誰も期待していなかったことでしょう。というかこれがそのままスクリーンで上映出来るならモザイクとかボカシとかもう要らんってことですよ。そこだけ切り取っても画期的。ホンマ『ブギーナイツ』とか『ぼくのエリ』とかも無修正でスクリーン上映して欲しいです。
『女王陛下の〜』は登場人物の誰にも感情移入出来ない物語で魑魅魍魎達の七転八倒を半笑いで眺めるようなトラジコメディとなっていましたが、こちらは奔放極まりないベラの快進撃がとにかく痛快で最初から最後まで楽しくてしょうがないです。ほとんど全てのカットが斬新かつ美しいですが、特に印象的だったのがベラが訪れたリスボンの街角で弾き語りで歌われるファドに心を奪われるシーン。Carminhoが歌う“O Quarto”(部屋)という曲ですがその歌詞がベラの境遇と共振する様が物語のフックとなっています。
美しくも無知なベラを誘惑したはずが壮絶な速さで世界を理解していくベラに翻弄されて身を持ち崩していく胡散臭い弁護士ダンカンを演じるマーク・ラファロが開陳するヘタレぶりも見事ですが、やはりベラの創造主たるゴッドことゴドウィン・バクスター博士を演じるウィレム・デフォーの存在感が圧巻。自らも父によって人体実験の限りを尽くされたボロボロの肉体を引きずりながらベラに惜しみなく愛を注ぐマッドサイエンティストという常軌を逸したキャラクターを演じられるのは確かにこの人しかいないでしょう。
予告を見た瞬間にこりゃ『フランケンシュタイン』オマージュだなと思ったのでちょうど再上映中のヴィクトル・エリセ監督の『ミツバチのささやき』を先に観ておいたのですがこれは大正解。村にやってきた映画『フランケンシュタイン』を観て怪物に魅せられた少女アナが無邪気な遊びを繰り返した末に自分を閉じ込めている見えない壁にぶつかり父と対峙する物語が見事にシンクロしていました。
色々楽しい作品ですがR18+なのでどエゲツナイものがバンバン映り込んでいますし、ベースにあるのが痛烈な社会風刺ですのでそんなワサビが苦手な人は近づかない方がいいかとは思います。
天才の目を通してみた世界の鮮やかさと残酷さ。
前情報無しで鑑賞。天才の目を通してみた世界がこんなふうなのだと感心しました。
最前半の黒澤「赤ひげ」を思わせるモノクロから一転して、ロンドン、リスボン、アレクサンドリア、パリ、青い海の圧倒的な色彩が印象的でした。
ウィレム・デフォーの抑えながらも狂った演技は彼の華やかな芸歴の中でもピカ一(前情報無しだったのでアカデミー賞当確かと思っていたら候補にもなってませんでした笑)。エマ・ストーンの演技はうますぎて鼻につく。好き嫌いが分かれる感想です。
2時間超で長いですが、退屈なく観ることができました。様々な男たちのセックスプレイシーンも新鮮で、様子がよく分かり良かったです。
ラストのラストシーンは蛇足。ちなみに、特殊な環境から医者を目指す女性としてシーボルトの娘楠本いねさんを思い出しました。原作者は彼女知ってるのかなあ?シーボルトは若い頃やんちゃで、顔面が傷だらけだったというのは余分な知識ですね。
良い映画でした。
(一回運営様にレビューが消されて2回目のレビューです)
鑑賞動機:ランティモス8割、あらすじ2割
「まーた、変な映画撮って」と書いてみたものの、原作あるし、脚本はまかせてるから、隅々までランティモス印というわけではないのだろうけど。
動物が最初に出てくるところで、危うく自然すぎてスルーしそうになった。馬車かと思ったら…
私が知っている過去とは微妙に違う世界だと思うのだけれど、ベラという異分子に接した周囲が変わったり変わらなかったり、あるいはベラ自身の変化が見どころなのかな、と。最初は無知/無垢故にだけど最後は…みたいな対比もあるのかな、とかね。パリのパートは、最近観た『ラ・メゾン』と捉え方の違いを考えるのもした。
本を海に放り込むのに、次々代わりを出してくるとこ好き。逆にラストはあまり好きじゃない。ランティモスは一筋縄にはいかない。
とても退屈なキノピオ
意見をはっきり言える女性かっこいい。 それで人を傷つけることがあっ...
あまり多くを語ってしまうのももったいないのでとりあえず一言 一切の...
あまり多くを語ってしまうのももったいないのでとりあえず一言
一切の予備知識無しで観に行って後悔しない作品です。
SEED、鬼滅、ゴールデンカムイ、といった強力な同時期上映作に劣らぬ名作ですので是非時間があればこちらも。
楽に観られメッセージも伝わってくる
ファンタジー物はあまり好みではないけれど、これは素敵な映画だと思った。
メッセージは伝わってくる。
曖昧にせず、勇気を持ってありのままの現実をしっかり見よう。そして、心の広さ、強さを持とう、と。
あまりキレイとは言えない性描写は、現実を見ようという立場においては、欠くことができない。このような赤裸々な描写をしてくれていることを有り難くも思う。
セックスは、良かれ悪かれ人間の大きな現実的要素の一つ。真剣に生きるのなら大きなテーマなのだから。
様々な苦労を経たベラは、清々しく美しく、自信に満ちてカッコいい。同じ女として惹かれる。最後は気持ち良く終わり、元気がもらえる。
部屋や街などの背景も可愛く、冒険ゲームのようなノリも楽しい。癒やし要素があり、台詞もわかりやすい。重くなりがちな内容だけれど、楽に観られる魅力があった。
まさかのR指定
オールタイムベスト級の作品
エンドロールを観てる最中の多幸感がたまらない。
オールタイムベスト級に面白かった!
ヨルゴス監督、そりゃー過去作も好きだけど、ここまでハマるとは思わなかった😂
ヨルゴス監督の天才的で変態的な作家性が、恐ろしいほど昇華された作品。
また、映画で表現できる全ての要素が完璧に近いと思った。
・ストーリー
とある手術で蘇ったベラという女性を軸に、“生と死”という語り尽くされたテーマを独自の作家性で描き、変態要素に笑いつつも、“愛”の形に感動した。
・役者の演技
エマ・ストーンの演技に脱帽した。
大人の女性でありながらも、精神は子供である“ベラ”を見事に演じ切った。子供から自立した大人になっていく過程、その変化を使い分けた演技が凄すぎる。
ゴッドのウィレム・デフォーも演技半端なかったよー😭
・音楽&美術
不穏な音楽、楽しい音楽、そして一つ一つ細部まで鮮やかに描かれた芸術的なシーンの数々。こーいう要素あまり重視しない自分でも感動するレベル。
ちなみに、お気に入りシーンはダンスシーン💃
・変態的な笑い
大好きな要素。普通にやったら下品な要素を芸術的に描くという、変態の高みにいった良質なコメディー。序盤のキュウリから度肝抜かれた。とくにパリ編がすごい。子供達に教えようとする父親が、ほんと気持ち悪くて最高だった!
キャラクターの魅力とか、エンドロールの作り込みとか、良い要素が他にもたくさんあるんだけど、キリがないのでここまでとします!
まだ観てない方はぜひ劇場へ😍
強烈なエログロ哲学
哀れなるものだって生きている
哀れなるものだって成長する
哀れなるものは見た目や職業で差別する
哀れなるものは横暴である
哀れなるものは売春宿に通う
哀れなるものは執着する
哀れなるものは利己的である
哀れなるもの達だらけの世の中
自分は哀れなるものじゃないって思ってない?
成長せずに惰性で日々を生きる人生
自分より劣る人達を蔑んで、小さな社会の枠生きる
それって哀れな人生
自由にやりたい放題で生きながら、成長していくベラの強烈な人生を前に霞んでしまう
そんな感情が湧いた
美しく奇妙な映像と不協和音のもと、哀れなる人間達の織りなす奇妙なエログロまみれの人間模様が哲学的な台詞とともに繰り広げられる
エブエブ以来のぶっ飛び映画だった
エブエブに続きアカデミー獲って欲しい
モンスター映画が観たかった
世界や社会へのメッセージを込めてる訳ではないのに、何か意味ありげなムードだけ漂わせる系の、かなり苦手な部類の映画だった。この監督って前観たやつもそんなだったな、というのを思い出した。
フェミニズム映画みたいなふりをしながら、知識に目覚めた主人公は深い考え無しに無意味な善行をしたり、暴力で束縛してきた相手を同様に隷属させることで支配下に置いたりと、女性が知識を得ても結局愚かだというストーリーにしかなっていないし、真に愚かな者は家族愛や父性というもので免罪されている。そんなに興味ないなら最初からジェンダーをテーマにしている風を装わなければいいのに、とか、エマ・ストーンはこれで良かったのか?と思ってしまった。
役者はみんな良かったが、最初からウィレム・デフォー出てくると、あぁ、ウィレム・デフォーだー、となるし、それでエマ・ストーンが続けて出てくれば、ハリウッド映画だなー、としか思えなくて、映画世界に没入する障壁になっていたし、グラフィックノベル調に作り込んだ画面は世界を戯画化して提示するというよりは世界観の単調さをより強調する役割になっていて、なんだかなーという気分になった。…あれ?観ているあいだはわりと楽しかった気もしたんだが、思い出して書いてるとヤなとこばかり目についてきた。これは多分、モンスター映画とかに興味ないだろうに表層だけ借りていった姿勢が腹立たしいというのがあるんだろうな。やるならちゃんとフェミニズム映画にするか、モンスター映画をやって欲しかったね!
女性の解放
賛否両論?かもしれませんが
R指定
前もってあまり情報入れずに見たのでびっくりした。
もし思春期に見てたら一生忘れないだろう、その位体当たりなセックスシーンが結構な回数あります。
しかもかなりAV的なやつなんで女性で嫌な人もいると思われ、、でもあのセックスシーンが美しい芸術的なものだと確かにおかしい、しかし日本人には刺激が強すぎるかな。
ウィリアムデフォーをプラトーンで観て何十年も経ったけどこの人はどこまで行くんだろう、近年はまともな人間の役をやっているのだろうか?凄すぎる。
主人公が驚異的なスピードで成長していく中で色々重要なセリフがあった筈だが一回見ただけでは理解が追いつきませんでした、、もう一度観てみたい作品ではある。
けどもマイナスは音楽、ちょっと怖かった。
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