哀れなるものたちのレビュー・感想・評価
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強い表現と露悪のバランス
父親、パパ、理解ある彼くんの間を行き来しながら、体当たりで成長していく一人の女性・ベラの物語。
ベラの成長は一個人としての心の成長と、女性が歴史の中で権利を獲得していく姿の両方を描いているのだろう。根っからの善人も根っからの悪人もいない、エゴが軋み合うことでバランスが保たれている世界が、シニカルかつ愛情たっぷりに描かれていた。
メッセージで言えば近年流行りの系譜ではあるが、ぶっ飛んだブレない自己とエゴのパワーとを堂々と押し出す切り口は、舞台設定も含め目を惹いた。
正直、過激な表現を用いることがメッセージに対して効果的かどうかは疑問が残るのだが、その過激な表現も、制作陣がこれまでのフィルモグラフィーの中で信頼関係を深めて来たからこそ実現できたものであるとは感じる。
単体の作品としてだけではなく、チームの一つの到達点としても華々しい作品であることは間違いない。
エンドロールで紹介される、背景美術や小道具に隠された小粋なネタを再度チェックしたいと思った。
かつての映画オタク少年でも...
こんな映画だったとは…
グロいです。エロいです。
グロくて、エロくて、エロくて…。すごいです。
先に見た「ボーはおそれている」も、さりげなく男性器が映っていたが、この映画はその何倍も映っていた。
ファックシーンも何度も出てきて、接合部そのものはないが、かなりの性描写である。
女性器が映ることはないけれど、ぼかしもかからず、ヘアも映る。
いつのまに、日本の映倫は性描写にここまで寛容になったのだろう?
もちろん、そのことは映画の本質と直接関係はないものの、ヒロインのエマ・ストーンが裸、ファックシーンを厭わずにやっていることが映画の迫力、重みにつながっている。
映画館で予告編を見ているときにはまったく想像もしなかった内容だった。
予告だけ見ると、中途半端なファンタジーのようで、どうして高い評価があるのか不思議だったが、オスカーの可能性がある、というので発表前に見ておきたい、と思って足を運んだのだ。
封切りから1カ月半たち、上映劇場、回数もかなり減っているはずだが、平日昼間というのに新宿ピカデリーにはそこそこ客が入っていて驚いた。
これまでも書いてきたが、僕は事前情報をほとんど入れずに映画を見るので、今回は想像もしなかったシーンが多かった。
作品の内容とは無関係に、そういう場面が「出し惜しみ」なく描かれているというのは、演じる側、作る側の根性も座っている、と感じたのだ。
趣里主演の「ほかげ」について、彼女がまったく裸を見せなかったことについて僕は批判的に書いた。彼女が裸にならなかったのは、はっきり言って女優根性がない、と断じたい。
今の時代にこういうと不適切なんだろうが、そう思う。この映画を見ると、なんと日本映画は演じるほうも、作るほうも、ぬるいことをやっているのか、と思う。
かつて、大島渚らが、日本の性表現の制限にあれだけ闘ったのに、今の映画人はどうなっているんだろうか?
未見の人は、早めに行っておいたほうがいいね。
映画「哀れなるものたち」が芸術的で最高すぎた件
とにかく素晴らしかった。
映画はここまで素晴らしくなれるのかとさえ思った。
芸術的であり写実的であり、なおかつドキドキさせてくれる映画だった。
# PG18
なぜこの年齢制限なのかと思ったが残酷な映画ではない。暴力表現がバンバン出てくるわけではない。
ただ手術のシーンがグロテスクなのと、あとは性的なシーンが山ほど出てくる。誰かと一緒に観るより1人の方が観やすい映画だと思う。
# モノクロ
誰もが最初は「フランケンシュタイン」とか「オペラ座の夜」を連想するのではないだろうか。
なにせ顔がズタズタに縫合された男が登場する。そして序盤はなんと、この時代に完全にモノクロの映画なのだ。
白黒時代の映画への多大なるリスペクトを感じた気がした。あの時代の映画のリブートなのだと思った。
# 醜い男と美女
先ほど述べた顔がツギハギだらけの老人と、そして少女のような成人女性のような美女が登場する。
きっとこの醜男に女は囚われているに違いない。誰もがそう思うだろうが真実は違う。
醜い男は父親みたいなもので、女はその子供みたいなものだ。食卓を囲み楽しそうに話すのだった。
だが女は子供のようにしか話せない。男は体に障害があり、女は脳に障害がある。
# 女の秘密
女にはとある秘密がある。最初はまるで1歳児のようなのだが、短い日数のうちに3歳児のようになり、それからもすごい速度で成長して行く。
各年代の役を完全に演じ切るヒロイン。怪演である。
醜い男の秘密最初は「モンスターも普通にいるような世界観なのだろうか」と思ったが違った、
男は子供の頃、科学の進歩のために外科医の父親に実験台にされ、体をズタズタにされたのだ。
# カラー
映画はもちろん白黒だけではなくカラーにもなる。
序盤の現在が白黒で、過去がカラー。そして時間が経つとまたカラー。
特に色の使い分けに意味はなくて、白黒映画時代へのリスペクトをどこかに表したかっただけなのかもしれない。
白黒の世界を抜けてカラーの世界に変わった瞬間はとても鮮烈だった。
# 男女の立場の逆転
女は悪い男に連れられて世界に旅に出る。数々の女を泣かせてきた系の悪い男に。
だがその旅の間にも女の知能は発達し続ける。最初は「俺に惚れるなよ」と言っていた男がだんだんと女に夢中になり立場は逆転する。
そして男の葛藤の中、男と女でのダンスシーンがあるのだが、タイタニックのパーティーのシーンみたいで良かった。
# 後半
全体が長いので後半は少し見疲れてきた。エンディングの後にエンディングがあるような構成なので、もう少し凝縮してくれたらとは思った。
どえらい映画を観てしまった…
それが見終わった後の第一印象。観る前は、まぁ「フランケンシュタイン」のヴァリエーションだなと思っていた。でも、それを乗り越えて想像もつかない展開になってゆき、圧倒された。この難しい役柄に真っ裸も厭わず、体当たりでぶつかったエマ・ストーンに拍手! 元ネタと徹底的に違うのは、醜くない。創造者に愛されている。名前もある。やっぱり、それってすごく重要なことなんだろうなと改めて思った。だから、その後の展開もまるっきり違ってくる。ベラの本能のままに行動する姿に唖然とする自分がいた。現実的には絶対無理そうなのに、軽々と進んでゆくベラにもう応援するしかできなかった。映画はどんな終幕を迎えるのか、想像しながら観ていたが、思いもよらない結末を迎えて、呆然とするしかなかった。ベラの肩を強調したドレスは何を意味していたのだろうか。私にはわからなかった。
キメラがいっぱい
人間について探究する壮大な「旅」
スチームパンク、ゴシックホラー、そして子どもの絵本のようなファンシーな世界観などを縦横無尽に横断しながら、
文字通り「旅」をするように”人間”という生き物について観察するような体験をさせてくれる映画でした
壮大な人間讃歌として素晴らしい傑作
肉体、感覚的な探究から思考の世界へ、そしてそこから社会や他者との在り方についてと、自らの好奇心を満たす要素の成熟過程を辿っていく様が個人的には白眉。
絵作りも素晴らしく
モノクロで始まったと思えば、
極彩色かつコントラストバキバキの圧力強い絵作りへ、
ラストに向かう頃にはノイズと調和したような淡さが出てくるところまで、
とても幅広い色彩の振れ幅。
さらに独創的な背景、道具に乗り物、建築や衣装まで、
とにかく視覚的にビビッドな刺激が満載
また、過激な表現を惜しまずに曝け出し、R18指定の作品。
それはまるで大人向けの絵本を見ているよう。
人体の解剖シーンや人体手術、そして性描写までがボカシやごまかしも無く真正面から描かれているが、
不思議と露悪的なグロや官能的なエロを感じさせる事はありませんでした。
人間についての好奇心や探究心へのワクワクが常に根底にあるような、そんな感覚。
基本的にはずっと笑える映画です
もう哀れな人々の可笑しさの乱れ打ちに笑いの連続です
世界一汚いシャボン玉みたいなのが出てくるシーンなんかは、最後まで説明がないあたりがマジで最高でした。
マークラファロ演じるダンカンは最後まで本当にしょーもなくて、大好きでした笑
シーンの繋ぎやテンポも軽やか、そしてラストにはカタルシスもある。
その為140分超のコッテリとした映画にも関わらず、鑑賞後の気分は爽やか。
壮大な冒険の旅を経て
今まで慣習的に使っていた”人間らしさ”って言葉を考え直したくなる。
そんなきっかけになった映画でした
難解な大人のおとぎばなし
哀れなのは誰?
美しくあれと求める哀れなるものたち。
彼女はひたすらに純粋で、ただただ知りたいという欲求のみを抱いて旅に出る。
思考も言動も、およそ人間的ではない彼女だからこそ、そこには穢れなき美しさが存在する。まるで人形や犬や子供のような、いわば押井守的な美的感覚を醸し出しているのである。
そんな美しさを求める人間たちに対して、彼女は全く意にも介さず、さらなる知識をもとめ、より人間らしくなっていく。
自由意志の名のもとに、その変化は許されてしかるべき行為ではあるのものの、普通になることが是が非か未だ結論を出せないでいる。
純粋無垢な人が歩む人生譚としてはフォレスト・ガンプでいい。無垢であ...
熱烈ジャンプ!
めちゃくちゃだけど、自己啓発映画でもあるんだよな
興味深かった。
映画館にて鑑賞しました。
タイトルに惹かれて前情報なしで見に行きました。アカデミー賞の複数の部門にノミネートされている作品だと映画が始まる前のCMで知りました。
最初は色無しから始まり、旅に出たところから色が付き始める演出であったり、現実なのか幻想なのか若干不安になるような街並みや色合いに独特な世界観を感じました。この監督さんの世界観なのかもしれませんが、現実味をちょっと薄めることで「ここで描いているのは現実じゃないんですよ」という言い訳をギリギリなところでしているようにも感じました。
大人の女性の体に、その女性が身ごもっていた胎児の脳を移植して観察するというのは、とてつもないマッドサイエンティストな発想で設定自体にはかなり驚きましたが、彼女の成長過程はシミュレーションゲームを見ているような感覚にもなり、個人的には興味深かったです。
この映画はこの結末を見せたかったのでしょうか。結末に至る過程を見せたかったのでしょうか。表現しづらいのですが、映画のあのラストはあの過程を経ての結果として良かったのでしょうか。
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