哀れなるものたちのレビュー・感想・評価
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我々は“もの”ではないと宣言する艶笑スチームパンク
女性の主体性の獲得と、それを阻む家父長制社会を描き、我々は“もの”ではないと宣言する艶笑スチームパンク。
マッドサイエンティストに自分の赤ん坊の脳を移植され、無理やり生まれ変わらされた主人公。彼女が主体的に性に目覚め、知識を得て、生活をたて、世界を改善しようとする過程を通じて、女性を都合の良い“もの”として扱う家父長制社会の搾取構造があぶり出される。
主人公の主体確立の過程で、一度は戯画的なものとして笑われ退けられた“有害な男らしさ”が、「現実はそうじゃねんだよ」とばかりに、暴力を伴って再度立ち現れてくる展開には戦慄を覚えた。
主人公の成長に合わせた歩き方の演出や、色彩設計も見事。
あえてローファイにすることで作り物感や表現主義感を増した美術も印象的だった。
2024年ベストムービー!⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️✨✨
観る側の「性や差別に対する寛容さ」が問われている…そんなテーマの作品でした。
…なんて難しいことは考えなくとも、煌びやかな映像体験ができること必至の作品です!
超オススメ!笑
*今度は大きな劇場でもう1回観てみたいな…。
お金のかかったカリカチュア
男性が作ったルールや価値観を女性が壊して新しい道を切り開いていくっていうのがこの作品のテーマだと思うんだけど(実はディズニーのWishと全く同じ)、閉じ込めたり束縛したり罵ったり嫉妬したり割礼しようとしたりでここまでの世界の歴史が女性に対してやってきたことをおとぎ話みたいな映像とエマ・ストーンの演技で表現し切ってて素晴らしい!と言いたいとこだけど結局目線は男性だから性に奔放な女はけしからん!とか娼館で稼ぐ女は売女だ!みたいなトキシック・マスキュリニティがちらちら表に出てしまうのは、まだまだ世界が変わりゆく前ということなのかしらね?出てくる男たちすべてがわりと女の人のことを私物化しようとしてて(とはいえ三擦り半が爆笑ポイントなのは世界共通!)、かわいいおんなはトロフィーではないんだよなあ…などと考えさせられたり。とはいえ今年まだ1ヶ月も経ってないけどベスト候補のわけわからんすごい映画を見てしまったという印象になってるのは、文字通り世界を知ることでしっかり地に足をつけて歩き出し目に輝きが戻って話す言葉がロジカルになっていくエマ・ストーンの怪演のインパクトと美術と劇伴の凄さのバランスなんだと思った。一方で意味のない覗き穴のカットとか寄り引きが激しいズームとかぬるっとしたドリーとかは最近あまり見ないのでちょっとダルく感じてしまったかもしれない…。さて、アメリカも内戦に突入したことだし、このあたりから男が作る世界から大きく変わっていくのかな?
ベラの意志、ベラの冒険
自由になりたい!と全身で抗うベラの姿は美しかったです
美術と音楽は最高
物語はうーん…
登場した男性は全員去勢されて終わりエンド。これはイデオロギーの戦いで男性は女性を女性は男性を去勢するしか道はなくこれは後者のパターン、という風景にも見えました。私の価値観がそう見せているのかも
この結末でベラはハッピー?
ベラは世界を善くしたいと思ってたけど
あのあと世界を善くすることはできた?
この物語の哀れなるものたち=男性たちのことなのかな。わらかない
R18+は大正解。18歳未満に見せるor18歳未満が見るものではない
生成AIが吐き出したみたいな風景、服、建築は音楽と相まってとても美しかったです
エンディングのなんとなくるお○○こを想起させる映像の数々はきれいだけど監督なにやってんスか…
この映画はコメディーだったのか!
私はベラ・バクスター 〜 全ての女性達へ
特殊メイクを施したウィレム・デフォー演じる天才外科医ゴドウィンの登場が、観客を奇妙な世界へと誘う。
ゴドウィンと屋敷で暮らす娘ベラをエマ・ストーンが熱演。スラリと美しく伸びた脚、しなやかな身体は若い娘にしか見えない。芯の強さを感じさせるエマ・ストーンの目力は、ベラの個性を印象付ける。
ベラに寄り添う医学生マックスをラミー・ユセフが好演。
『 冒険 』と称した旅に出たベラは、外の世界に触れ、様々な体験する。不躾に語られるベラの言葉には嘘がない。彼女と金銭的に繋がる男性達が皆滑稽に描かれ、笑いを誘う。或る日、辛い現実を目にした彼女は悲しみに暮れるが、しっかりと前を向く。
エマ・ストーンの演技に対する熱量と女優魂に圧倒された。
時に哲学的な台詞も有り、一冊の本を読み終えたような感覚に。
全世界の女性達へのエールにも感じた。
ー人は残酷な獣
映画館での鑑賞
初っ端のベラの幼児っぷり、動きのぎこちなさエマストーンの芸達者ぶり...
人間の生態
前半ブラックユーモアで進んでく感じはバーホーベンぽいと思ったし、中盤から話が重くなり、あまりに公平、フラットで偽善を嫌う俯瞰した視点はザラーっぽい。単に生き物として人間の生態を見てく感じは現実を描いてるなと思ったが、最後フリークスかよ!ってツッコミそうになった。人間観察が趣味の人にはオススメの作品。
以下ネタバレ!!!
科学だアップデートだとかって異種をくっつけてしまう様な不自然で倫理に反したグロテスクな事。それでも人間だから完全なる存在、神にはなれない。俯瞰しきれず情が湧いてしまうのも人間。不完全であるから。
精神年齢が低いからすぐ感情のまま誘導されてしまう。自由意志の尊重みたいな甘い言葉にコロッと引っかかる。実はその後ろで手を引いてるのは脂ぎったオヤジってのもリアルだったし、善意の募金は悪人に奪われるのも全て現実を描いてるなと思った。
主要人物全員が主人公に執着しており、それぞれの執着の仕方がよく描かれていて面白い。価値観は人間が勝手に作り出したもので自然にとっては無関係な事。
科学者には実験であり神(創造主)視点からのつもりだったけど結局は神になりきれず情が湧いてしまう。
どの執着の視点で見るかで評価も分かれそう。
個人的には全部あるなと思った。
お伽話は戒めであって自分にもこういう部分があると認識しながら見るのが良い。
見ている人が男性か女性かで主人公か、彼女に関わる男性のどれかに感情移入しがちだが、もう1つの神の視点、全体像で見る映画だと思う。そうすると主人公も含め全員哀れな人達になる。
動物は一歩外へ出たら生きるか死ぬかしか無い状況だが、人間はそうではないので生死と関係のないエゴや感情があり不完全であるから調和していくには何事にも妥協が必要。
主人公はタオイストの様な執着の無さ、完全なる自然体、神であるから人間は敵わない。
1度死んで本当の意味でバージョンアップした生物。
普通の人間はアップデートは出来ないし感情から来る執着が湧いてきてしまう。博士がそうだったように。
ロボコップみたいなもんで魂がない。超越した存在で人間とは別の生き物。どう捉えようと見た人の勝手だがここだけは間違いない。
でもこうやって生きられたら強いよねと思うのもいいでしょう。
エンディングでズラっと全員揃った絵は良いとか悪いとか言ってる訳ではなく、ブラックなユーモアもこめてこれで健全に思う?思わない?あなたはどう思う?と問われている様に感じた。だってあれ、唯一の肉親でしょ?
魂の無いロボコップから、知識が蓄積しても感情表現は動物や子供と同じ純粋なままで理性を伴った感情の起伏はなかった彼女が己の意志でいろいろ飲み込んだ上でのルールを破棄するくらい一度だけ人間としての倫理観に目覚めたか心を動かされた相手だよ?あのラストを単純にカタルシスに受け取ってしまうのは浅はか。
こういった人達にそう思わせてしまう作りがまた狡猾なんだけど…
本当のメッセージはこれだと思う。
よく考えろよ?相手が間違ってたら何やってもいいんですか?自分の自由の為に人の自由を奪ったり、自分の方が優位になりたい欲求は矛盾してませんか?
これはベネデッタのラストであなたはまだ子供ね!って一言を彷彿とさせる。理想だけでなく現実も見ないと、世の中はグレーなバランスで成り立ってるのよ?って。
科学の進歩に関して遺伝子をいじったりするのは優生学と深い繋がりを感じる。それは人が手を出していい領域じゃない。
あなたが誰かからけしからん人間と認定された時、ロボトミーされる事を容認できますか?
タブーを超えていく壊していく事でしか先に進む事が出来ないのが人間とは言えると思う。
常にグロテスクなニュアンスが散りばめられてる。
偏らず全てが陰陽の関係性。敢えて露悪的に邪悪とピュア、汚さ美しさ全て対比して描かれているし重層的な物語。
ベースはフランケンシュタインとフリークスを混ぜた様な話。
エロに関して。
エロさは全くの皆無で嫌悪感すらある。キモい…
この感覚はストーリーがほぼないのに必然性のないゴア描写だけがやたら気合い入ってるスプラッター映画をみた時の様なキモさがある。これも敢えてなんだと思いました。ここまでやる必然性を考えてみてください。
変化を恐るる勿れ
作品を通して女性の権利の歴史を見ているようだと感じた。
無垢で純粋な女性像を男性に押し付けられる。
言葉を知り、自我に目覚めて世の中を知る。
性について体感し、他者の価値観を知る。
物事の表裏を見て、絶望を味わう。
己を知り、自由意志を獲得する。
終始、気持ち悪いなぁ。と感じながら鑑賞していた。
気持ち悪いと感じた原因は、ベラに対して対等に話をする異性がいないこと。
女性は男性に庇護と管理される存在であるべきだと言う社会通念が事あるごとに描き出される。
男性にとって、無垢で哀れで扱いやすい女性。
男性の三歩後ろを歩くのが素晴らしいとされていた女性が描かれる。
セックスを目的とした、搾取しても良い存在の哀れな女性。
容姿端麗でルックスを武器に男性に媚を売るファムファタール的なセックスシンボル的な女性が描かれる。
主人公のベラを通して、その時代に求められていた女性像が描かれている。
無垢で純粋な女性であった時の序盤のベラと物語も中盤に差し掛かった頃の本を読み、知識を身につけたベラの表情や考え方はまるっきり違ってくる。
井の中の蛙大海を知らず。
世の中に出た事で初めて自分の立ち位置に気づいていく。
無一文でパリに着いた後は娼館で体を売って生計を立てる。
結局、男性に求められ、選ばれる場所にいる方がお金は安易に稼げてしまう。
ダンカンに売女と罵られても、自分の体でお金を稼いでいると言い放つベラは潔い。
ロンドンに戻ってから、自分の生い立ちを知った後もベラの変化は続き、最終的には自分の行く末を決めることのできる立ち位置までやってきて幕引きとなる。
人は変化していく生き物である。
自身の変化だけではなく、時代の価値観も変化している。
何事も前向きに捉えて肯定的に物事を吸収していく柔軟性を持ち合わせていくことが、生き物としての次のステップに足を踏み入れることになるかもしれない。
独特の世界ですね
アカデミー賞にノミネートされている話題作ということで早速鑑賞してきました。ヨルゴス・ランティモス監督作品を観るのは初めてです。エマ・ストーンがアカデミー主演女優賞にノミネート。
見終わった感想はというと、力作ですが好みかと問われると答えに詰まります。グロいシーンや性交場面が多く、これがアカデミー賞ノミネート??と途中までは感じました。
ベラは赤ちゃんの脳を移植された大人の女性という設定なので、純粋過ぎて下品だと感じる部分もありますが、そもそも人間の本音は下品なのかもしれません。社会を形成する上で人間関係を円滑にするために本心を包み隠し、嫌なことでも我慢して皆生きてる訳です。
性交シーンがこれでもかと多いのはそれが人間を形成する大きな欲望だからなのかもしれません。欲望を満たし女を支配しようとする男たち。しかしベラは肉欲を満たしながらも、男に支配されるのではなく、真の自由を望み身体を張って生きていく。
映画を見る前はベラがいろんな冒険や経験をして成長していくのかと思いきや性の部分に多くスポットがあてられその描写が多く、ベラが性交を通じて男を知り、そして女を知るのがなんだか男の視点で見ると考えさせられるものがありました。描写は割と奔放に描かれてるのでいやらしさはあまりありませんが下品だと思う方もいるでしょう。
結局は、男と女は性交で結ばれますが、男女の結びつきにはもっと重要な事があるとこの作品は言ってる気がします。本当の意味での女性の自由がなければならないと。
ラストで元の夫が登場してからも面白かったのですが、正直にいうと上映時間がちょっと長く感じました。
追伸:ウィレム・デフォーも歳をとって立派な役者になりましたねえ。ストリート・オブ・ファイヤーのときはまさかこんな演技派俳優になるとは想像できませんでした。
(๑˃̵ᴗ˂̵)史上最大の勘違いを犯しました。
成長記録的な
オスカーレースで話題だからといって、絶対に初デートやファミリーとの鑑賞で選んではいけない作品、だと思います
ん〜、昨年の「エブエブ」みたいに、またもやオスカーレースを騒がすトンデモ作品が登場・・・
観た直後の第一印象は“いろんな意味でなかなかの変態ぶり”
今年のオスカーレースで「オッペンハイマー」と本命視をがっぷり二分するノミネーション作品ですが、明らかに一般向けではないですね
オスカーレースで話題だからといって、絶対に初デートやファミリーとの鑑賞で選んではいけない作品
途中退場も数人いました
作品のテイストは好きです
緻密に計算され作り込まれた見事な画づくり、独特の色彩タッチ、画面の端が大きく歪んだ映像と通常の映像の意味付けされているであろう切り替わり等々、直ぐにヨルゴス・ランティモス監督作品と分かる上質な映像表現は興味深かったです
特に前半のモノクロ映像と継ぎ接ぎだらけの醜悪なメイクをしたウィレム・デフォーさん演じる科学者のシーンは昔のフランケンシュタイン映画みたいで、とても雰囲気があって良かったです
そして本作のもう一つの見どころは、何と言ってもエマ・ストーンさん
全編にわたって彼女のフルヌードやセックスシーンがこれでもかってぐらいあります
こんな役、超ビッグネームの彼女がよく受けたなと思いましたが、彼女はプロデューサーも兼ねてますから自主的にやったんですよね、感心します
そして前半のまだ脳が幼少期の頃を演じる彼女がとても不気味
不気味なキャラクターが自由を手にし広い世界に放たれ、性に目覚め、しまいにゃ娼婦になり、最後はシュッとした知性を覗かせるクールビューティになる、というとんでもなく難しい役をやりきった事を考えると、エマさんがこの役でアカデミー主演女優賞(Academy award for Best Actress)にノミネーションされるのも納得ではあります
そしてもう1人、ウィリアム・デフォーさんのマッドサイエンティストっぷりが素晴しい!
特にモノクロ画面であの継ぎ接ぎだらけのフランケンシュタインみたいなバストアップ映像が出るたびに痺れました、正式にはノミネートもされてませんが、私の中ではオスカー・助演男優賞受賞です(笑)!
最後に解らず気になっている点をいくつか
・穴から覗いている様な映像が意味するものはどういう意味の表現か?
・モノクロ映像とカラー映像の違いは何か?
・冒頭にも記載した、フィッシュアイレンズで撮ったような画面端が大きく歪んだ映像と通常の映像の切り替わりの意味するものは何か?
と、かなり賛否が分かれると共に、ちょっとクセになる作品だと思いました
無垢な魂と性
2023年。ヨルゴス・ランティモス監督。自殺した妊婦を、そのお腹の中の胎児の脳を移植することで助けつつ自らの実験にもしようとした医師。大人の身体を持ちながら未熟な脳を持ったその女性は、みるみるうちに成長していくが、次第に性の世界に取り込まれていく、という話。
言語や社会の知識を驚くべきスピードで吸収していく無垢な魂の物語。彼女の感覚を追体験することで、常識を捨ててみれば、この世の中は理不尽なことだらけだということがよくわかる。身体の要求や科学的な合理性に従って実験的に生きていく主人公。その最大の問題が「性」であり、主人公は自身の(移植以前の、を含む)性をつきつめていく。
不思議な光、街や風景のビビットで不気味な色彩は幼い子どもに感得される現実の風景なのかもしれない。エマ・ストーンのただたどしい動きと合わせて奇妙に独特なイメージだった。ただし、恋に関わる場面は、穏やかに歩きながら話す湖の水辺だったり、上と下の格差が生まれる二階のバルコニーだったり、閉じ込める場所としての海上の船だったりする。そういう意味では定型にそった演出であり、安心安全な映画。
全く共感できない
気持ち悪いけど凄いとは思う!
性描写の許容度は人それぞれ。私の場合はかなり駄目な方です。
若い頃からずっとそうなので、肯定的に受け入れられない理由が自分自身にあるのでしょう。今回は、しばらく胃腸が悪かったせいもあり、観た後ずっと気持ち悪くて…夜中に嘔吐しました(笑)
エマ・ストーンは、あんなに頑張らなくてはいけなかったのだろうか?
何かもっと他にアプローチがあったのではないか?
性描写に引っ張られて、そればかり記憶に残ってしまう。
…見終わった後も、やや疑問が残ります。
それでも「観なければ良かった」と思わないのが自分でも不思議です。
全体を通して、ベラの前向きな生きるエネルギー、成長したいという欲望が猛烈に迫ってきて、圧倒されました。
あと、着地点のおかげで、鑑賞後感は良かったです。
テーマも美術も世界観も、特に衣装は可愛くて素晴らしく、楽しめた部分が多いことは事実。
好きにはなれませんが、すごい作品であることは認めます。
未見の方はぜひ挑戦してみてほしいと思います。
大人のお伽話
エマ・ストーン、ウィレム・デフォーが素晴らしい ダーク・ファンタジー・ホラーのテイストで描かれる自由と解放の物語
女性だけでなく、古い価値観などの圧力からの解放と自由の物語。
その手法は、ウェルメイドの優しさではなく、現実的で即物的で悪魔的な側面を持って描かれる。
まさに、ダーク・ファンタジー・ホラー!
自殺した若い女性が、天才外科医ゴッドウィン・バクスターの手術により、ベラ・バクスターとして奇跡的に生き返る。
「外の広い世界を自由に見たい」という欲望を叶えるため、弁護士ダンカンに連れ出され大陸横断旅行に出たベラは、様々な経験を通して、世界の非情や自由を経験するのだった。
物語は終盤で、ハッピー・エンドを一度思わせて、そこから驚きの展開を経て、グロテスクな面を加えていく。
何といっても、製作も兼ねる主演のエマ・ストーンによる、演技が凄い。
ヌードや体当たりのシーンに限らず、成熟した体をもちながら、新しい知識・発見を次々に重ねていき成長していく女性を見事に演じています。
コミカルで独特な体の動きが粗暴でキュートで癖になる。
そして、ウィレム・デフォー(大好き!)演じる生みの親のゴッドの、やはり医師だった父親から受けていた仕打ち、手術では常に「慈悲の愛」をもってナイフを入れるようにと言われていた話など、独特の親子関係、ベラとの親子愛も印象的。
旅先の各地の、極彩色でファンタジックな風景、レストランや豪華客船、ブリッジ的に挿入される幻想的なアイキャッチなどの美術、キッチュで愛らしい個性的な音楽も素晴らしい。サントラ出ないのだろうか!
凡庸な表現ですが、本作は本当に、142分を全く長いと思わなかった!
不協和音な寓話
予告編でエマ・ストーンとウィレム・デフォー、マーク・ラファロが出てて、
見た感じジャン=ピエール・ジュネのロスト・チルドレンぽいので、期待して観に行く。
期待してたのではありませんでした。
以降、あくまで私的感想なので、
この映画をお好きな方は、ごめんなさい。
変種のフランケンシュタイン物で、
幼児の脳を持つ主人公が、自立した女性になる話で、所謂フェミニズムの映画の様で、パンフレットのコラムもそれを謳ったものが掲載されてますが、ラストシーンのシチュエーションの性別を入れ替えてもわかる様に、ソレさえも嘲笑っている様な気がしました。
ラストで主人公は、都合の良い夫、肯定し続けてくれる友人、従属関係だけの使用人、奇異な実験動物、復讐の成れの果ての山羊に囲まれて、微笑むのですが、それらを含めてPoor Thingsなのでしょう。
観るきっかけとなった映像も、確かに色んな様式のごった煮の美術や衣装を使い、ある世界感を構築しようとしてる風ですが、
パッチワークの様で作者のアクというか、美意識の様なモノが感じられず、浅い上澄みの世界感だと思いました。
こう言う絵作りは、印象的なシーンが必ず残る物ですが、私には残りませんでした。
強いていえば、術後の主人公の目覚めるシーンで、これもラング作メトロポリスのアンドロイドマリアのシーンの引用でしかなく、雰囲気だけのものでした。
悪趣味な所まで昇華される事もない、平坦なアートの羅列の様に感じました。
唐突に意図が感じられない広角レンズに視点が変わるのは、歪んだ世界の描写として成功してるとは、私は思えなかったです。
その視点が気になってノイズとなって、疑問のまま見続けたのですが、あるシーンで音響が、執拗に不協和音を奏でる所で、この映画の意図を理解した気がしました。
エロスもグロテスクも装いだけで、
根源的なものに迫る訳でもなく、
音響も映像も不協和音で綴り、
描かれた物語もフェミニズムを謳う様で嘲笑う、ニヒリズムにはちょっと乗れないなぁと。
作者のニヒリズムは、まるで観客も含めて、
お気の毒さま(Poor Things)と言われてるみたいで。
なので私は、この作者の立ち位置が不快です。
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