哀れなるものたちのレビュー・感想・評価
全664件中、381~400件目を表示
また「女はイノセンス/男は醜悪」系映画ですか
去年『バービー』でも思ったことだけど、この手のいわゆる"フェミニズム映画"に出てくる女性ってみんな善玉で、一方的に搾取したり束縛したり型にはめようとする悪玉はいつも男性な気がします。でもそれって本来、性別に依存する問題じゃないと思うんです。
もちろん、男性が女性に強いてきた事例の方が多いのは事実だと思うんですけど、やはりあそこまで悪玉が男性に偏ると、どうしても「男はみんなろくでなし」のように受け止めてしまいます。
この極端な構図は、20年前なら「これくらい言わないと分かんないもんな!」と僕も思えたと思います。だけど、例えば去年『TAR/ター』では「結局お前おじさんと一緒やないか」というケイト・ブランシェットを見せられました。搾取構造は性別に起因するものではないと思うのです。
また、一昨年『ドント・ウォーリー・ダーリン』では「女は家にいろ」という男の理想をホラーとして描いていましたが、進んで専業主婦になる女性もいれば搾取構造を支える女性もいました。「男vs女」という単純な構図から脱却した時代になったのだと思いました。
だからこそ『バービー』での「男ってこういうところあるよね」という挑発的な描かれ方や、今作における「男にしか出現しない独占欲とプライド」には「未だに個人の問題を性別に起因しているような描き方をするのか」と辛い気持ちになりました。
女性版アルジャーノンか
胸焼けするダークファンタジー
エマ・ストーンの体当たりの演技で良しとしよう
衝撃! 色々な意味で
映画賞でも話題の本作だが、エマ・ストーンが数いるハリウッド女優の中でもお気に入りなので、それだけで楽しみにしていた。
【物語】
ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)は外科医。医学の探求のためには子供をも実験台に使う外科医の父親に育てられ、バクスター自身も何よりも探求を優先する医者となった。結果、天才的な技術と知識を修得したのだった。
バクスターは遺体を引き取り、自宅で解剖して医学探求することが日常だった。あるとき街で美しく若い女性の自殺に遭遇する。遺体を前にしたバクスターは命を失いながらもほとんど損傷していない新鮮な肉体に興奮して持ち帰る。 臨月と思える女性のお腹を見てベクスターあることを思いつく。胎児を取り出し、胎児の脳を女性の脳として移植する。その上で蘇生を試み、奇跡的に成功する。
ベクスターは生き返った女性をベラ(エマ・ストーン)と名付ける。ベラは大人の体でありながら、新生児の脳というアンバランスな人間だったが、言語・歩行・知識等を急速に習得して行った。 バクスターは彼女の成長を研究材料として医学生に日々記録させていた。
あるとき、バクスター邸を訪れた放蕩(ほうとう)者の弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)は美しいベラに魅せられ、一緒に世界を旅して周ろうと誘う。それまで家の外へ出ることを許されていなかったベラには「世界を自分の目で見たい」という強い欲求が生まれており、バクスターの下から出て行ってしまう。
ベラは、旅の中で常識や偏見の無い少女の目線で、人間の欲求、社会的格差、差別、利己等、人・社会が抱える課題・問題を貪欲に学んでいく。
【感想】
いろいろビックりなのだが、一番はエマ・ストーン。
「大胆なシーン」という記事の見出しは目にしていたが、ここまではとは想像していなかった。どんなかは観て確かめて欲しい。
作品の内容的には観方によっては相当深いものなんだと思う。
思考の浅い俺にも感じられたことは、常識や先入観の無い子供の目線で大人社会に入っていった時に見える大人社会の滑稽さ、矛盾、課題といったところ。
まず性を人間の根源的欲求として捉えているかと思う。確かに動物は種を残し、増やすことこそが最大のミッションだと考えればそうかも知れない。
ベラは性を仕事にして生活に必要な金を稼ぐことに何の罪悪感も嫌悪感も無い。「それが何か?」って感じだ。 それも作者が強く言いたいことだったのか? 良く分からないが。
人の身勝手さや社会格差も浮き彫りにされる。
そう思って観れば、様々なシーンに様々な問題提起がありそう。そういう(シーン1つ1つに作者の意図を探す)見方がお好きな方は答え探しをしながら観るのも良いかも。
俺はそういう見方は得意じゃないので、具体例をあまり挙げられないけど。
そしてラストにはぞっとするような怖さも。
原題はPoor thing
今回の邦題は的確なんだと思う。改めて調べてみるとpoorの意味は「貧しい」が最初に浮かぶが「可哀そうな」という意味があるし、thing には「人」の意味で使うこともあるらしい、知らなかった。
「一番哀れな人はて誰?」というのが、観客への問いかけなのかな?
いずれにしても、「ピュアな目で世の中を眺めたら」を作品にするのに、ベラ誕生の設定を考え付いた作者は凄い。凡人にはとても思いつかない発想。
摩訶不思議
ウィレム・デフォーが最高!
言語化するのがもったいないくらいの芸術作品
グロテスクながら幻想的な世界観で「生」を表現していた。
身ごもっていた胎児の脳を移植された女性が、赤子から大人へと成長する過程を描いてる。ただ大人になっただけではなく、アイデンティティや深い思想をもった女性になる過程。
トム・ソーヤーの冒険のように、国から国へと様々な場所を冒険し、様々な人間と出会い学ぶ主人公。新たな世界と出会い、感動したり、快楽に溺れたり、悲しんだり、怒ったり、、、みずみずしい主人公の反応に目を離せなくなる。
老婦人とハリーという異なる思想をもった人達と対話をして影響をうけ、貧富の差の現実や暴力、その他にも風俗店での違和感や社会主義者の女の子との出会いなどを受けて、より自分で考えて自分がなにがしたくてなにをできるのか真剣に思想する女性へ。
恋をする、まだ見ぬ世界への好奇心から奔放な男と付き合う、男がメンヘラ化、風俗店で働いてみる、優しい男との愛に落ち着く、+支配的な男との関わりも…!
と言った具合の、主人公の経験が結構女性あるあるな気がする…!
少なくともこれは、人間として成長していく話でありながら、女性による女性のための話だなぁと思った!
お気に入りは、リスボンのシーン。街は花々に彩られていて美しく、主人公が食や音楽やセックス、見知らなかった新たな世界を貪る様は、「初めて知る生の喜び」という感じがした。
ダンスのシーンが特に好き。野性的で、音楽全てを表現するようなダンス。もう1回みたい。
下からのアングルでリスボンの美しい世界を映すので、自分も一緒に子どもになって世界を見ているような気持ちになった。たぶん彼女が強く感じとった音や視覚情報が強調されるように映されていると思うんだけど、(怒鳴り声や赤子の泣き声など)それも相まって主人公と一心同体のような気持ちで世界を見ることができた。
上を見あげたときに、空を走っている電車が目に入ったときなんて、主人公と一緒に「わぁ〜」と声をあげそうになった!
全編にわたって、重要な要素やメッセージが分かりやすく言語化されているので、芸術的な世界観ながら難解ではないのがよかった。
音楽や映像が本当に良くて、エンドロールの最後まで目が離せなかった!
あとはジョークや笑えるところが、「イギリス!!」って感じの皮肉多めなジョークで私は大好きだった笑
黒ヤギさん移植が痛烈でいっちばん笑った笑
色んな要素が入っていて、立場や視点によって多様な感想がでてくる、本当に魅力的な作品でした!
彼女とララランドのノリで行ったらダメですよ!
auマンデー『哀れなるものたち』
出演者見るとアメコミ好きには、グウェンにグリーンゴブリンにハルクの共演なんですが・・・
奇々怪界な雰囲気漂う予告に、エマ・ストーンが凄い事になってる感が気になってた作品
アカデミー賞でも作品賞、監督賞、主演女優賞ノミネートされてます。
いやぁ、、、昭和親父的には、フランケンシュタインの花嫁の新解釈なのか?って思ってしまう感じで、変な空間に連れ込まれた141分は、観る人選ぶし・・・
エマさん全てを曝け出す女優魂にただただ唖然とします。
こりゃアカデミー賞獲るでしょう!
彼女や奥さんと、ララランドの彼女をイメージして行くとヤバいので要注意!!
結局男目線なのかしらね
傑作!怪作!破天荒!
哀れなるものたちとは
ストーリー、世界観、美的センス、最高。
Stay foolish
アカデミー賞最有力候補という売り込みで日本に早めに来てくれたので鑑賞。でかいスクリーンで観れたのは良い収穫でした。
かなり人を選ぶ作品だなと思いました。面白いところと置いてけぼりにされるところがあり、トータルでは面白かったなぁって感じになりました。
入水自殺をした女性の脳と胎児の脳を入れ替えて、逆コナン君状態になってしまったベラの成長物語だなぁと最初は思っていましたが、成長を超える形成の物語になっていたのには驚かされました。
初っ端キメラ動物が出てきて、この手の動物が好きな自分としてはテンションが上がりました。犬鶏ってあんな不気味なんだ…。
刺激的な性描写ということで、結構激しめなプレイが多いのかなと思いましたが、刺激的っちゃ刺激的ですがなぜか笑えるものになっていたのが不思議でした。性行為を何も知らない状態でベラが全て体験していくので、超楽しそうにプレイをしていく様子が面白かったです。
傲慢な男性がよく出てきますが、それと対比して誠実な男性も出てくるので、そこのバランスがちょうど良く、男性の悪ばかり描く作品や製作陣たちへの皮肉だなぁとニヤッとしてしまいました。
偏見など何も知らずに育てられて、親の手を離れて真っ白な状態から色付けされて、それが綺麗な色でもあり、汚い色にもなる、そうやって自分の個性が生まれていくというありそうであまり観たことなかった0から1の成長して主体性を掴むという終わり方まで痺れさせられました。
脳内は赤ん坊、体は大人の女性という漫画的設定の難役をやり切ったエマ・ストーンは素晴らしすぎました。
不器用な歩き方やワガママな素振り、感情の制御が効かずに暴れ回る様子にゾクゾクさせられますし、初体験を脳が子供の状態で知るという前代未聞なシーンもこれでもかってくらい演じられていましたし、そこからアクセル全開で体験していく様子は爆笑もんでした。成長して脳が体に追いついてからの立ち振る舞いは前半に観ていた人と同じなのかってくらい演技が違うものだったので、度肝を抜かれました。
まだ公開されてない作品もあるので大きな声では言えませんが、今年のアカデミー賞の主演女優賞はエマ・ストーンに取ってほしいなと思いました。
マーク・ラファロは子供の脳のベラと成長したベラにとんでもないぐらい振り回されるこれまた難役をSEX交え見事にやり切っていました。この方の慌てふためく様子はキャラクターの傲慢さも相まって痛快でした。
服装のバリエーションの豊富さだったり、建物のレトロな雰囲気だったり、空の不思議な明るさだったりと、キャラクター以外にも色々と目に入るものが多かったので、そのシーンがあるたびにワクワクしていた自分がいました。
画面内の情報量は半端じゃなく、その世界観や美術に見惚れながら2時間半あっという間に過ぎ去っていきました。2回目観て考察を深めるというのも面白そうだなと思いました。
苦手かもなと思っていたところに、皮肉たっぷり独創性満載の作品に仕上がっていて面白かったです。監督の次回作にも期待したいです。
鑑賞日 1/27
鑑賞時間 12:40〜15:15
座席 R-35
実はクリの話である
大人の体を手に入れた赤子の成長を通じて特に女性解放を描いた映画、などと言われる。
この、女性解放がテーマだとかいうのは実はフェイクだと思う。
見続けるにつれ当初期待していた内容からは外れていくので、多くの人は頭が混乱してしまうんだと思うけど、実は見方を変えれば単純な話になっている。
食卓で卓上のフルーツを膣に入れて幸せを手に入れるシーン。
その後ダンカンの最高の性技で熱烈ジャンプの虜になるシーン。
売春宿で3回擦っただけでイってしまうダンディ。
熱烈ジャンプのダンカンが会いに来ても何の興味も示さないシーン
同僚の黒人娼婦にclitorisをなめられてくつろぐシーン。
clitorisを切除しようとした将軍にブチ切れてヤギにするシーン。
黒人娼婦を呼び寄せて暮らすシーン。
これらからわかることは、ベラが最も大切にしているのはclitorisであること。
clitorisこそ女性の象徴であり最も気持ちよくなれるものと位置付けていて、penisには興味を失っているようだ。
ベラはナカ派からクリ派へと転向したということなんだろう。
もしかするとやっとの思いで結婚したマックスだが、内もものやわらかを見ていない可能性すらある。
clitorisをひたすらに称賛するこの特殊なテーマの本作、果たしてどれほどの女性の共感を得られているのだろうか。
アンモラルな始まりでも
Poor Things
自分が世界を見せてあげると言って、実際に影響を受けて変わると、ある人は自分の手から離れていくのに耐えられないと咽ぶ。大人の身体に子供の脳という設定が、(振り回す立場としても)絶妙なのだろう。
世界では生活困窮者は熱射を前にして、理性を失い子供も虐待する。使用人たちは銃口の脅しに逆らえず、弄り芸の演者を続ける。
傍観していても、その立場に成り代わったなら加害者でも被害者でも、そのまま自分を当てはめる他ないと。それに対して、アンモラルな出生でも、生命自体は魅力的だと。人の可能性を檻に閉じ込めないよう、進歩できるかどうかを問うている
哀れなるものたち
哀れなるものたち
最高だった。
心を揺さぶるものって感動とか、感情移入とかじゃなくてもできるんだと知った。何か見てはいけないものを見ているような、見たくないものに目をそめたくなるような体験。人が人の形をしていなかったり、人間のあるべき姿ではない何か奇怪なものは、気味が悪く、かわいそうに映る。そういういけないものを見ている背徳感は、人間の重要な感情なのだ。だからこそ、ベラの周囲の人たちは平気でいられるのだ。だからこそ、哀れなるものたちなのだ。
①『生の感情』はあったか
おそらくこの映画で1番重要なのがこれ。胎児のような頭脳を持ち大人の体をあやつる、いわゆる「逆コナンくん」のベラは、まさに生の感情の権化。全ての意思表示が生の感情であり、それを抑える術を持たぬ。だからこそ純粋で、愛しく思えてくる。やはり我々観客は、生の感情が爆発するものに共感を覚え、この世界の社会的抑圧から解放されることを願っているのだろう。
②緊張感はあったか
特段、特筆するような緊張感のあるシーンはなかったように思える。それがこの映画がエンタメでない理由だろう。もっとエンタメ性を出すのであれば、ベラの行動がきっかけで命の危険に晒されたり、誰かを殺してしまいそうになったりするが、どちらかというとこの作品はそういう緊張感のあるシーンすらもコミカルに描いている感じがした。だからこそ、ベラに対して嫌な印象を持たず、終始感情移入できたのだろう。
③「謎」はあったか
これはなかった。ほぼなかったと言っていい。この作品は、1人の人物を追っていく物語で、ベラという少女の成長を追っていく物語だった。不必要な要素だと思う。
成人女性の体に胎児の脳を移植して誕生した、見た目は大人で頭脳は子供の少女、ベラ。彼女は、子供ならではの自由奔放さから、ベラを創生した父親代わりのゴッドに半ば監禁されていた。
その事実を知った遊び人のダンカンは、ベラをリスボンに連れ出し、外の世界の冒険をさせる。ベラはそこで出会うさまざまな人間や世界に触れ、だんだんと成長をしていく。しかし、まだ未成熟の彼女の行動により、ダンカンと共に破産し、パリに置き去りになってしまう。
そこで彼女は、自身の性的好奇心と金銭的危機を考え、娼婦になることを自ら決める。
そうした中、ゴッドの危篤を知り、帰ってくるベラ。そこで彼女は、自らの出生の真相を知り、やがてゴッドが死ぬと、医者になることを決意するのであった。
全664件中、381~400件目を表示