「カオスからコスモス?へ」哀れなるものたち えさんの映画レビュー(感想・評価)
カオスからコスモス?へ
ニュアンスが合っているか、この表現が合っているのか分からないし仰々し過ぎる気もするが、取り敢えず全体を通してカオス(混沌)からコスモス(秩序)へ段々と散らばったものが収縮していくという印象を受けた。もっとシンプルに入口が広くて出口は狭い、みたいな漏斗のような雰囲気に近いかも笑
冒頭から映像表現が素晴らしく、色使いや構図、撮影方法、カメラの動きなどあらゆるシーンに工夫が合って素晴らしかった。
ただし前半は正直とにかくシュールで、ついて行けそうにないな。うん。といった感じで観ていた。トップ女優がシュールで芸術的な映画の為に身体を張ってます的なやつか。と早速結論づけてしまいそうだった。
後から思うとわざとか?と思ったが、ベラがダンカンと旅に出てモノクロからカラーになった後から急激に話が入ってくるようになり、面白くなってくる。
街を探検し色々なものを観て、「体験」し、「成長」していくベラ。ダンカンに指導を受けながら、失敗しながら外の世界との関わりを覚えていく。
そして船に乗ったあたりから一気に思想的な成長を遂げ、さらに貧困を知り、世の中は本の中の理想だけではない現実も知ることになる。
パリに放流され、娼館で働き様々な男女と関わり、金を手にして文化や医学にも触れ、気がつけばどうだろう。あれほど散らばっていたものが一つの、しかも綺麗な球体として完成されていた。
あれ?なんかこの映画実はめちゃくちゃまとまってるじゃん。と理解できると諸手を挙げて「凄い映画だ。」と感じることができた。
気になった点。ベラの正体というか仕掛けは確かに面白い。が、無垢な状態の女性主人公が歩んでいく道筋としては、性への目覚めや、男から(ダンカン)の扱われ方やレストランでのはしたない事を言ったりするコメディ?や金が必要で娼館で働くなど、大方予想できるラインでやや面白味には欠ける。
終盤のある種「気高さ」のある彼女へ至る為にはその対比として必要な部分だったのかもしれないが。
あと自身の正体とそれを作ったゴドウィン(博士 フランケン)に対し「流石にそれは許せない」と言っていた彼女が、元夫の脳をヤギにしてしまったのは、ちょっとよく分からない。結局彼女もその許せないゴドウィンの様なマッドサイエンティストになってしまっているのはどうなのかな?元夫は確かにクズたけど。
ややツッコミたい所も感じるが、いずれにしても評価せざるを得ないという出来だったと思う。