「倫理観が捨て去られた、最高に狂気に溢れた作品」哀れなるものたち アッキーさんの映画レビュー(感想・評価)
倫理観が捨て去られた、最高に狂気に溢れた作品
前もって、私は映画を見る時高確率でポップコーンを食べます。どんな作品でもあまり問いません。
なんなら「首」を見た際にも構わずポップコーンを食べてました。
しかし、私は初めてポップコーンを買って後悔をしました
だからこそ、これからこの作品を観る人はネタバレは極力避けますが前もってポップコーンを買わない事をお勧めします。
(感想)
作品の冒頭、それは完全に倫理観が捨て去られたもので
あった。予告から塩ポップコーンを食べ続けていた私はこの作品に「多少の過激表現はあるけど食べても大丈夫だろう」という予想から遥かに裏切られ、珍しく手が止まり「プライベートライアン」の冒頭の衝撃以来に恐ろしさが閃光した。このように私たちが考えているであろう倫理(この世の道理)が捨て去られた。
最初は「やばい、これ耐えれないかも」と思うように一度たりとも無い途中退場を考えたのであった。
しかし、その狂気は次第に麻痺して笑みに変わってしまった。そのような気持ち悪さを考える余儀がないくらい映像と音楽、内容それぞれに秀逸さが滲み出ていた。
映像
これは観る前でも分かるだろうが、カメラワーク、舞台そして背景が「絵画」のように素晴らしい。これまで舞台や背景が素晴らしい・綺麗な作品はたくさん見てきたが、
内容は気持ち悪いのに関係なく描いている。そうして作品自体が最高に狂っていると感じた。
音楽
これは是非、映画館で観てもらいたい点になるが内容と同様に我々が思う(少なからず自分は感じた)不快に感じる音を最大限にBGMとして出しているのだ。いわゆるミニシアターで上映されるマニアックな作品に使われているかもしれないが、自分はこんなにも人が不快になりそうな音を多くの場面で使っていることに何度も狂気を感じた。
しかし、その反面絵画のような心地よい音も出しており、こんなにも最悪と幸福を使い分けた映画音楽は無いのだと感じた。
内容
そして作品の根幹となる「内容」
ネタバレは極力防ぎたいのであまり事細やかく書けないが
最初は「とてつもなく気持ち悪い、こんな倫理観が捨てられた作品は初めてだ」と思っていたが次第にそれは麻痺してしまう。その気持ち悪さを乗り越え、それを面白さと捉えた上で哲学的な表現、三つや四つ上のようなレベルの高い会話によって主人公ベラの変化を表しているのではないか。私自身最初から最後手前まで理解することが難しかった。しかし、改めてベラの人生の歩み方を見ているのだとようやく感じることができた。
私は何度も登場人物の成長を大きく描いた作品は見てきた。しかし、こんなにもスタートが狂気であり、前例に当てはめることができなかった作品である。この作品は例外であるもののその"変化"に感動せずにはいられなかったのである。
最後に総評を記していきたい
この作品には前評判がとても良く、大きな期待が寄せられていたが、私の想像を大いに裏切ってきた。この作品は本当に観るものを選んでいく。カップルでこの作品を観に行くなんて是非反対する。私も何回も見たいとは勿論思わない。
それでもこの作品は"一度"でいいから見て欲しい。
今までの概念を覆すかもしれない、もしかしたらこの作品に快楽を覚えるかもしれない。もちろん拒絶反応をしても仕方ない。
そのくらいオスカーを取ってもおかしくない。
"映画史"に残ってもおかしくない作品だったと
私は考える。